空き家再生に地域を巻き込む

 アキナイでは手始めに、地元の人たちが「ハモニカ横丁」と呼ぶ長屋の改修に着手。3軒を財団が借り上げて手を入れ、移住者向けの一時滞在スペースとして活用している。

 この工事を経て滝口氏は自ら、商店街の空き店舗を改修してコミュニティーカフェ「リトルロボット」〔写真3〕を開業。運営は若手起業者に任せ、定期的にこども食堂や認知症カフェなども開催。「皆が集まって暮らしを考える場にしたい」と滝口氏は話す。

〔写真3〕商店街の空き長屋に「地域の暮らしを考える場」
滝口氏はSARUYAと同じ長屋の2軒を改装し、コミュニティーカフェ「リトルロボット」を開業した(左写真の右からSARUYA、1軒置いて左側の2軒がリトルロボット)(写真:滝口建築)
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 2015年3月からは、旧歓楽街「新世界通り」の空き店舗活用も始まった〔写真4〕。廃墟同然になったスナックを貯金箱財団が飲食店として再生するものだ。改修前の大掃除の段階から地域ボランティアを募り、清掃後に「復活祭」を開くなど、地元を巻き込む形で展開していった。

〔写真4〕昭和レトロなスナック街を観光資源化
高度経済成長期に織物産業関係者でにぎわった旧歓楽街「新世界通り」。一帯を改修し、昭和の佇まいを生かして観光資源とする取り組みが進んでいる(写真:三上 美絵)
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 「これらは儲かる仕事ではないが、さまざまな立場の人と知り合える」と滝口氏。実際に、貯金箱財団が企画した地域デザインコンペティションを通じ、東京理科大学との縁もできた。優勝チームの一員だった中川宏文氏は、第2期協力隊として赴任し、新世界通りの物件の設計を始めた。

 滝口氏の店に続き、協力隊の任期を満了した赤松氏は観光需要を見込んでゲストハウスを開業。また滝口建築では現在、東京理科大学チームの設計による売建住宅の計画や、日本女子大学などと協働しての「おためしサテライトオフィス」構想を進めている。古いまちに新風が吹き始めた。

〔写真5〕若手設計者の感覚も採用
再生した3店の飲食店「まる」「さんかく」「しかく」の横には、共同便所を新設。設計は、大学院修了後に協力隊として赴任した中川氏が担当した(写真:三上 美絵)
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〔写真6〕合同会社化で仲間を呼び込む
2016年に貯金箱財団や協力者が出資して合同会社「新世界通り」を設立。直営店とテナントの運営に当たっている。改装前の仮店舗で開催した「復活祭」には2000人以上の市民が訪れ、関心の高さを示した(写真左:三上 美絵、写真右:富士吉田みんなの貯金箱財団)
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