採用した県内企業では期待以上の成果が

 では、これまでに副業人材を採用した県内企業側からのプロジェクトに対する評価はどうなっているだろうか?

 鳥取県立ハローワークが今年3月に実施したアンケートによれば、求人企業と応募者の双方の満足度は非常に高いことが見て取れる。「期待以上、期待通りが約80%」という調査結果が出ている。

 副業・兼業人材が解決する経営課題についても、ほどよい粒感が保たれているようだ。採用を継続している企業は多いのだが、「より高度なミッションへ移行」という答えは1/4程度に留まっていて、半数以上は“ライト”な経営課題の解決をそのまま続けている。

副業・兼業プロジェクトの採用企業にとったアンケート結果では高い評価が出ている。「期待以上、期待通りが約80%」。案件の内容は「販路拡大と事業分野拡張」など経営企画的な仕事への支援。約1/4の契約者がさらに高度なミッションへと移行している。逆に言えば副業・兼業的な課題の粒で満足していることがうかがえる(資料:鳥取県立鳥取ハローワーク)
副業・兼業プロジェクトの採用企業にとったアンケート結果では高い評価が出ている。「期待以上、期待通りが約80%」。案件の内容は「販路拡大と事業分野拡張」など経営企画的な仕事への支援。約1/4の契約者がさらに高度なミッションへと移行している。逆に言えば副業・兼業的な課題の粒で満足していることがうかがえる(資料:鳥取県立鳥取ハローワーク)
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大手企業の人材が月3万円で副業契約

 実際に、経営課題を絞り込み、副業人材の支援を上手に受けている県内企業例が、鳥取県の東部で古くからの基盤を持つ住宅建設業「いなばハウジング」(鳥取市・従業員14人)だ。

 同社の山田真也社長と取締役の山田美和子氏夫妻は、顧客を若年層に広げるために慣れないSNSを展開していきたいという課題を持っていた。2020年度の「副業・兼業プロジェクト」に求人募集を出し、鳥取県立ハローワークととっとりプロフェッショナル人材戦略拠点のフォローを受けながら2020年12月から応募者の松本崇氏と月3万円で業務契約を結んでいる。

 松本氏は三菱地所でJ-REITの投資家向け広報や経営企画を担当しており*1*2、建築・不動産業界のトップ企業に所属する34歳。中小企業診断士の資格も持つ、現役ビジネスパーソンだ。今のところ、オンラインミーティングを通じての支援となっている。

*1 2021年8月時点。三菱地所は社員の副業を認めている
*2 J-REITとはJapan Real Estate Investment Trustの略で、投資家から資金を集めて不動産投資を行い、その賃貸収入や売買による収益を投資家に分配する商品のこと

 山田社長夫妻は、月3万円でここまでの業務支援が受けられていることに驚きを隠せない。「ありがたすぎて本当にいいのか」という思いを持っていると語る。二人は「松本さんが、オンライン会議の前段階で資料集めなどにどれだけ手間をかけてくださっているか想像できるじゃないですか。それなのにこれぐらいの報酬でやっていただいて大丈夫なのかなと心配になるくらい。それくらい親身にしてくださっていますし、私たちが疑問に思うことも一つひとつ的確にアドバイスいただいて本当に感謝しかないですね」と声をそろえる。

 「いなばハウジング」は江戸時代から続く地域の絆の中で事業を続けてきたが、過疎化が進む地域の中で新築ビジネスを広げていくにはどうすればいいかという危機感を抱えていた。これまでの地縁・人縁中心の紹介をメーンにしてきた新築案件だけでなく、市町村合併で街中に住まいを求めるような30代、40代の若いファミリー層の顧客をどう開拓していくかという課題だ。

 山田社長は、この年齢層にリーチするためには従来の紹介や新聞折り込みのチラシに頼るだけではなく、SNSを活用していかなければならないとずっと考えていた。しかし、そのノウハウは社長はもちろん社内にもはない。二人は「プライベートでもまったくSNSはやっていませんでした。それなのにオフィシャルでやるというのはハードルが高くて。そもそもどういうことをTwitterでつぶやけばいいか、どういう写真をインスタグラムに投稿すればいいか、まったく分からなかった」と当時を振り返る。

いなばハウジング代表取締役社長の山田真也氏と取締役の山田美和子氏夫妻。美和子氏がもう一人の社員と共に同社SNSの主担当を務めている(写真:高山和良)
いなばハウジング代表取締役社長の山田真也氏と取締役の山田美和子氏夫妻。美和子氏がもう一人の社員と共に同社SNSの主担当を務めている(写真:高山和良)