基本を徹底しながら新しい図書館像を

 オープン以降この1年の間に、集客を支えるまちなか広場でのイベントや図書館の運営には、課題も見えてきた。

 まちなか広場でのイベントの課題は、開催頻度とそれを実現する事業費規模のバランスだ。オープン初年度の2018年度、指定管理料のうち賑わい創出事業費は約1300万円。単純に年間の主催イベント開催回数である200で割ると、1回当たりのイベント予算は6万5000円にすぎない。

 まちなか広場の指定管理者である都城まちづくりでは上半期を終えた段階で市と協議し、その結果、2018年度12月補正予算で約300万円が上積みされた。そこにさらに、指定管理業務で得た施設の利用料収入の一部を市民に還元するという考え方から自ら約200万円を投じ、2018年度は最終的に年間事業費を約1800万円まで確保。来場者の新規獲得と定着を目的に主催事業を中心に年間を通して継続的にイベントを実施できる態勢を整え、主催イベント年間200回という目標の達成を果たした。

 2019年度は、市と協議したうえで主催イベントは週末や祝日の開催に重点を置く方針に改めつつ、年間200回という目標の達成を目指す。事業費規模は18年度予算ベースで約1800万円を見込み、指定管理料の賑わい創出事業費と自主財源で賄う方針だ。

 一方、図書館では「公設民営のブックカフェ」と揶揄されるような、カフェの存在感ばかりが目立つ姿とは異なる新しい図書館像を打ち出せるかという点が課題として浮かび上がる。ヴィアックスの中川氏も「資料を収集し保存し提供するという図書館として当たり前の基礎業務を怠ってはいけない。そこを徹底しながら新しい図書館像を打ち出していきたい」と強調する。

 その新しさを象徴するものとして公募プロポーザルの選定段階で高く評価されていたのが、1階に配置された「プレススタジオ」だ。編集・出版機能を担うコーナーで、備え付けの簡易自動製本機で冊子を制作したり、それを展示したりする。

プレススタジオで編集した地域の情報や館内での活動記録を展示したり、ほかの施設・機関が発行したもので共有すべき資料を展示したりする展示台。この日は、災害をテーマにほかの施設・機関で発行した資料を展示していた(写真:茂木俊輔)
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 狙いは、「知る」を支える図書館に「表現する」を支える機能を加えることで個人の記憶や魅力を地域で継承し、都城の未来を創造すること。図書館開館をきっかけに市内に移住してきた指定管理者のスタッフらが地域の情報を取材し、冊子を制作する。図書館としては斬新なこうした活動を市民とともにどう展開していくことができるのか、今後の取り組みが問われそうだ。

 図書館内では、来館者に比較的自由な振る舞いを許容しているだけに、運営の現場には日々葛藤もあるという。例えば、会話をどこまで制限するか。中川氏は「最近は減ってきたが、オープン当初は音への苦情を多く受けた。どの程度の声量なら注意するか。昔ながらの図書館での感覚と差があるため、悩ましい。日々話し合いながら最適な解を見つけている」と内情を明かす。

 年間延べ200万人もの人を呼び込むMallmallに対しては、居心地の良い場を備えた新しい公共施設として、また中心市街地活性化への起爆剤として、地元の期待感は大きい。

 まちなか広場を基点に周辺にまで展開されていくイベントに対して、商店主らが協力を惜しまないようになってきたほか、創業意欲が高まり、市に創業支援を求める相談が持ち込まれるようにもなってきたという。

 中心市街地の活性化を目指す市にとっては、この期待感を今後も維持できるかが最大の課題だ。市の久保氏は「ハードの整備を終え、ソフトの仕掛けで商店街の再整備や活性化を図る段階に入った。空き店舗の再生を支援する事業を、エリア別の優先度に応じて補助率・上限額を変えながら展開し、民間事業者の誘導を図りたい」と将来を見すえる。

 中心市街地活性化に向けた起爆剤としての図書館という空間・機能の整備。そこに新しい可能性は見いだせるのか――。今後の展開を見届けたい。

後列左から、都城市商工観光部商工政策課中心市街地活性化室副課長の久保尚裕氏、同室副主幹の小牧誠氏、市教育委員会生涯学習課副主幹の鳥取竜一郎氏。前列左から、都城まちづくり専務取締役の渡邊一生氏、ヴィアックス図書館事業本部都城営業所所長の中川学氏(写真:茂木俊輔)
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