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地方創生とモビリティ

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第1回 横浜市:地域交通が抱える課題に自動運転で挑む

来るべき人口減少と超高齢社会を迎え撃つ

大久保 聡=日経BP総研 クリーンテックラボ【2018.6.11】

本気で取り組むから、一過性のイベントで終わらせず

 横浜市としては、実証実験によって自動運転に対する市民の認知度を一層高め、その上で社会課題解決の有望な手段であるとの理解を醸成したい考えである。だからこそ、自動運転プロジェクトを一過性のイベントで終わらせず、継続して進めていくことが重要とする。

 今後の実証実験について、横浜市は具体的なプランを明らかにしていないが、自動運転バスの場合、閉鎖領域での実験を進めていくことになるという。現行の法制度で縛りがある公道ではなく、横浜市が所有する公園などで実験を積み重ねることになりそうだ。さらに、企業の名乗りがあれば、工場内での移動での実証実験も想定している。

 横浜市の東京湾岸では巨大な敷地を有する工場群があり、そうした広い敷地内を移動するといった用途でも自動運転バスが効果を発揮するとみるからだ。実際、自動運転プロジェクトに参加するDeNAは、金沢動物園での実証実験で用いた自動運転バスを、工場と同様に広大な敷地を有する九州大学構内において移動手段として検証してきた実績がある。

 一方、公道を用いた実証実験については、2018年3月に実証実験したEasy Rideの実験エリアを広げて、より多くの人に利用してもらえるようにしたい考え。この実証実験と同様に、公道を使う際には横浜市の道路局と協力するなど「オール横浜市で支援していく」(新産業創造課)。

 なお、肝心の自動運転の実用化時期について、横浜市としては明確に示していない。自動運転に取り組む企業は実用時期として東京オリンピック・パラリンピックをターゲットにしており、2020年早期を掲げているところが多い。横浜市としても、横浜スタジアムは東京オリンピックの会場(野球とソフトボールを実施)になっているので、自動運転を会場への人々の移動手段として披露したいという考えだ。そうした活動を通じて、国内外に対して横浜市の先進性を発信していく構えである(図6)。

図7●I・ToP横浜で自動運転を活用した新ビジネスの創出を進める、横浜市経済局 成長戦略推進部 新産業創造課長の髙木秀昭氏(左)と、担当係長の安藤あらた氏(撮影:日経BP総研 クリーンテックラボ)
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大切なのはサービスの継続性

 横浜市は自動運転の実用化以後についての検討も進める。前述したように、自動運転の実用化について横浜市は、3大要素として「市民の理解」「法制度の見直し」「技術面の成熟」を挙げる。そして実用化以後を考えると、「サービスの継続性」も重要になるという。事業が赤字体質になる、横浜市内の産業を縮小させる、といったことが起こるようでは、サービスを継続させようにも続けていけないことになりかねないからだ。

 だからこそ、横浜市は自動運転プロジェクトにおいて、自動運転サービスが最終的に産業として成り立たせることも念頭に置いている。将来のマネタイズを見据え、ビジネスベースの初段になるべく、実証実験を進めていくとする。2018年3月で実施した実証実験では市内の商業施設と連動させており、マネタイズという考え方は理解しやすい。一方、地域課題として挙げた、高齢者をはじめとする移動弱者向けのサービスは今後、既存のバスやタクシーによる移動と比較検証していくことが欠かせない。

ちょっとした移動、ポイントで払う?

 悩ましいのは、これまで徒歩や自転車が担ってきた比較的短距離の移動、いわばラストワンマイルを自動運転でカバーするとき、どうやって事業を成り立たせるかである。自動運転を地域交通の新しい手段として捉えたとき、従来の交通手段の代替という使い方だけでなく、ラストワンマイルの移動にも利用できるだろう。タクシーを使うには近距離であり、バス路線がカバーしていないのでやむを得ず自転車や徒歩で移動していたケースは少なくない。高齢化が進むと自転車や徒歩での移動が困難になる可能性が高く、ラストワンマイルの移動手段への要望が増えていくはずだ。

 ラストワンマイルの重要性について、横浜市も心得ている。前述した金沢動物園の実証実験は、ラストワンマイルの移動に対する検証でもあった。金沢動物園の実証実験では移動距離が短いといってもアプローチは坂道であり、高齢者にとって移動は辛い場所になっていた。横浜市内には坂道が多く、こうした場所で自動運転での移動が人々にとっての利便性が高いのか、利用に当たって市民の理解を得られるのか、といった検証にもなっている。

 重要性が高まる一方で、ラストワンマイルの移動は新しいサービスになるので、収益を得る方法を新規に考えねばならない。自動運転は初期投資が掛かる一方で、人件費が掛からない分、ランニングコストを低く抑えられるというメリットがある。初期投資がどこまでかさむかにもよるが、サービスからの利益は得やすい。ただし、これまではラストワンマイルは移動者にとって費用は発生していなかっただけに、参考となるサービス料金が分かりにくい。わずかな距離の移動で、タクシーの初乗り運賃程度を請求するのは妥当とはいえないだろう。

 こうした料金のあり方について、今のところ明確な答えは出ていないが、移動の対価としてお金を払う以外の支払い方法が考えられるだろう。例えば、商業施設のポイントなど、ちまたで頻繁に活用されるサービスとの連動などを候補に入れてもよさそうだ。横浜市における今後の実証実験では、どのようなマネタイズの手法が検討されるのかにも注目していきたい。

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