入り口の新設で、駅から公園への新たな流れを生む

乃村工藝社 事業統括センター プランニング統括部 企画3部 第2ルーム プランナーの大橋隆太氏(写真:佐保圭)
[画像のクリックで拡大表示]
乃村工藝社 クリエイティブセンター 第3統括部 CR1部 1ルーム デザイナーの谷高明氏 (写真:佐保圭)
[画像のクリックで拡大表示]

 「富山市はコンパクトシティを推進して、市内にさまざまな機能を凝縮させています。健康促進は社会的な課題になっているので、街なかを回遊することで健康を促進しつつ、街を元気にするという企画が成り立つのではないかと考えました」と乃村工藝社 事業統括本部 プランニング統括部 企画3部 第8ルーム プランナーの大橋隆太氏は説明する。

 「その街歩きを『タウントレッキング』と名付けました。今回のテーマである総合体育館は近くに市民の憩いの場で観光施設の富岩運河環水公園があり、周辺を歩いたりランニングしたりする人も多く、場所的にも非常に適していました」(大橋氏)。

 乃村工藝社 クリエイティブ本部 デザイン5部 グループ1 デザイナーの谷高明氏が続ける。

 「富岩運河環水公園は世界一美しいと評されるスターバックスもあり、すごく注目されているエリアです。富山県美術館ができることもわかっていました。もう1カ所、何か街あるきの拠点ができると、点が面になると考えました」

2016年度の利用者が過去最高の約157万人を達成した観光名所の富岩運河環水公園は、富山マラソンのゴール地点でもあるランナー・ジョガーたちに人気のスポットだ(写真:佐保圭)
[画像のクリックで拡大表示]

 この「タウントレッキングの拠点」というコンセプトをもと、TTSに入れるテナントも決めていった。

 「憩いを形成するたまり場として『飲食店』は重要なので、健康にフォーカスした“食”はできないか。それに付随して“物販”をやってもおもしろいのではないか。さらに、健康測定などで、市民の健康状態を“見える化”するものも入れよう。あとはイベントスペースの形で行こう――。これが基本的な提案時の機能の骨子になり、それを実行しました」(大橋氏)

 こうして、ほとんど人が近寄らなかったデッドスペースが、空間デザインによって、健康志向のカフェ、体組成計が使える交流スペース、充実したスポーツショップからなるお洒落なエリアへと生まれ変わることとなった。

 TTSのある場所は総合体育館の駅側のエントランスから一番遠い、奥の“どん詰まり”にあり、そのままでは人が集まりそうもなかった。そこで、天井から床までの「ガラスの壁」の中央に、新たな「エントランス」を設け、出入りできるようにした。出入り口を新設したことで、新たな人の流れが生まれた。富山駅方面から体育館を通って富岩運河環水公園へと抜ける新たな動線を生みだしたのである。

出入り口を新設して新たな動線が生まれた(写真:佐保圭)
[画像のクリックで拡大表示]

 「ガラスのカーテンウオールを一部解体して、新しいゲートをつくり、カーテンウオール全体が建物のファサードになるよう正面性をもたせて、体育館の中からだけでなく、富岩運河環水公園側の外からも入れるようにしました」。

 そう谷氏が説明するように、外からも直接入れるようにしたため、TTSへのアクセスの良さが飛躍的に向上。さらに、「富山駅から来た人が総合体育館の中を通って富岩運河環水公園へと抜けていく」という新たな動線を創出することで、「閉じた体育館から、外につながる体育館」というコンセプトを実現するとともに、「タウントレッキング」の魅力的なコースの整備にもつながったのである。

 こうして、富山市の新たな取り組み「タウントレッキング」の象徴とも言えるTTSが生まれた。