そこで田村市は大方病院の譲渡を受けることを決め、2018年12月には必要な条例を制定した。鉄筋コンクリート造5階建て、延べ床面積2651㎡の病院を真仁会から賃借し、職員の雇用を原則として継続することが条件。年6000万円を超える賃料のほか、医療機器の整備費用が田村市の主な負担となる。

 運営は、利用料金制による指定管理者制度を導入。公募に手を挙げた複数の法人の中から、委員会による審査を経て郡山市で病院を経営する公益財団法人星総合病院が選ばれた。契約期間は2019年7月から2024年3月までの5年弱だ。「医師を採用するルートもなく、経営ノウハウも持ち合わせていない当市が、自前で病院を経営しても財政負担が大きくなるばかりなのは目に見えている。初めから指定管理で運営するしかないと考えていた」と渡辺氏は話す。

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 星総合病院に決まったのは、隣の三春町の町立病院を指定管理者として運営してきた実績が大きい。地域の開業医の先生方と一緒に地域医療を担っていこうという姿勢も、評価されたという。

 大方病院に在籍していた医師に、星総合病院から赴任してきた医師を加え、常勤医3人でスタート。非常勤医で整形外科や眼科の外来診療も始めた。救急患者の専門医療機関への搬送の見極めと円滑な紹介、急性期病院などを退院した患者が自宅・施設に戻る前の一時的な入院、がん末期や老衰など終末期で入院管理が必要な患者の受け入れなど、市内や郡山市などにある医療機関との役割分担・連携を重視した診療を提供するのが基本方針だ。

  地域包括ケアシステム構築のため、高齢者施設や薬局、介護事業者などとも積極的に連携していく。星総合病院から赴任してきた形成外科医の病院長が、床ずれができた患者の治療のために高齢者施設を回ったり、あるいは介護施設向けに講習会を開催するなどして、関係づくりを深めている。いずれは訪問看護に取り組むなど、在宅医療を中心とした展開も念頭にある。

田村市保健福祉部保健課課長の渡辺春信氏。「市内で唯一の病院をなくすわけにはいかない。最低限の医療提供体制の整備は、基礎自治体に欠かせない」と語る(写真:井上俊明)
田村市保健福祉部保健課課長の渡辺春信氏。「市内で唯一の病院をなくすわけにはいかない。最低限の医療提供体制の整備は、基礎自治体に欠かせない」と語る(写真:井上俊明)
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