電線地中化で倒壊リスクなし

 こうしたなか、開所からわずか1週間後、「ウェルネスタウン」は、台風15号の来襲によって、商用電力の停電という緊急事態に置かれることになった。

 9月9日午後、台風15号の暴風により東電の送電系統が損傷し、午後5時頃に睦沢町全域が停電に陥った。同タウンのエネルギーシステムは、平時は系統連系を前提に運用しているため、停電すると解列して、運転が止まる。そのため、同時にタウン内も停電した。

 パシフィックパワー取締役で、むつざわスマートウェルネスタウンの嶋野崇文代表は、台風に備えて、スタッフとともにタウン内で待機していた。嶋野代表によると、ガスコージェネを自立運転に切り替えて再稼働させる前に、タウン内の電気設備に浸水や漏電など損傷がないか確認する必要があり、その作業に4時間以上かかったという。

 幸い、タウン内設備に送電するケーブルは、美観向上も兼ねて、すべて地中化していたため、倒壊リスクはなく、浸水もなかった。また、地下ガス田から産出する天然ガスの供給を受けるガス設備やガス導管にも被害はなく、ガスの調達にも問題なかった(図10)(図11)。

図10●無電柱化により、強風による倒壊リスクがなくなった
(出所:日経BP)
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図11●電線の管路は車道の真ん中に埋設した
(出所:日経BP)
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 ただ、開始して1週間の試行的な運用を行っていた段階でもあり、系統停電時のガスコージェネの自立運転に関して、現場技術者にも十分な経験がなかったという。平常時の運転では、系統電力の周波数に合わせる形で、2台のガスエンジンを起動させ、回転数などを調整していくが、停電時にはこうした起動手順が使えない。

 基準となる系統周波数がない中、2台のガスエンジン発電機を使い、いかに安定的に出力と周波数を維持していくかが、自立運転における大きな課題となった。2台同時に起動すると、協調制御が不安定になることから、まず1台だけ起動し、それを系統周波数と見立てて、もう1台を起動して同期させるという手順を採用し、うまくいったという。