経験生かし、4月から民間提案制度を導入

 事業開始前だが、津山市は今回の取り組みで多くの知見が得られたという。まず、コンセッション方式に関する正しい知識を持つことができたとする。「コンセッション方式は空港や水道といった大規模インフラでなくとも適用できる、業務要求水準書の策定やVFM(Value for Money)の算定は必須ではない、運営権対価はゼロでも構わない、といったことが分かった。この制度に対する先入観のようなものを払拭できた」(定久課長)。

 廣瀬氏は「コンサルティング事業者に委託せず、市の職員だけで勉強して話し合って、手作りでコンセッション方式を導入できた。思ったより柔軟に適用できる制度だということが分かった。“お金がなくても出来る”という事例が作れたのではないか。行政のなかで部署をまたいで連携が取れたこともよかった」と振り返る。

左から津山市の黒瀬英生室長、廣瀬幸子主任、川口義洋主幹兼係長、定久誠課長。FM推進係は6人(財産活用課は13人)、歴史まちづくり推進室は6人という人員体制(写真:赤坂麻実)
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 また、市から民間事業者へ声をかけて対面で行う本格的なサウンディング型市場調査は津山市で初めてのことであり、こちらの経験も今後のFM事業に生かされそうだ。「サウンディングは『意見やアイデアを受け付けています』と黙って待っていればいいものではない。こちらから“営業”のつもりで出向いて真意を伝えることが大事。伝われば、そうそう無碍(むげ)にはされないものだ」と黒瀬氏は手ごたえを語る。

 津山市では2019年4月、「津山市公共施設等の利活用に関する民間提案制度」を新設した。公共サービスに関して民間事業者からの提案を受け付け、対話や協議の上で事業化を図るというもの。事業化は、提案事業者と随意契約を結ぶ形を前提としている。この民間提案制度を設計する際も、津山市はまず運用指針の草案を作って公開し、サウンディングを行った。

計画地に隣接する酒造場跡。国の重要文化財の指定を受けている(写真:赤坂麻実)
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 「公民連携で重要なのは対話だとつくづく感じた。今後も、行政の抱える課題と民間の希望を、対話を重ねてうまくすり合わせていきたい。公募の前にも十分な対話を持っておけば、選考には、審査項目のすべてに○がつくような精度の高い提案が出そろうはず。そのなかから選べば当然、質の高い公共サービスが実現する可能性が高まる」(川口氏)。

 今後は、コンセッション方式で民間が運営する町家群のホテルと隣接する酒造場跡についても、サウンディングをしながら活用の道を探っていくという。