鹿児島県枕崎市にある枕崎空港の跡地に、連系出力が合計6.98MW、太陽光パネルの出力が合計約8.218MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある。
枕崎市がメガソーラー用地として市有地を賃貸する形で、発電事業者は入札によって決まった。2014年9月の稼働から、約6年10カ月が経過している(図1)。
このメガソーラーにおいて2020年12月、ドローン(無人小型飛行体)を使った点検が実施された。
メガソーラーの開発時、土地を所有している枕崎市に採用された当初の案は、特別高圧送電線に連系する1つのメガソーラーで出力約7MWという構想だった。
しかし、連系先の特別高圧送電線に約5MWしか連系できないことがわかり、残りを高圧配電線に連系する2つのメガソーラーとし、「枕崎市枕崎空港跡地第一発電所・第二発電所」という構成になった(2014年4月公開のメガソーラー探訪:鹿児島・枕崎、国内初の空港跡のメガソーラー)。
高圧の第一発電所が連系出力1.99MW、太陽光パネル出力約2.27MW、特高の第二発電所が連系出力4.99MW、太陽光パネル出力約5.94MWとなっている。
発電事業者は、オリックスと九電工の合弁によるSPC(特定目的会社)のKクリーンエナジー(枕崎市)である。出資比率はオリックスが70%、九電工が30%となっている。このSPCが枕崎市から土地を借り、メガソーラーを開発・運営している。
EPC(設計・調達・施工)とO&M(運用・保守)サービスは九電工が担当している。太陽光パネルは韓国ハンファQセルズ社製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製、架台はリヒテンシュタインのヒルティ製を採用した。
稼働してから約7年、順調に発電を続け、大きな問題は生じていないという。太陽光パネルの劣化や何らかの異常などによる発電効率の低下なども、他の発電所に比べて相対的に小さいという。
当初の懸念の1つに、いわゆる「台風の通り道」に立地することがあった。そのため、基礎や架台、金具などの選定や施工を通常以上に念入りにし、強風や豪雨による損壊リスクを最小に抑えた(図2)。
オリックスは、九電工のノウハウによるところが大きいと評価している。同社は、九州で太陽光発電所のEPCサービスの経験が多く、地元の状況にも通じている。
台風に関連したトラブルとしては、強風で近隣農家の小屋から資材が吹き飛ばされ、メガソーラーの敷地内に落下したことがあったが、敷地内の設備に起因するトラブルなどは起きていないという。
日常的に敷地内を巡視・点検しており、太陽光パネルを架台に固定する金具については、ボルトの締まり具合などを定期的に点検している。こうしたボルトの確認は、約3年前から、経済産業省の九州産業保安監督部からも指示されるようになっている。
気象や天候の関連では、2016年3月に、部分日食がメガソーラーからも観測できた(関連ニュース:曇天に隠れた天体ショー、日食による太陽光への影響は軽微)。この時には、日食の終わり近くの時間帯まで、太陽が雲で遮られ、発電量が減っていたことから、ほとんど影響しなかったようだ。
太陽光パネルは、滑走路だった場所に並んでいる。アスファルト舗装されているため、設置やO&Mの作業が効率的になる利点が大きい(図3)。
アスファルト上には、雑草がほとんど生えないので除草が不要になる。パネルを設置していない場所で、舗装されていない部分には草が生えるため、定期的に除草している。
一方で、夏の高温期には、土よりもアスファルト上の方が高温になりやすい。この影響により発電効率が多少、低下している可能性はあるという。しかし、日射量の多さによる利点が上回り、他の発電所に比べて目立った出力低下は見られないという。
隣では現在でもヘリポートが稼働しているなど、航空関連の設備が多いことで、落雷による被害が抑えられていると推測している。避雷針などが多く、直撃雷を防ぐ効果につながっている可能性がある。
それでも、稼働した初年度に、直撃雷の被害を受けた。この時には、太陽光パネルが約40枚損傷し、周辺の一帯が焼け焦げた状態になった。
もともとPCSなどの機器には、避雷器(SPD)を通常よりも多く設置している。これにより、誘導雷による損傷は防げているという。
海に近いことから、金属の資材や部品の腐食にも念入りに対処している(図4)。
通常よりも厚く高耐食めっきを施した鋼板を、架台や接続箱などの筐体に採用している。それでも端部の切り口などは比較的、サビやすいので、巡視点検時に見つけると、サビを削り落として防錆材を塗り直すといった対応をしている。
発電量に影響する劣化ではないだけに、サビを放置する発電所もあるが、こうした早めの対応を積み重ねていくことが大きな不具合を防ぐことになるという。こうした予防保全の考え方は、オリックスの志向にも合致するもので、九電工によるO&Mを評価する1つの事例という。
航空関連施設ならではの申請や調整
2020年12月、初めてドローン点検を実施した(図5)。定期点検や巡視などが確実に実施され、発電量も良好な傾向にあるが、より念入りな予防保全を実現するために、現状をより精密に診断し、今後のO&Mに生かしていくことが目的だった。
今回のドローン点検では、空港跡地というだけでなく、隣でヘリポートが運用されているため、他のメガソーラーとは異なる申請や実施日時の調整が必要だった。
オリックスが単独などで運営しているメガソーラーでは、子会社のオリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント(OREM)がアセットマネジメント(AM)とO&Mを担当し、毎年のようにドローン点検を実施している。
その知見を活用したいと考え、SPCからO&Mの九電工に提案し、SPCがOREMに委託した。
枕崎空港跡のメガソーラーでは、今後2~3年間は年に1回、定期的にドローン点検を実施する方向で検討しているという。
OREMがO&Mを担当しているメガソーラーでは、1回目のドローン点検で、多くの不具合が見つかるという。その結果を受けて念入りに対処していくことで、2年目、3年目のドローン点検では、不具合の数が少なくなる。
そこで、3年目以降はドローン点検の間隔を隔年などに広げている。枕崎のメガソーラーでも、そのような流れになってくるのではないかと予想している。
九電工でもドローン点検に取り組んでおり、現在、十数人の担当者が操縦士関連の資格認定を申請中という。九電工が運営している枕崎市の別の発電所では、ドローンで空撮した熱分布の画像から、太陽光パネルの割れを発見できた例もあり、効果が高いことを実感しているという。
今回のドローン点検で見つかった不具合の可能性は、1回目としては、標準的な件数だったという(図6)。
ただ、その後、現地を巡回して確認したところ、不具合のある箇所はドローンで発見された件数ほど多くないという。日々のメンテナンス作業によって、鳥のフンなどの汚れも清掃しているため、過熱を示していた場所でその原因が解消されているという場合もあるようだ。
九電工によると、過熱している場所がはっきりわかることが、まず大きな利点という。接続箱の入力端子を通じた測定や、パネルごとに切り離して測定しなくても、不具合箇所を特定できることで探す手間が省ける。電気的な不良が予想される太陽光パネルについては、順次、開放電圧測定、絶縁抵抗測定などを経て、実際にどの程度の不良が生じているのかを把握していく。
いち早く「九電によるオンライン制御」
九州では太陽光発電所への出力制御(抑制)が日常化している。この中で、枕崎空港跡のメガソーラーでは、オリックスが関わる案件の中で、いち早く九州電力によるオンライン制御に対応したという。約1年半前に導入した。
この費用対効果などの大きさから、オリックスは九州で運営しているメガソーラーに順次、九電によるオンライン制御への対応を進めていった。
枕崎空港跡のメガソーラーを最初の案件に選んだのは、規模の大きさとともに、PCSの仕様と通信プロトコルが、九電の仕様と相性が良く、比較的安価で簡便に導入できるためだった。
現在は、九電にオンライン制御への変更の要請が多く、現地での施工や対応に半年以上、待つ状況にあるという。待っている期間の売電ロスを回避できたことだけでも、いち早く導入しことの利点は大きそうだ。
九電による出力制御指令は、発電事業者側が制御する場合は、8時~17時などの間、止めることを指示されるが、九電によるオンライン制御では、現状では11時~13時といった2~3時間で済んでおり、売電ロスに大きな差が生じる。
名称 | 鹿児島県枕崎市枕崎空港第一発電所・第二発電所 |
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所在地 | 鹿児島県枕崎市あけぼの町275ほか |
敷地面積 | 約12.9万m2 |
土地所有者 | 枕崎市 |
発電事業者 | Kクリーンエナジー (出資比率:オリックス70%、九電工30%) |
EPC(設計・調達・施工)サービス | 九電工 |
O&M(運用・保守) | 九電工 |
連系出力 | 合計6.98MW 第一発電所:1.99MW、第二発電所:4.99MW |
太陽光パネル出力 | 合計約8.218MW 第一発電所:約2.27MW、第二発電所:約5.94MW |
初年度の年間発電量(計画) | 約918.59万MWh (一般家庭約2550世帯の消費電力に相当) |
太陽光パネル | 韓国ハンファQセルズ社製 (出力245W品、3万3544枚) |
パワーコンディショナー(PCS) | 東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製 |
架台 | リヒテンシュタインのヒルティ社製 |
売電開始 | 2014年9月 |
売電先 | 九州電力グループ |
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