設計済みの施設を、事業者の費用負担で改修可能に

 このサウンディングの結果を基に、市は募集要項を整え、2019年1月~3月に、PFI法に基づく「公共施設等運営権者」を選ぶプロポーザルを実施した。事業の契約期間は約20年(市と事業者が実施契約を締結した日から2040年3月末日まで)。2020年7月に実施契約を結び、同年10月に事業を開始する計画とした。

 プロポーザルを、契約予定時期の1年半ほど前に実施したことになる。津山市財政部財産活用課FM推進係の川口義洋主幹兼係長は、その狙いを次のように説明する。

 「本来は設計前から運営事業者に参画してもらった方が、事業者にとって使い勝手のよいものができる。今回は既に実施設計まで完了した後での公募となったが、工事中からでも事業者の意見が少しでも反映できるよう、可能な限り早期に選定しようと考えた」

町家群リノベーション事業のスキームとスケジュール。事業者の初期コストを軽減でき、かつ自由度が高く、運営期間を長く取れる手法としてコンセッション方式を選んだ(資料:津山市)
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 募集要項には、宿泊料金を事業者が設定できること、運営権対価は2023年3月末日まで無償とし、以降の対価は無償期間の収益状況などを勘案して設定すること、市の事前承認を得れば事業者が自己負担で施設を改修(更新投資)できることなどが盛り込まれた(現時点では、管理運営事業者が提案した運営権対価額は非公表)。

 町家群の整備費(工事費)は1億9300万円で、このうち地方創生交付金が1億4600万円、文化庁の重要伝統的建造物群保存地区保存等事業費国庫補助伝建補助が2700万円、国交省の街並み環境整備事業(による助成金)が2000万円だ。プロポーザルで選ばれた事業者は、施設整備に関して、自ら提案して市の承認を受けて改修する場合にのみ、その費用を負担する。

現地はまさに改修工事中。撮影時(2019年6月)は養生シートが張られていて見ることができなかったが、所有者の異なる建物も含め、軒庇が60メートル連続する街並みが特徴(写真:赤坂麻実)
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 プロポーザルには4者が参加し、1次審査(書類審査)と2次審査(プレゼンテーション、ヒアリング)を経て、HNA津山が最優秀提案者に選ばれた。HNA津山はホテルニューアワジ(本社・兵庫県洲本市)のグループ会社で、2019年2月には津山市内に「ザ・シロヤマテラス津山別邸」を開業している。

 HNA津山の木下学代表取締役社長は、シロヤマテラスの開業に向けて周辺地域を調査するなかで市内の宿泊施設不足を感じたという。「津山市内の宿泊施設はビジネスホテルがほとんど。ベッド数には不足はなくとも、観光客や富裕層の需要をカバーするにはバリエーションが足りない」という評価だ。また、この調査中に城東地区の魅力を認識しており、町家群および隣接する酒造場(国の重要文化財)にも目をとめていた。