長野県松本市にあるコワーキングスペースやサテライトオフィスなどの複合施設「33GAKU(サザンガク)」がコロナ禍に苦しみながらも入居企業や月額会員を少しずつ増やしている。サテライトオフィスはほぼ満室だ。市が資金を拠出し、第三セクターが整備・運営し、民間事業者も参画するこの施設は、生産年齢人口の減少に歯止めをかける狙いがあるという。開設の経緯や利用状況、今後の取り組みについて取材した。

 「33GAKU(サザンガク)」が長野県松本市の中心市街地、NTT東日本大名町ビルの1階を賃借してオープンしたのは2019年11月のことだ。ICT技術を用いて、新しい働き方や起業・創業を支援することを目的に開設した、コワーキングスペース、サテライトオフィス、テレワークオフィスの3つの機能を併せ持つ複合施設だ。郊外の市有地などではなく、便利な街中で、かつ観光名所の松本城が望める立地としたのは、起業家や地元のワーカー、ワーケーションで訪れる都心部のビジネスパーソンなどに利用してほしいという意図からだ。

33GAKUのコワーキングスペース。プロジェクターやプリンター複合機、ホワイトボード、Wi-Fi設備などがあり、リモートワークやワーケーションなどに使える(写真:赤坂 麻実)
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レイアウト図(33GAKU公式サイトより)
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33GAKUから歩いて3分の距離に国宝に指定されている松本城が(左)。観光スポットとして人気の中町通り(右)や縄手通りも33GAKUのすぐ近く(写真:2点とも赤坂 麻実)

市の資金で第3セクターと民間企業が運営

 33GAKUを所有・運営するのは、松本市の外郭団体である松本ものづくり産業支援センター。松本市が約7割の2200万円を出資する一般財団法人で、副市長の宮之本伸氏が理事長を務める。市が同センターに派遣した職員が、33GAKUに常駐して運営に携わっている(現在は1人、開設当初は2人)。

 建物の改修工事費は約2億円、年間運営費は約6000万円。松本ものづくり産業支援センターの各年度の収入は主に市からの補助金であり、他に商工会議所の負担金、事業収入など。33GAKUは実質、市の資金で運営されているといえる。

 コワーキングスペースとテレワークオフィスについては、凸版印刷に運営を委託している。市が2018年2月に公募プロポーザル方式で運営者を募集したところ2者の応募があり、計画の具体性と経営基盤の安定性から凸版印刷が選ばれた。松本ものづくり産業支援センターと凸版印刷の間で、当初3年間の業務委託契約を結び、その後は1年ごとに更新していく。

 コワーキングスペースには、オープンなワークエリア、食事やオンライン会議に使いやすい半個室スペース、短時間の会議向けに背の高い机とイスを用意した「スクラム会議室」、月会員専用のブースを用意した。利用料金はドロップインが2時間までの場合で500円、2時間以上は1000円/日だ。月会員は1万円/月。営業時間外も利用できる特別会員は1万2000円/月で、会員資格を得るための審査がある。

エントランスそばには、通りを眺めながら仕事や休憩ができる場所も(写真:赤坂 麻実)
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アイランドキッチン完備。利用者は事前に申請すれば、キッチンを占有することも可能(写真:赤坂 麻実)
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 サテライトオフィスには、数人で使えるオフィス8区画と、個人ブース8区画、会議室や電話ブースを整備した。新規事業の創出や起業などでの利用を想定している。入居している企業・個人は、建物北側の専用玄関を使って24時間365日、出入りできる。コワーキングスペース側ともつながっていて、コワーキング側からサテライト側への通路ドアには電子錠を設けた。オフィスは月額(税込・共益費込)4万3500円~13万4500円、個人ブースは月額1万7000円だ。

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サテライトオフィスは合計16区画。ほぼ満室で、空室に対する問い合わせも多い(写真:2枚とも赤坂 麻実)

 テレワークオフィスは、いわゆるフルタイムワーカーのリモートワーク用途ではなく、フリーランスとして柔軟な働き方をしたい人や、子育てや介護などでフルタイムの就労が難しい人など向けに用意した。保育士常駐の無料託児ルームも併設している。さらに仕事のマッチングも行っている。33GAKUでは、文字校正・画像加工やアンケート入力・集計、ホームページ・SNSの更新作業といった業務を外注したい企業を募集しており、テレワークオフィスに登録したワーカーと仕事をマッチングしている。

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テレワークオフィスと付属の無料託児ルーム(写真:2枚とも33GAKU)
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テレワークオフィスでは、企業にバックオフィス機能を提供し、地域の若者や女性には時間の融通が利く仕事を提供する(資料:松本市工業ビジョンより)
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