ドイツ生まれの健康法であるクアオルト健康ウオーキング*を活用し、市民の健康づくりや総合的なまちづくりに取り組む自治体が増えている。日本クアオルト研究所によれば、同ウオーキングに取り組んでいる自治体は全国で20団体。69の専門コースがつくられている(2021年6月末現在)。
そんな中、恵まれた自然環境や食材などを活用し、質の高い健康保養地(日本型クアオルト)となることを目指し、“クアオルト・プロジェクト”に取り組んでいるのが三重県志摩市。健康、運動、休養という3つの言葉をキーワードに、住民の健康増進と観光誘致を図る一方、その移動手段にMaaS(次世代移動サービス)を駆使するなど、様々な施策にクアオルト健康ウオーキングを取り入れた活動をしていることで注目を集めている。プロジェクトの推進役である同市観光課に、同ウオーキング導入の狙いや今後の展開について聞いた。
海を感じる2つの専門コース
――志摩市では2019年に「横山天空コース」と「ともやま公園コース」の2つの専門コースがオープンしました。導入のきっかけは何だったのですか?
2017年に新潟県妙高(みょうこう)市で開催された国立公園関係都市協議会定期総会に出席したとき、紹介された同市の日本型クアオルトへの取り組みに感銘を受けたのがきっかけでした。
志摩市は市全体が伊勢志摩国立公園に指定され、起伏に富んだ地形や豊かな自然、美しい風景に恵まれ、クアオルト健康ウオーキングに取り組むには最高の立地です。温浴施設や真珠の養殖、海女小屋などの観光資源や、伊勢海老やアワビなどの食材も豊富で、ウオーキングと組み合わせた取り組みに可能性を感じました。その後、既に導入していた自治体や企業と情報共有しながら、志摩市ならではの「日本型クアオルト」を検討していきました。
――完成したコースにはどんな特徴がありますか?
「横山天空コース」は、64の島々が点在する英虞(あご)湾の絶景を一望でき、景色を満喫しながらリラックスして歩けます。コースの途中に横山天空カフェテラスがあってそこでコーヒーを飲んだり、鰹バーガーなどの地域の食材を使った食事も楽しんだりできます。もう1つの「ともやま公園コース」もサンセットの景観で有名な写真スポットで、海の国立公園の志摩市らしく、潮風を感じながら歩くことができます。