自治会と連携し、売れる空き家を発掘

 冒頭に示した表「あったか住まいるバンクの登録・成約件数」を見ると分かる通り、立ち上げ当初の空き家の登録件数は限られていた。利用者が増えるのは登録物件に空き地も加えた2016年度以降である。

 市が取り組みを本格化させたのも、その前年にあたる2015年度から。前述のように、空き家の所有者である地主・家主向けのインセンティブとして、最大50万円を交付する解体費補助金などの助成制度を新設した。

 主に空き家対策と定住促進を担当する栃木市都市整備部住宅課長の大野和久氏はその狙いと反響をこう振り返る。

 「空き家の有効活用に関する条例制定だけで大きな効果が上がるとは思えなかった。空き家の所有者にも、空き家問題に目を向けてもらおうと、条例制定と同時に解体費補助金も制度化した。反響は大きく、処分するにしても利用するにしても、所有者は費用が掛かるため空き家を放置していたという実態に気付かされた」

 市はここから、「住まいるバンク」への登録物件を増やし、さらにその成約を促すことに力を入れていく。

 登録物件を増やすには、空き家所有者への働き掛けが欠かせない。そのきっかけづくりとして、解体費補助金の制度が役立ったと大野氏はみる。

 「補助金交付の相談を受けて現地を訪ねると、利用できそうな空き家が少なくなかった。そこで所有者に対して、解体するのはもったいないから、『住まいるバンク』で売却・賃貸しないか、と持ち掛けるようにしている」

 解体費補助金の申請は年々増加し、いまでは年間100件を超える。大野氏は「財政負担であることは否めないが、危険な空き家は取り壊すという基本的な取り組みは市民の間で浸透してきたのではないか」と評価する。

 さらに2017年度には、市内472自治会のうち44自治会と連携し、新しく発生した空き家の情報を把握する仕組みづくりに取り組んだ。狙いは、中古住宅として状態の良い売れる空き家を発掘し、「住まいるバンク」での成約につなげていくことだ。

 自治会と連携を図ったのは、大野氏自身の経験からだ。「自治会役員を引き受け、自治会で居住者の名簿を管理していることを知った。空き家は老朽化しないと見分けがつかないが、自治会の情報収集力を生かせば、状態の良いものの情報も得られると踏んだ」。

 この取り組みでは空き家と思われる家屋を色付けした住宅地図や「空き家情報提供票」を自治会から報告してもらい、それら177件(2018年8月現在)の情報を基に市で所有者の確認を進め、「住まいるバンク」への登録など活用を促している。

 「空き家情報の入手はもともと受け身の姿勢だった。それを、能動的に探してアプローチする姿勢に転じることができた。2017年度事業とはいえ、実際に始まったのは2017年の後半。成果が表れるのは、これから」と大野氏は話す。この取り組みは、国土交通省のモデル事業として採択された。

国土交通省のモデル事業として採択された「自治会と連携した空き家の早期発見・活用事業」で用いた現地調査時のチェック項目。この取り組みに参加した自治会ではこれを基に空き家と思われる家屋を住宅地図上で色付けし市に報告した(資料:国土交通省)
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「自治会と連携した空き家の早期発見・活用事業」に参加した自治会は、住宅地図の情報とともに、この「空き家情報提供票」も作成し市に報告した(資料:国土交通省)
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「自治会と連携した空き家の早期発見・活用事業」の仕組み。自治会、栃木市、宅建業協会と金融機関という民間、この3者が連携し、図のような役割分担で事業に取り組んだ(資料:栃木市)
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