ITのまちへ、鯖江市の挑戦は続く

 鯖江市は、今後どのような姿を目指していくのか。牧田氏は、「ITを産業とするITのまちにしようと取り組んでいます。jig.jpの福野さんやサイバーエージェントの藤田さんに続く人がたくさん輩出されるようになってほしいですね。産業としてITが根付いてほしいんです」と語る。

 2017年度(平成29年度)は、つつじバスに関連するシステムが提供する情報の精度を高める更新作業やメンテナンスなど、地味ながらもサービス品質に関わる取り組みを進めていく。「クラウドなど新しいサービスや技術が出てきたことで、温めていた構想も動き出しそうです。ただ、行政だけでできることは限られています。企業やCode for Japanなどのコミュニティと一緒にチャレンジしたい」(牧田氏)。

 ただ、こうした取り組みは、まだスタートラインについたばかり。「果たして市民が利益を受けているか、市民福祉の向上を実感してもらっているかというと、まだまだ」と牧田氏は明かす。

 例えば、オープンデータを利用したアプリの一つ「さばれぽアプリ」のダウンロード数は355(2017年3月時点)。人口に比べると少し物足りない。アプリを作ることがゴールではない。利用してもらい、よりよいまちづくりに市民が自主的に取り組むようになってはじめて市民主役といえるだろう。牧田氏も少しずつ市民に知られるようになってきたオープンデータを用いたアイデアソンやハッカソンを、一過性のイベントにとどめるつもりはない。

 「アイデアソンやハッカソンを通じて、私も含めて市民同士が互いに意見を交わし、その声を行政に届け、逆に行政の悩みを聞いてもらったり、知恵を借りたりする。その中でひとつでも解決につながったり行政の動きが理解されたりすればいい。そういう営みを繰り返すことが大事」(牧田氏)という。

鯖江市役所の外観(写真:山岸 政仁)

 さまざまな声や制約がある中で、市のかじ取りはそう単純な話ではない。その中で市長は若者から高齢者まで幅広い市民の声を取り入れているが、市長と一部の市民だけが走っても試みは空転する。市民の高い意識をどれだけ引き付けられるか。オープンデータ推進のトップランナーの挑戦は、まだ道半ばだ。

■修正履歴
1ージ目の最後の段落の冒頭で、「8ビットコンピュータが内蔵」となっていましたが、正しくは「32ビットコンピュータが内蔵」です。お詫びして訂正します。記事は修正済です。 [2017/6/9 09:47]