(3)フォロワーから学ぶ

 開始から数カ月が経って、フォロワーが数百人止まりで伸び悩んだとき、次なる一手として考えたのが「オフ会」の開催だ。庁舎などに人を集めて写真講座や撮影会を開くことにした。「どうするとフォロワーが増えるのか、自分たちにアイデアもなければ参考にできる先行事例もなかったので、オフ会を通じてフォロワーに教わることにした」という。

第1回オフ会では、事前にダイレクトメッセージ機能を使ってフォロワー6人にコンタクトを取り、写真の撮影方法やおすすめ撮影スポットなどを語る講師役を依頼。6人とも応じたという(@hayama_officialより)
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 開催日には、庁舎の近くでバザーが開かれる日を選び、当日はバザー会場で直接触れ回って参加者を募った。写真に興味のある人が集まり、初めてのオフ会は30人が参加した。オフ会らしさを意識して、職員もTシャツにGパンという軽装で臨んだ。

 町にとって、写真撮影のコツや撮影スポットなど広報活動に生かせる情報が得られたほか、意図した通り、参加者アンケートから公式アカウントへのニーズがつかめたという。宮﨑氏は「(オフ会の雰囲気や職員の対応について)『いい意味でお役所っぽくなくて楽しい』『親しみやすさが感じられてよかった』といった感想が多かった。@hayama_officialに求められているのもこれだと思った」と話す。

 2015年10月に初開催したオフ会はその後もコミュニティ・ツールとして活用しており、現在までに4回の開催を数える。

(4)受け取り手の感覚になじむ投稿

 オフ会をきっかけに、葉山町の公式アカウントでは、写真に添えるテキストを親しみやすいものに変えた。以前の文章は敬体(です・ます)を使うことが多く、一文がやや長め。客観性の高い説明書きが中心だった。

アカウント開設当初は敬体が中心だった(@hayama_officialより)
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 それを、話し言葉に近い書き方に変え、文を短くした。例えば、光り輝く水面の写真には「てか全てがキラキラしててごめん」、牧場の牛たちの写真には「ぎゅうっと集まれ」とテキストをつけた。句読点は省略することが多く、「~している」などの「い」を省く、いわゆる「い抜き言葉」も多用する。内容もクイズや問いかけ、ダジャレ、投稿者の個人的な感想などが中心だ。

こちらが“タメ口投稿”。フォロワーのタイムラインに友人や好きな著名人のアカウントと並んで表示されても違和感がなくなった(@hayama_officialより)
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 この書き方が次第に評判になり、メディアで「タメ口投稿」と取り上げられ、フォロワーが急増した。新聞の地方面の記事がYahoo!ニュースに転載された日や、NHKの番組で紹介された日はフォロワーが1日で500~1000人増えたという。フォロワーが1万人を超えると、それが信頼感につながり、誘い水のように新規フォロワーを呼び込んでいった。現在、フォロワー数は1週間に100~120人の増加とペースが落ち着いたが、右肩上がりで推移している。

 ただし、どの自治体でも「タメ口」が効果的だとは限らない。宮﨑氏は「オフ会でフォロワーの意見を聞き、フレンドリーなほうが喜ばれると分かったので、そうした」と強調する。「例えば『御用邸のある町だから格調高いものがふさわしい』と言われていたら、方向性は違っていたかもしれない。タメ口ありきではなく、求められるものに合わせようという考えだった」(宮﨑氏)という。

(5)分析をおこたらずにニーズを探り続ける

 ニーズはオフ会だけでなく、インスタグラムの解析機能「インサイト」を注視して日頃から探っている。多くの新規フォローにつながった投稿を把握し、人気が出やすい写真の傾向をつかんで以降の投稿に生かす。海や夕陽の写真が多いのはそのためだ。

 フォロワーの属性も意識する。現在は約7割が40代以下で、約6割が女性。また、95%が国内で、葉山町内に居住するフォロワーは3%という。横浜市が18%、逗子市が7%、横須賀市が5%、さらに世田谷区、港区、川崎市がそれぞれ3%という内訳だ。

 宮﨑氏は「若い女性は購買行動の決定権を握ると聞くので、しっかり町の魅力を伝えたい。子育てをするときになって葉山町を選んでもらえたらうれしい。近隣地域のフォロワーが多いのも心強い。移住を考える際に現実的な候補の一つに加えてもらいやすいはず」と捉えている。

 また、写真の撮り方、撮影した画像の加工などはインスタグラムの人気アカウントに学んでいる。「(870万人ものフォロワーを持つ)タレントの渡辺直美さんのアカウントなどがお手本。画像加工は特にトレンドの移り変わりがあるので、著名人ではないのにフォロワーが多いアカウントなども合わせて参考にしている」。

ドローンを使った撮影。外国人の目を引くのに有効という。葉山町では外国人の移住も促進したい考えで、町の活動に参加する語学ボランティアを募集している(@hayama_officialより)
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 最近はドローンを使った空撮映像や画像も投稿している。「ドローンで撮影したスケール感のある動画は、町をよく知る人にも新鮮な視点を提供できる上に、外国人にウケがいい。東京五輪(東京オリンピック・パラリンピック競技大会)開催時には訪日観光客も増えるはず。葉山にも訪れてもらえるように、印象的な写真や動画できっかけをつくりたい」と宮﨑氏は意気込む。