(8)予算がないなら他業務と資産を共有

 葉山町は、フォトブックの発行に約170万円の予算を計上したが、インスタグラム運用のための予算は取っていない。撮影用のデジタル一眼レフ・カメラは宮﨑氏の私物で、ドローンは広報活動全般のために購入した。撮影した画像は宮﨑氏が個人所有のスマートフォンを使って加工し、庁舎のWi-Fi経由でアップロードしている。

 オフ会の開催にも予算は付かない。参加者が発言しやすいように用意した「いいね!棒」は発泡スチロールを使って手作りした。担当者は広報誌と兼任のため、広報誌の取材で出かけた行き帰りに@hayama_official掲載用の写真を撮るなど、業務にかける時間のやりくりも工夫している。

(9)民間企業の力を借りる

 予算を使わずして町の発信力や影響力を高める手法としては、民間企業のコラボ企画も効果的だったという。例えば、京浜急行電鉄とは「葉山女子旅きっぷ」のキャンペーンで連携した。葉山女子旅きっぷを使って葉山町を訪れた人が、インスタグラムで@hayama_officialをフォローの上、写真を撮って指定のハッシュタグをつけて投稿すると、町の特産品が当たる期間限定キャンペーンだ。特産品は町が選び、費用を京急が負担。約200件の応募があった。

葉山女子旅きっぷでのキャンペーンのページ。葉山女子旅きっぷは、京急の電車やバスの乗車券と、葉山町の複数店舗から選んで利用できる「ごはん券」「おみやげ券」をセットにした商品で、現在も販売中(資料提供:葉山町)
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 パナソニックとは2017年2月、情報発信に関する協定を締結した。@hayama_officialのオフ会の第3回をパナソニックとの共同開催とし、写真講座と撮影会を実施。葉山町のヨットをテーマにしたフォトコンテストも開催した。オフ会では参加者にプロカメラマンの撮影技術が伝授され、パナソニック製デジタルカメラ「LUMIX」新機種の貸し出しも行われて好評だったという。

パナソニックが運営する写真共有サイト「LUMIX CLUB PicMate」上の写真コンテストのページ。同社は葉山町を含め複数の自治体と協力して地域の魅力をテーマに撮影会を催してきた

 旅行業者のエイチ・アイ・エスとのコラボ企画は、同社が運営するコミュニティ「タビジョ」(tabi_jo)のオフ会を葉山町で開催するというもの。2018年5月、多数のフォロワーを抱えるメンバー30人が葉山町に集まり、町の魅力が伝わる写真をインスタグラムに投稿した。町の役割はガイド役。「建物外観がおしゃれな郵便局、海が望める小道など、知る人ぞ知る撮影スポットを案内した」(宮﨑氏)。

(10)届けたい相手の顔を思い浮かべる

 @hayama_officialに関して、現在も視察や取材が引きも切らないという。視察に訪れる自治体の多くは、SNSを観光推進に活用したい考えだ。「どうしたらフォロワーが増えるのか?」と聞かれた場合にどう答えるのか。宮﨑氏に尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。

 「様々な工夫を同時並行してきたので、どれが効いたのか、よく分からない」と前置きしながらも「ざっくりと『若い人向け』では茫洋としているので、オフ会でフォロワーの顔が見られたのはよかった」と語った。

 「オフ会以降は『あの人なら、こんな冗談を喜んでくれるかも』と具体的に顔を思い浮かべながら投稿できるようになった。不思議なことに、そうした投稿には他のフォロワーも含め、反応が返ってきやすい。相手を大切にするというと言い過ぎかもしれないが、相手を思うことは大切」と持論を述べた。