子育て世代には100万円規模の補助

 一方、空き家・空き地の成約を促すには、それらに対するニーズを掘り起こす必要がある。その一環として打ち出したのが、移住・定住促進策である。

 「まちなか定住促進住宅新築等補助金」は、その一つ。移住促進を狙う「IJU(移住)補助金」と定住促進を狙う「市内住み替え補助金」の2つに分かれる。

まちなか定住促進住宅新築等補助金の概要。市外からの転入者を対象にした「IJU(移住)補助金」と市内転居者を対象にした「市内住み替え補助金」の2つに分かれる(資料:取材を基に作成)
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 例えば子どもが2人いる30代の夫婦が「住まいるバンク」に登録されている物件を購入し、市内に移住した場合を想定しよう。利用するのは、「IJU(移住)補助金」だ。

 補助金額は、中古住宅の購入で20万円、若年世帯加算で10万円、子ども加算で20万円。住宅所有者の就労場所によって10万円または5万円がさらに加算され、合計は最高60万円に上る。リフォーム補助金の交付も含めれば、100万円規模にまで膨らむ。

 こうした手厚い助成制度も支持されているのか、移住地としての人気は高い。冒頭に紹介した「田舎暮らしの本」2018年2月号で発表した「『住みたい田舎』ベストランキング」では、若者世代が住みたい田舎部門で全国1位、子育て世代・シニア世代が住みたい田舎部門で全国2位にランクされている。

宝島社「田舎暮らしの本」の企画「『住みたい田舎』ベストランキング」では若者世代が住みたい田舎部門で2年連続全国1位に。町中には、それを祝うのぼりが立つ(写真:茂木俊輔)
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 実際、子育て世代が「住まいるバンク」を通して中古住宅を購入し子どもの小学校入学を前に市内に移住する例は少なくない。県宅建業協会県南支部で理事を務める村上文夫氏が自ら仲介業務に携わった中にも、そうした移住の例がある。

 ひとつは、隣接する小山市からの移住例だ。移住希望者から「住まいるバンク」の登録物件に関する問い合わせを受けた市が、その物件の売り手側の仲介会社に決まっていた村上氏に連絡し成約に至った。もうひとつは、東京からの移住例である。東京在住者に地元の知人を通して物件探しを依頼された村上氏が、「住まいるバンク」に登録済みの手頃な物件を紹介したところ、成約に至ったという。

 市はさらに、移住体験施設を市内中心部2カ所に用意する。

 一つは、2016年4月に開設した「蔵の街やどかりの家」だ。「住まいるバンク」を通して売却されようとしていた築60年以上の空き家を、市が丸ごと借り上げて改修した。もう一つは、2018年4月に開設した「IJUテラス蔵人館」。市が寄贈を受けた見世蔵と土蔵を改修し、土蔵部分を宿泊施設に改めた。表通りに面した見世蔵部分はカフェとして利用する。

 これらの移住体験施設は、「購入前にクルマに試乗するのと同じように、移住してくる前に地域のことを知る必要がある」(大野氏)という考えから開設してきたもの。移住検討者ら利用希望者に最長1カ月にわたって貸し出す。施設を利用した後、「住まいるバンク」の登録物件を購入・賃借して移住してきた人も2人いるという。

移住体験施設「蔵の街やどかりの家」。栃木市の中心部、県庁堀と呼ばれる堀に沿った敷地に建つ。使用料は1泊2000円、1カ月3万円(写真:栃木市)
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移住体験施設「IJUテラス蔵人館」。蔵の街大通りに面した一角には、見世蔵を活用したカフェを併設する。使用料は1泊2000円、1カ月3万円(写真:茂木俊輔)
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