「メガソーラービジネス」2018年7月10日付の記事より

 出雲大社の近く、日本海のほとりに宍道湖西部浄化センターが立地している。その名の通り、宍道湖の流域に敷設された下水道の処理施設の一つで、出雲市(旧出雲市、旧平田市、旧湖陵町、旧大社町、旧斐川町)と松江市(旧宍道町)の家庭や工場からの下水を浄化している。島根県が運営している。

 同施設の敷地内に、太陽光パネルの容量約5.599MW、パワーコンディショナー(PCS)の定格出力4.410MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「出雲SOLARiE 大社太陽光発電所」がある(図1)。

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図1●宍道湖西部浄化センター内のメガソーラー
日本海のほとりにあり、出雲大社に近い(出所:上段はアイ・ねっと、SWIFT、そのほかは日経BP)

 浄化センターを運営している島根県が土地を貸し、ケーブルテレビのコンサルティングなどを手がけるアイ・ねっと(島根県松江市)が、メガソーラーを開発・運営している。

 島根県では、県の所有地の中で遊休地となっている場所に積極的に太陽光発電所を導入しており、その一つがこの浄化センター内のメガソーラーである。

 このほか、宍道湖東部浄化センターの出力1.75MW(発電事業者:平井建設)、元・県立湖陵病院用地の973kW(SJ島根・出雲)、1.33MW(マサコーポレーション)、河下港臨海工業団地の1.95MW(SOLARWAVE)、中海干拓地調整池の1MW(SOLARWAVE安来)、旧・隠岐空港の1.5MW (旭メガソーラー隠岐発電)、1.5MW(隠岐一畑交通)、斐伊川放水路事業残土処理場の10MW(出雲クリーン発電)、江津浄水場の447kW(島根県企業局)、江津工業団地の1.2MW(島根県企業局)、萩・石見空港の3.49MW(島根県企業局)、三隅港臨海工業団地の1.8MW(島根県企業局)の12カ所がある(旧・隠岐空港の関連コラム島根県企業局の関連ニュース)。

 宍道湖西部浄化センター内の土地は、将来的には、広域汚泥処理施設と土壌脱臭設備の用地として活用が計画されている。しかし、当面は利用する予定がないため、その間の有効活用策として、メガソーラーの用地として貸すことにした。県にとっては、賃借料を得る利点が大きい。

 貸出先は公募によって決めた。地域貢献度を優先した総合評価方式で決めたとしている。

 浄化センター内の土地へのメガソーラーの設置に際して、県が周辺住民などとの協議の上で求めた点があった。周辺の景観を損なわないこと、太陽光パネルによる周辺への反射の軽減などだった。

 具体的には、元々緑に覆われていた場所のため、できるだけ地上を緑化することや、周囲からの目隠しの役割を担っていた築山の維持、外周の樹木の伐採の制限などだった(図2)。

図2●外周の一部に植えられたクロマツ
緑化や周囲からの目隠しを求められた(出所:日経BP)
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地上はハーブで覆い、除草は障がい者の労務機会に

 発電事業者のアイ・ねっとは、山陰地方の地方自治体や第三セクター方式のケーブルテレビ事業者など向けにコンサルティングなどを手がけてきた。

 太陽光発電は未経験だったものの、既存のケーブルテレビや公共ネットワークによる地域の情報網の構築と同じように、地域を活性化できる事業の一つとして展開できるのではないかと考えた。

 これまで培ってきた島根県を中心とする地域のネットワークを活用したプロジェクトの組成や実行のためのノウハウを生かして開発・運営しているという。

 例えば、地域の障がい者就労支援施設である「どりーむ」(出雲市東福町)に、除草の一部を委託している(図3)。どの地域でも就労機会の確保が課題となっている中、働く場の提供に寄与している。雨が降るなどの悪天の日を除く平日には、障がい者が手作業で除草している。

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図3●手作業による雑草の除去
障がい者就労支援施設による作業の様子(出所:日経BP)

 メガソーラーの敷地内には、県が求めた地上の緑化を実現するために、被覆植物としてハーブを植えている。

 ハーブが地表を覆うことで、他の雑草の育成を抑える効果にも期待している。ただし、場所によってハーブや他の雑草の生育状況は異なり、除草作業も必要となっている(図4)。この作業の一部を委託している。

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図4●アレイ間にハーブを植えた
場所によって育成状況が異なる。サッカーのグラウンドとして使われていた場所(左下)では、芝が強く根付いている(出所:日経BP)

 このほか、地域の活性化に資する取り組みとして、売電収益の一部を市に寄付し、「出雲SOLARiE 1000年の森づくり」と呼ぶ事業を実施している。

 2017年度までは年100万円、2018年度からは年200万円を寄付しており、これをベースとして農林水産省による森林保全の補助事業を活用し、島根半島で大きな課題となっているマツ枯れやブナ枯れへの対策などに取り組んでいる。この関連で、出雲市の森林組合に毎年300万~600万円の施業を委託しているという。

 また、メガソーラーが立地する大社町内の小中学校4校に、発電量のほか学校の連絡事項が掲示できるディスプレイを寄贈し、生徒の再生可能エネルギーに関する理解や意識の向上と同時に、学校の業務の効率化にも寄与しているとする。

 地域のネットワークを重んじて開発・運営しているという点では、出雲市大社町ならではの逸話もある。

 アイ・ねっとの石原俊太郎代表取締役は、出雲市の教育委員会の委員を務め、その際の縁から、出雲大社の宮司家の一つである北島國造(こくそう)家が、メガソーラーの起工式と竣工式に関わった(図5)。

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図5●出雲大社の宮司家が竣工式などに関わった
中段は、北島國造(こくそう)家の國造館で開催された直会の様子で、北島建孝國造が挨拶した(中右)。下は、メガソーラーの現地事務所の神棚(出所:アイ・ねっと、下は日経BP)
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 出雲大社の宮司家は、千家國造(せんげこくそう)家と北島國造家の二つがある。いずれも天皇家の親戚であり、祭事などを行う両家の國造館(こくそうかん)は、出雲大社の両脇に立地している。

 メガソーラーの起工式や竣工式は現地で実施し、その後の直会(なおらい:神事の終了後に、神前に供えた御饌御酒を戴く行事)は、この國造館の一つである北島國造館にて開催した。

年間日射量は国内最少、単結晶パネルで事業性に活路

 設計・監理は自社で賄った。既存事業の地域情報化のコンサルティングでも同様の業務があり、分野は違っても経験が生きたという。

 施工は、こうした業務で関係の深かったソルコム(広島市中区)に委託した。同社はNTT西日本の電気通信設備工事を主業とする。実際の土木や建設、電気工事などは、自社のネットワークを活用して地元企業で構成した。このため、施工コストを抑えられたとしている。

 太陽光発電設備の設置では、日本海に近いことから、地面が砂地であることに対応した工法を採用した。

 鋼管による杭基礎を採用しているが、砂地を考慮した押し込み・引き抜きの支持力、地震や風圧も想定した水平抵抗力などを実現できる資材と工法を採用したという(図6)。

図6●砂地に適した杭基礎の工法を採用
鋼管による杭を使った(出所:日経BP)
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 架台はアルミを多用し、耐塩害性を優先した。ネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ヶ根市)製で、低コストで導入できる魅力もあったという。

 太陽光パネルは、単結晶シリコン型の製品(出力270W/枚)を2万736枚並べ、合計出力約5.598MWとした(図7)。PCS出力の4.41MWに対して、約1.27倍の過積載とした。ただし、力率は98%となっている。

図7●単結晶シリコン型の高効率パネルを採用
国内で年間日射量が最も少ないという出雲市で、事業性を高める工夫の一つ(出所:日経BP)
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 出雲市は、国内で最も年間日射量が少ないことから、こうした条件でも事業性を高めるために、低い日射量の状況でも比較的発電量が多いパネルを選んだ。パネルもネクストエナジー・アンド・リソース製を採用した。

 PCSは、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の関連機器を中心に一体化したWave Energy(東京都港区)のオールインワン型を導入した。

 集電盤からPCS、昇圧変圧器などを一体化した製品で、PCSは出力630kW・直流入力電圧1000V対応機で構成している。

 PCSは、計画当初は500kW・600V対応機の採用を想定していたが、大出力・高電圧対応機に変えることで、PCSそのものの導入台数の削減に加えて、接続箱の台数や電線の総延長の削減といった導入コスト全体の削減につながった(図8)。

図8●当初の計画からPCSの仕様を変えてコスト削減と高効率化
東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の関連機器を中心に一体化したWave Energyのオールインワン型を導入(出所:日経BP)
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 さらに、発電開始後の所内での発電・送電ロスの削減にも寄与している。ここでは、PCSの変換効率が当初予定機の97.1%から98.5%に向上したことも大きかった。

 発電設備の選定では、Wave Energyの助言が大きかったとしており、遠隔監視・制御システムも同社のものを採用している。

 遠隔監視では、PCS段階、ストリング(太陽光パネルを接続する単位)段階の二つの段階で発電状況を把握している。PCSの遠隔制御も可能で、連系先の送電線の事故などが原因でPCSの稼働が停止した場合には、電力会社から安全の確認と復旧の許可が得られれば、現地での手動による操作ではなく、遠隔から再起動できる。

 監視カメラの台数も多く(図9)、可視画像だけでなく、赤外線とマイクロ波の2種を使った監視システムで防災・防犯に努めている。

図9●監視カメラを多く導入
赤外線とマイクロ波の2種を使った監視カメラも設置(出所:日経BP)
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 2015年10月に売電を開始した後、発電量は好調に推移しているという。当初の計画値に対して10%~20%上振れしており、事業収支が計画より向上している。

 また、売電先を中国電力ではなく、新電力としていることも事業性を高める要因となっている。

 新電力は一般的に、固定価格買取制度(FIT)の設備認定上の買取価格よりも、割高で再エネ電力を購入する。今回の場合も、FIT上の売電単価である40円/kWh(税抜き)に上乗せした価格で、丸紅新電力に売電している。

●発電所の概要
名称出雲SOLARiE 大社太陽光発電所
所在地島根県出雲市大社町中荒木2391(宍道湖西部浄化センター内)
敷地面積約6万3480m2
土地所有者島根県
太陽光パネル容量約5.59872MW
パワーコンディショナー(PCS)容量4.410MW
力率98%
発電事業者アイ・ねっと(島根県松江市)
設計・監理アイ・ねっと
施工ソルコム(広島市中区)
O&M(運用・保守)アイ・ねっと
太陽光パネルネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ヶ根市)製
(単結晶シリコン型、270W/枚、2万736枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力630kW・直流入力1000V対応機7台、Wave Energyのオールインワン型製品)
遠隔監視システムWave Energy製
監視カメラ・セキュリティシステム綜合警備保障
売電開始日2015年10月
固定価格買取制度(FIT)の認定上の売電価格40円/kWh(税抜き)
売電先丸紅新電力

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/072500070/