泉大津市と南海電鉄、四半世紀にわたる連携

 泉大津市と南海電鉄の連携は、1995年に都市計画決定した連続立体交差事業に始まる。同事業は、都市計画道路松之浜曽根線から大津川右岸までの約2.4km区間において、鉄道高架化工事と関連側道整備工事を実施したもの。大阪府が事業主体となり、側道工事や用地買収などを泉大津市が、鉄道工事を南海電鉄が手掛けた。連立事業を進めるなかで、3者は2016年に高架下公共利用に関する協定を結んでいた。

 また、南海電鉄は2017年3月に泉大津駅前の高架下に商業施設「N.KLASS(エヌクラス)泉大津」を開業。この際も市と南海電鉄は連携し、市が整備する歩道のデザインは、N.KLASSとマッチするように、南海電鉄が描いたイメージイラストをもとに設計者へ発注された。その設計者も、南海電鉄の委託先と同じ事業者が選ばれている。一連の事業で培われた協働関係が、今回の高架下開発にもつながった。

N.KLASS泉大津。店舗前面の遊歩道で駅から街へ回遊しやすくなっている。遊歩道と市が整備した歩道のデザインに連続性を持たせた(写真:日経BP)
N.KLASS泉大津。店舗前面の遊歩道で駅から街へ回遊しやすくなっている。遊歩道と市が整備した歩道のデザインに連続性を持たせた(写真:日経BP)
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N.KLASSの高架下店舗の並びに市の子育て支援施設「ココフレア」と市営駐輪場が整備されている。これらは南海本線の高架化に伴う公共利用分の一端だ。ココフレアはセントラルスポーツが指定管理者となって運営しており、入口は写真奥のスポーツクラブ「セントラルスポーツジムスタ24」と共通化している。写真は新型コロナウイルスの影響で休業時のもの(写真:日経BP)
N.KLASSの高架下店舗の並びに市の子育て支援施設「ココフレア」と市営駐輪場が整備されている。これらは南海本線の高架化に伴う公共利用分の一端だ。ココフレアはセントラルスポーツが指定管理者となって運営しており、入口は写真奥のスポーツクラブ「セントラルスポーツジムスタ24」と共通化している。写真は新型コロナウイルスの影響で休業時のもの(写真:日経BP)
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 N.KLASSの高架下店舗の並びには、市の子育て支援施設「ココフレア」と市営駐輪場が整備されている。これらは南海本線の高架化に伴う公共利用分の一端だ。ココフレアの入口は写真奥のスポーツクラブ「セントラルスポーツジムスタ24」と共通化。セントラルスポーツが駅前広場とココフレアの指定管理者となり、一体的に運営している。

 泉大津市の山野氏によれば、広場整備の構想自体も、駅前商業施設の開業がきっかけになっているという。「当初、MONTO PARKを整備した場所には駐輪場などを作る予定だったが、駅前に商業施設や広い通りができて考え方を変えた。商工会議所などが駅前でイベントを行う際に、高架下の空いたスペースを借りたいと申し出るようになり、イベントにも使えるような広場が、市民の側からも求められているのを感じた。また、市としてアビリティタウン構想の実証フィールドが欲しかったこともあり、広場整備の方針が固まった」。

泉大津市と南海電鉄の協議で、植栽やタイルなど歩道の魅力を向上(写真:日経BP)
泉大津市と南海電鉄の協議で、植栽やタイルなど歩道の魅力を向上(写真:日経BP)
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 南海電鉄の貝谷力氏は、南海電鉄にとっては今回の事業は「チャレンジ」の位置づけだと話す。「当社では、高架下の空間活用といえば、これまで駐車場や倉庫が中心だった。しかし、この泉大津の高架下は、(繁華街の)難波からも関西国際空港からも近いという地理的な優位性があり、かつ行政の積極的な協力が得られる。高架下で新しいチャレンジをするなら泉大津が適しているということで、今回のプロジェクトに乗り出した」。南海電鉄では、OZU ROOFの開発・運営などで得られた知見を、同社の他の高架下開発に今後生かしていく方針だ。

泉大津市(いずみおおつし)
泉大津市(いずみおおつし)
大阪府の南部に位置し、北部・東部は高石市と和泉市、南部は大津川を境として泉北郡忠岡町と隣接している。7万4420人(2020年年6月1日現在)、13.67km2。毛布の生産量は全国1位。市によると国内で生産される毛布の約90%が泉大津とその近隣地域で生み出されているという
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