意匠や宿泊人数など、事業者のアイデアでプラン変更

 HNA津山の提案コンセプトは、建物が持つ古き良き風趣を大切にしながら、現代の生活様式に合わせて快適性を高めることだった。例えば、市の基本プランでは一般的なバスタブが予定されていた浴槽を、ひのき風呂に変更するなど、見た目は町家のムードに合わせながら、水栓金具などの機能は最新のものを取り入れる。

 また、基本プランでは事務室になっていた酒造場側の庭に面した部分についても大きく変更し、宿泊客が庭を見ながらくつろげるような共有スペースにする考えだ。もともと庭に面して予定されていた縁側部分も、さらに拡張して屋内家具を置き、リラックスできる空間にするという。

ゆったりとした時間が楽しめるよう、中庭を設ける(資料:津山市)
[画像のクリックで拡大表示]

 ファサードの意匠も変更する。「ただ古いだけではなく、清新さも感じられるようにしたい」(木下社長)との考えで、ファサードの格子や扉には白木を使い、真新しいのれんを掛ける。

床は板張りが中心。一部、畳敷きのスペースを設ける予定(資料:津山市)
[画像のクリックで拡大表示]

 さらに、専有面積の広い一棟貸しのホテルを採算に乗せるため、2人客に限定せず、グループ客にも対応できるように、客室内に畳敷きのエリアを設ける。「2人客に限ると、一人当たりの価格が高くなるため、利用のハードルはどうしても上がる。最大8人までが違和感なくゆったり使えるよう、2~3台のベッドに加えて、布団を敷くのに向く畳エリアを作ることにした。部屋の断熱性も高まるはずだ」(木下社長)。

8人まで宿泊可能にする予定だが、2人で使っても窮屈さや違和感がないよう、ベッドは増やさない(資料:津山市)
[画像のクリックで拡大表示]

 こうしたプラン変更は、HNA津山が提案し、市が承認し、HNA津山が費用を負担して実現する。木下社長は「市の承認を得るために膨大な量の書類が必要になるのではないかと身構えていたが、そういったことはなく、市の担当者は私たちの話を熱心に聞いてくれた。施設がより良いものになるなら、柔軟に対応しようという市の姿勢がありがたかった」と話している。

 今後は2020年8月下旬には運営権の登録と利用料金の届け出を行い、同年10月には事業を開始する。事業の採算について、HNA津山は2年目での黒字化を目指している。「初年度は初期投資もあり、1年目で償却する資産もあるので(黒字化は)難しいが、2年目からは単年度黒字にするつもりだ。市がせっかく運営権対価を3年間無償にしてくれているのに、それでも赤字続きというわけにはいかない」(木下社長)。