15年以上放置されていた公園内の廃墟の解体を市が決断

 番所鼻公園にはもう一つ、再整備以前に遡る大きな課題がある。冒頭で触れた「番所会館」の建物が、廃業後ずっと放置されたままになっていることだ。この廃墟は公園の入り口にあたる展望広場と「タツノオトシゴハウス」を結ぶ園路に建ちふさがり、公園の景観を著しく損なっている。

 前述の通り、番所会館は市有地(建設時は町有地)に建つ私有の建物だ。当初の土地賃貸契約では撤退時の原状復帰が義務付けられていたが、経営破綻した所有者に資力はなく、解体費を請求しても支払われる見込みは薄い。かといって、私有財産を公費で取り壊すわけにもいかない。加藤氏が行政に訴えても、はかばかしい反応は得られなかった。

 この番所会館問題と、公園におけるサービス提供の問題。これらを解決して公園の将来像を描くには、学識者のアドバイスが必要だと感じた加藤氏は、市長の推薦を得て、地域活性化センターの「全国地域リーダー養成塾」を受講する。その修了レポートで「公園に確たる責任者がおらず、番所鼻公園の向かうべき方向性が示されない」と指摘。公園を単に「管理」するのではなく「運営」する、パークマネジメントの必要性と、その実現に向けた公民連携を訴えた。

空回りする公園への想い:パークマネジメント会議で示した、公園を巡る関係者の立場(図版提供:加藤潤)
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 市は加藤氏のレポートを受け、番所鼻公園の運営手法を公民で検討するための制度設計を、おこそ会に業務委託した。業務の対象範囲は公園だけでなく、地域おこし協力隊の活用や、空き家再生、移住者雇用にも及んでいる。そのすべてを包括して「観光頴娃住プロジェクト」と銘打った。

 2016年、「観光頴娃住プロジェクト」は市の商工観光課・企画課・都市計画課の職員とおこそ会のメンバーとで全体会議3回、公園分科会4回を重ねた。その成果として、番所鼻公園のパークマネジメント方針を「遊べる公園」「稼げる公園」「地域と歩む公園」の3つに決定。これを踏まえ、17年3月に「番所鼻パークマネジメント会議」が発足する。市長の要請を受け、この会議で番所会館問題についても検討することになった。

 パークマネジメント会議は、議論と併行して隣県宮崎の「青島ビーチパーク」を視察するなど、他地域の事例も研究した。1年間の検討を経て、17年末にひとまずの結論を出す。「番所会館を撤去して更地にし、仮設店舗で来園者にサービスを提供してはどうか」という提案だ。番所会館は海に面した好立地にあり、撤去すれば、園路沿いに眺めのいい広場ができる。

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使われずに放置されている番所会館と、撤去した場合の予想図(写真提供:頴娃おこそ会)

 仮設にこだわる理由を、加藤氏は次のように説明する。「番所会館問題やおもてなし拠点の経験で、サービス施設を常設する難しさを知った。新しく何かを建てるより、キッチンカーやトレーラーハウスが置けるスペースをつくって、多くの人に参画してもらえる体制をつくりたい。移動できる設備なら、台風対策も難しくない」

 この提案を受け、市は2018年6月に解体方針を決定。8月には頴娃地域の5団体も改めて市に要望書を提出し、9月議会で解体に向けた市有地明け渡し請求の訴訟予算が承認された。

カフェと一体のデッキ完成、廃墟解体にはクラウドファンディングも

 2018年5月、園内に新しい施設が完成した。先代の西村正幸氏から「いせえび荘」を引き継いだ西村徹氏、要氏兄弟の働きかけによる木製デッキだ。「いせえび荘」内に新設した「ABカフェ」に面しており、来園者はカフェで購入したドリンクや軽食をデッキで楽しむことができる。カフェを利用しない人も、自由に使える。番所鼻公園にようやく、常時飲食サービスが提供できる場ができた。

木立を活かして設置された「みんなのデッキ」。ベンチやテーブルがあり、WI-FIも使える(写真:萩原詩子)
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「みんなのデッキ」のカフェは西村要氏の妻、貴子氏(左)が運営する。右はスタッフでブロガーとしても活躍する福島花咲里氏。2019年6月に県内他地域から移住してきたばかりだ(写真:萩原詩子)
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 西村氏兄弟もパークマネジメント会議に参加しており、市有地で県の保安林でもあるという難しい条件をクリアして設置許可を取り付けた。設置費用は県産材活用の補助金を活用しならが「いせえび荘」が負担し、市に土地の使用料として年額約1万円を支払っている。

 2019年7月、市はふるさと納税の仕組みを利用して、番所会館の解体撤去費用の一部を広くクラウドファンディングにより集め始めた。市ふるさと振興室の上野晋作氏はクラウドファンディングの狙いについて次のように説明する。

 「公金の支出を少しでも減らしたいという理由のほかに、クラウドファンディングを通じて、解体後の公園に継続的にかかわる人、関心を持つ人を増やしたいと考えている」

 市は解体費用を約5100万円と試算しており、約1割の500万円をクラウドファンディングの目標金額に設定している。目標金額に達しなかった場合は、市が不足分を負担して解体を実行する。2019年中には解体を済ませる計画だ。

 解体後の活用についても、8月から隔週日曜日にキッチンカーを営業する実証実験を行っている。2010年に始まった公民連携による番所鼻公園再整備は、10年を経て、また新たなフェーズを迎えている。

市では、番所会館の解体撤去費用の一部をふるさと納税の仕組みを利用したクラウドファンディングで集めることにした。トラストバンク(東京都目黒区)のサービス「ガバメントクラウドファンディング」を利用している
キッチンカーによる実証実験の様子(写真提供:頴娃おこそ会)
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