宗像市の人口の12%が暮らすニュータウン、市は2013年度に再生に着手

宗像市都市再生部都市再生課の内田忠治課長(右)と濵村隆・街なか再生係長(写真:萩原詩子)
宗像市都市再生部都市再生課の内田忠治課長(右)と濵村隆・街なか再生係長(写真:萩原詩子)
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 宗像市にとって、全人口の約12%に相当する1万1745人(2021年5月末時点)が暮らす日の里地区は、都市機能の集約を目指す重点地域だ。1971年に日本住宅公団(現在のUR都市機構)が九州最大級のニュータウンとして開発、計画人口に2万人を掲げた。しかし、同時期に同世代が入居したため、全国のいわゆる“オールド・ニュータウン”の例にもれず、高齢化が進んでいる。

 宗像市都市再生部都市再生課の内田忠治課長は「計画的に配置された道路や公園のおかげで、日の里地区には良好な住環境が形成されている。この貴重な既存インフラを今後いかに活かしていくかは、市としても重要な課題だ」と語る。市は2013年度から、都市再生に向けた取り組みに着手した。

 最初に実現したのは、日の里地区の入り口にあたるJR東郷駅前の再整備だ。15年に駅前広場をリニューアルし、7年もの間閉鎖されたままだった駅前店舗活用の検討を始めた。「当時の駅前は人気がなく、単なる通過点になってしまっていた」と、内田課長は振り返る。

 日の里地区の各町内会で構成する協議会も、地域の将来に危機感を持ち、14年に「まちづくり計画特別委員会」を立ち上げた。宗像市と連携し、駅前の活性化を目指す。ワークショップを開催して住民の意見をまとめ、空き店舗を“地域の賑わいを生み出す場”として使わせてほしいと、市に要望した。

 市は空き店舗をJR九州から賃借し、16年8月にまちづくり拠点「CoCokaraひのさと(以下、ココカラ)」をオープンした。開館から5年間は市が補助金で支援してきたが、20年度に協議会がNPO法人まちづくり宗像を設立し、21年度からは自主運営を行っている。

JR東郷駅前にあるCoCokaraひのさと(ココカラ)の外観(写真:萩原詩子)
JR東郷駅前にあるCoCokaraひのさと(ココカラ)の外観(写真:萩原詩子)
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ココカラ館長の木村秀子氏(左)とまちづくり宗像事務局長の宮﨑陽子氏(写真:萩原詩子)
ココカラ館長の木村秀子氏(左)とまちづくり宗像事務局長の宮﨑陽子氏(写真:萩原詩子)
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ココカラには会議スペースや自習室があり、マルシェ「ココカラ市場」や、ヨガ、絵手紙、川柳などのイベントやサークル活動の舞台になっている(写真:萩原詩子)
ココカラには会議スペースや自習室があり、マルシェ「ココカラ市場」や、ヨガ、絵手紙、川柳などのイベントやサークル活動の舞台になっている(写真:萩原詩子)
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 「ココカラ」館長には、前述の「まちづくり計画特別委員会」で委員長を務めた木村秀子氏が就任した。「ココカラでは、住民企画の展示や講座、交流会を手伝っている。最初の1年だけで、のべ2万5000人が来館してくれた。コロナ禍前は夜9時まで開放しており、ガラスの壁から漏れる灯りで、駅前がすっかり明るくなった。中でも、特に喜ばれたのは自習室。駅からの通りすがりに子どもたちが勉強する姿が見え、大人も励まされたと反響を得た」(木村氏)

 「ココカラ」が主に子どもたちのための場とすれば、大人が集まる場として17年3月にオープンしたのが住宅地の空き店舗を活用した「日の里THIRD BASE(以下、サードベース)」だ。こちらは、日の里出身で、住宅街のエリアマネジメントを専門とする大分大学理工学部創生工学科・建築学コース・柴田建准教授が、まちづくり研究の一環として開設した。当初は用途を決めず、月に1度DIYワークショップを開き、話し合いながら少しずつ改修していった。ギター教室やボードゲームなどに使われたほか、2階には起業支援団体が入居した。

 17年9月、「ココカラ」と「サードベース」は、宗像市からの委託で「郊外暮らしの再生塾」(以下、再生塾)をスタートする。空き家再生やエリアリノベーションに取り組む先駆者を全国から招聘し、参加者とディスカッションを重ねる、約半年間・全7回のシリーズワークショップだ。ここで繰り広げられた議論と交流が、「ひのさと48」の実現につながった。