東京・渋谷で事例をつくり、波及効果を狙う

 実は渋谷区では、同様のスタディクーポンの取り組みが2018年度にも行われていた。ただし、これは公益社団法人のチャンス・フォー・チルドレン(以下、CFC)とNPO法人のキズキが共同で立ち上げた事業。区はサポート対象者への周知活動などで協力するという立場での参画だった。2018年度の事業の原資は総額約1400万円。CFCとキズキがクラウド・ファンディングで集めた資金だ。

2018年度のスタディクーポン事業の概要(資料:チャンス・フォー・チルドレン、キズキ)
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「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」でクラウド・ファンディングを実施。当初目標の1000万円を上回る1405万3500円が集まった(CAMPFIRE)
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 CFCのルーツは、1995年の阪神淡路大震災で被災した子どもたちの学習支援を行う学生ボランティア団体。関西学院大学の学生が中心となって、避難所で子どもたちの勉強をサポートしたり、キャンプ体験の機会を設けたりしていた。復興が進むなかで受益者負担型の事業モデルに切り替えた。費用を負担できない家庭がある状況を受け、2009年頃から募金によってクーポンを発行・配布するようになったという。2011年に東日本大震災が発生すると、東北でも同様の活動を始め、一般社団法人に。その後、2014年に公益法人化している。

 一方、キズキは、不登校や中退、ひきこもりなどを経験した若者の社会参加を助けるNPO法人。同様の若者や中学・高校生を対象とした個別指導塾「キズキ共育塾」を運営する株式会社のキズキと両輪で活動している。キズキでも通塾費用を用意できない世帯の子どもに対するサポートが課題になっていたことから、CFCと共同で「スタディクーポン・イニシアティブ」事業を創始した。

チャンス・フォー・チルドレン(CFC)の今井悠介代表理事。CFCは、2012年度から大阪市の「塾代助成事業」を受託しているが、クーポンと面談を組み合わせたのは渋谷区の事業が初めてという
キズキの安田祐輔代表。学習支援のあり方について、「子どもたちの多様な養育環境や精神状態、学力などに対応できるよう、家庭訪問、無料塾、クーポンの3タイプを用意できれば、現時点ではベスト」と持論を述べる

 「スタディクーポン・イニシアティブ」としての第1弾事業が、渋谷区での取り組みだ。「CFCが関西や東北で展開している教育クーポン事業を東京で展開して公的資金の流入を促し、事業モデルを構築して全国へ広げたい」(NPO法人キズキ理事長/株式会社キズキ代表取締役社長の安田祐輔氏)という構想の下、自治体との連携を模索した。渋谷区と連携が決まったのは「区が先進的な取り組みに意欲的で、NPOやNGOとの連携事業にも積極的だったことが大きい」(CFC代表理事の今井悠介氏)という。