(6)自治体として公平性は意識

 自治体の公式アカウントとして、公平性は常に意識している。写真ばえするグルメ情報などは投稿の題材として人気だが、載せ方は配慮する。「あくまで町のすてきな風景として写す。宣伝文句は載せない。セットメニューの内容やお店へのアクセスなども基本的には掲載しない。店名もハッシュタグや位置情報で伝えることが多い」。

グルメ投稿の例。飲食店から自店を取り上げてほしいと直接頼まれることもあるが、約束も拒否もせず「時間があったら行きます」と答えるなど、軽やかな対応を心がけている(@hayama_officialより)
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 また、@hayama_officialについたコメントにも原則、返信はしない。「あの人には返信して、私には返信がなかった」といった不公平感を与えないためだ。ただし、「花火大会はいつですか?」などの質問にはダイレクトメッセージ機能を使って回答する。「質問した人が町を訪れる機会が失われないようにしたい」と宮﨑氏は説明する。

(7)リアルでも連動企画を

 写真展やフォトブックといった“リアル”(インターネットを介さない活動)の企画も、公平性の観点から生まれたものだ。インスタグラムでの情報発信は、スマートフォンを所有し、特定のアプリをインストールした人にしか届かない側面がある。インスタグラムの活動で得られたものを町民の誰もが目にしたり、手に取ったりできるよう、リアルへの展開を企画した。

葉山歩き写真展。庁舎のほか、地元のヨットハーバー「葉山マリーナ」でも開催。庁舎を会場にした展示では平日の日中にしか来場者を受け入れられなかったが、マリーナでの開催により、休日を含めて写真を鑑賞できるようになった(@hayama_officialより)
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 具体的には、「#葉山歩き」付きの一般ユーザーによるインスタグラム投稿から選定した写真群を、投稿者の許可を得て「葉山歩き写真展」として庁舎に飾った。同様に、選定した写真に説明文をつけて、持ち歩きやすいサイズの冊子にまとめ、「HAYAMA NOTE 2017」として町内で無料配布した。

2017年版のフォトブック。宮﨑氏は「2019年版は写真の選定もオフ会の企画にできたら」と考えている(@hayama_officialより)
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 反響は大きかった。写真好きの高齢者がシニア向けスマートフォンを持って窓口を訪ねてくることもあり、「アプリのダウンロード(インストール)や設定をその場で一緒に行った。ちらほらと7~8人は訪ねてこられた」。

 「#葉山歩き」の投稿写真の質が向上する副次的効果も見とめられた。インスタグラムは誰もが投稿できるが、選ばれて飾られる展示・冊子への展開があることで、ユーザーのモチベーションが高まったとみられる。フォトブックは2017年版の1万部がほぼ在庫切れ。第2弾として、2019年版の制作に向けた予算が承認されている。