条例制定で土地、固定資産税、下水道使用料を10年間無償に

 金子包装ホールディングスの本業はダンボール製造だが、子会社のナビ(本社:埼玉県幸手市)を通じて、埼玉県幸手市や白岡市などで「ホテルグリーンコア」ブランドのビジネスホテルを運営している。その出店戦略は、大手とバッティングしにくい地方小都市の郊外がメーン。立地よりも営業努力による顧客獲得を重視しているという。ダンボールを加工したホテル向けの建材や家具も生産しており、2015年には常陽銀行が主催する「第3回常陽ビジネスアワード」で、この製品が最優秀賞を受賞している。

 坂東市への出店に踏み切った理由について、金子包装ホールディングスの金子卓司代表は、「これまでの実績を踏まえると、出店する自治体の市町村内総生産が600億円以上なら採算に合う。これに対し坂東市は2000億円以上の規模だ。市が出店に協力的なことも好材料だった」と話す。

 市は2015年2月、出店についてナビと基本合意。7月には「坂東市ビジネスホテル誘致条例」を制定した。条例では定期借地などの契約締結後10年間にわたって、ホテルの土地を市が無償貸し付けし、固定資産税・都市計画税と下水道使用料も免除することを定めた。これによりホテル事業者のコストは、約700万円削減できるという。

 同年秋には、市役所近くの目抜き通り(国道354号)沿いに、ホテル用地約3000m2を、市が約8000万円で取得した。隣地では、明治期の酒蔵などを活用して市の第三セクターが運営する観光交流センター「秀緑(しゅうろく)」の開設が予定されており(16年11月オープン)、ホテルとの相乗効果を狙った。

明治時代の酒蔵を改修した坂東市観光交流センター「秀緑」。体験型工房や観光情報案内所などが設けられている(写真:坂井敦)
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常陽銀行が中心となり資金調達スキームを構築

 一方で開発に際しての資金調達の面では課題があった。「大都市圏のホテルと異なり、開業後の稼働が予想しにくいことや、土地が市の所有なので担保にできないことなどから、金融機関による通常の融資が難しかった」(常陽銀行の小松崎氏)。そこで、この開発を地元の活性化に寄与する地域貢献型の事業ととらえ、常陽銀行が中心となって、地元金融機関や公的制度などを活用した資金調達スキームを構築した。

 ファイナンスにあたってはSPCの「ホテルグリーンコア坂東特定目的会社」を設立。リスクの度合いに応じて、3層(シニア・メザニン・エクイティ)の優先劣後構造を設け、資金調達ルートを多様化した。ローリスクのシニア部分は、常陽銀行・商工中金・筑波銀行によるシンジケートローンを組成。中間のメザニン部分は、特定目的会社が発行する社債を常陽銀行と地域経済活性化支援機構(REVIC)が設立した「いばらき商店街活性化投資事業有限責任組合(いばらき商店街活性化ファンド)」が引き受けた。最もリスクの高いエクイティ部分は民間都市開発推進機構(MINTO機構)と金子包装がそれぞれ出資する形とした。MINTO機構からの融資にあたっては、国土交通省から民間都市再生整備事業計画の認定を受けた。こうしたスキームによって「結果的に、通常の融資より有利な条件で、事業者への資金提供ができた」と小松崎氏は話す。

ホテルグリーンコア坂東の資金調達スキーム
(資料:常陽銀行資料より一部抜粋し編集部で作成)
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