地域住民が市とURに団地改修のコミュニティ拠点を提案

 18年3月の「再生塾」最終回では、地域住民を集めて公開発表会を開催。塾生が日の里ニュータウンの再生案をプレゼンした。その一つが、団地1棟を保存してコミュニティ拠点にするという、「ひのさと48」の元になったアイデアだ。さらにこれを、18年6月に日の里東小学校体育館で行った「日の里まちづくりワークショップ」で提案、地域住民の総意として報告書にまとめ、宗像市とUR都市機構に提出した。UR都市機構はこの案を受け、土地譲渡にあたって建物を一部残すことにした。

千葉県市川市「ハイタウン塩浜」のコミュニティカフェ(写真提供:東邦レオ)
千葉県市川市「ハイタウン塩浜」のコミュニティカフェ(写真提供:東邦レオ)
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 「ひのさと48」運営に携わる東邦レオは、都市緑化や公園整備を手掛ける企業だ。東日本大震災を契機に団地やマンションの植栽管理を通じたコミュニティ形成事業に取り組んでいる。「ひのさと48」を担当する吉田啓助ディレクターは、その対象の1つである千葉県市川市の「ハイタウン塩浜」に自ら入居したことで、団地再生についてより深く考えるようになったという。同社は18年1月には日の里に先立ち、塩浜でコミュニティカフェを開業している。吉田氏は、別の住宅地の視察で日の里ニュータウンの再生に携わる柴田准教授に出会ったことがきっかけで、東京支社勤務にもかかわらず、「再生塾」7回すべてに参加したという。宗像市での仕事が決まる4年前のことだ。結果として、市の事業(再成塾)が、同社の「ひのさと48」参画の大きな契機となったといえるだろう。

「日の里まちづくりワークショップ」の提案(資料提供:東邦レオ)
「日の里まちづくりワークショップ」の提案(資料提供:東邦レオ)
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 西部ガスが「ひのさと48」の運営に加わったのは、東邦レオ・吉田氏の声掛けによる。西部ガス営業本部都市リビング開発部暮らし・まちづくり推進グループの今長谷大助マネジャーは、前述の千葉・塩浜のコミュニティカフェにも視察に行ったという。「インフラ企業として地域に選ばれるには、インフラの導入過程だけでなく、その後も地域に喜ばれる仕事を続けるべきではないか、という問題意識があった」と今長谷氏は振り返る。西部ガスとしても、コミュニティ施設の運営は初めての試みという。

地元名産の大麦を使い団地内でビールを醸造、地域の会話の種に

「ひのさと48」での打ち合わせ風景。左から、東邦レオ・吉田氏、大分大学・柴田准教授、西部ガス・今長谷氏(写真:萩原詩子)
「ひのさと48」での打ち合わせ風景。左から、東邦レオ・吉田氏、大分大学・柴田准教授、西部ガス・今長谷氏(写真:萩原詩子)
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 西部ガスと東邦レオは20年1月に約1億円を投資して「ひのさと48」の土地建物を取得し、外構などを整備した。開業準備の1年間はコロナ禍と重なる。吉田氏と今長谷氏のチームは、中学校の総合学習にオンライン参加するなどして地域とのコミュニケーションを深めていった。「子どもたちにも、地域に何が欲しいか教えてもらった。子どもが関わるまちづくりこそ、サステイナブルといえるのではないか」(今長谷氏)

 事業の主な収入は賃料になるが、テナント誘致は急がなかった。「駅から遠い、古い団地の1室を借りてほしいと営業しても、採算が合わないと断られるだろう。それよりもまず、自分たちが地域の人と一緒にこの場を盛り上げて、面白いと思ってもらえる状況をつくることをプロジェクトの最初のミッションにした」(吉田氏)

 1階のビール醸造所「ひのさとブリュワリー」は東邦レオの直営だ。「市民にもあまり知られていないが、宗像はビール大麦の一大産地。クラフトビールの製造は地域おこしにもつながる」と吉田氏。ラベルには地域の人々の似顔絵が描かれている。前出の宗像市・内田課長や大分大学・柴田准教授、ココカラ・木村氏のラベルもある。これも「ひのさと48」のコンセプト“地域の会話量を増やす”きっかけづくりだ。

「ひのさと48」1階の「ひのさとブリュワリー」(左)と「さとのBEER」(右)。ビールのラベルはココカラバージョンで、木村氏の似顔絵が描かれている(左写真:萩原詩子、右写真提供:CoCokaraひのさと)
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「ひのさと48」1階の「ひのさとブリュワリー」(左)と「さとのBEER」(右)。ビールのラベルはココカラバージョンで、木村氏の似顔絵が描かれている(左写真:萩原詩子、右写真提供:CoCokaraひのさと)
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「ひのさと48」1階の「ひのさとブリュワリー」(左)と「さとのBEER」(右)。ビールのラベルはココカラバージョンで、木村氏の似顔絵が描かれている(左写真:萩原詩子、右写真提供:CoCokaraひのさと)