金融機関の法人顧客が空き家を購入

金融機関と連携して、栃木市では空き家を購入・解体・改修する際の資金の借り入れに対して利子補給をする制度も導入している

 市は「住まいるバンク」登録物件の成約を促そうと、金融機関の手も借りる。空き家関連の融資制度や市の補助金制度を紹介してもらったり、金融機関の顧客のニーズを掘り起こし、登録物件の売買・賃貸借につなげたりする狙いだ。市内に拠点を置く金融機関4行・20店舗と情報提供に関する協定を交わしている。

 「住まいるバンク」の登録物件ではないものの、この連携によって成約にまでこぎつけた空き家もある。市郊外にある300坪ほどの敷地に建つ旧農家。市は「住まいるバンク」への登録に関して相談を受けていたが、家屋の老朽化が著しく、応じられずにいた。

 買い手を紹介したのは、栃木銀行栃木支店である。顧客の社会福祉法人が通所介護施設の開設に利用できそうな土地・建物を探している中で、市との間で情報交換を続けていた営業担当者がこの旧農家の活用を提案したところ、それが受け入れられ、成約に至った。

 空き家バンクの登録がためらわれるほど家屋は老朽化していたが、環境や規模などの面で社会福祉法人側の条件に合致したとみられる。同支店支店長の大橋重信氏は「今後、改修工事の融資につなげていきたい。顧客の事業計画に物件情報を提供する段階から携わることができると、付加価値提案が可能になり、金利競争に陥らずに済む」と話す。

 不動産取引は売り手・貸し手と買い手・借り手のマッチング。それぞれに関する情報が何より重要だ。市と金融機関が連携関係を深めることで、この旧農家と社会福祉法人のような新しい出合いが生まれることに期待が寄せられる。

 大橋氏はこう強調する。「市は、地主や家主が他人にあまり口外しない『空き家・空き地を売りたい』という情報を持つ。一方で、金融機関は法人顧客の情報に強い。それらをマッチングすることで、売り手と買い手をつなぐことができるようになる」。

 「住まいるバンク」の成約の多さを支えているのは、さまざまなルートを用いて仕入れる登録物件の豊富さ、そしてニーズを掘り起こす移住・定住促進策や情報のマッチングを可能にする民間との連携にあると言える。「住まいるバンク」を活用した移住・定住を今後さらに進めていくにはやはり、仕入れがカギを握るのは間違いない。

 市は2018年度も引き続き、自治会の情報収集力を生かした仕入れを進めていく予定だ。2017年度は国土交通省「先駆的空き家対策モデル事業」の一つとして取り組んだが、2018年度は市単独事業として取り組む。予算は新規参加の自治会1団体当たり7500円。2018年度は6自治会の新規参加を見込む。

 一方、国交省が2018年度事業として打ち出した「空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」の採択を受け、新規の事業にも取り組む。市は空き家所有者らを対象にDIYや民泊をテーマに講習会を開催し、空き家活用を促す方針だ。

 大野氏は「空き家対策に特効薬はない。これまでの取り組みを継続しながら、さらにそこに新しい取り組みを上乗せし、その幅を広げていく必要がある。課題は予算確保だが、施策の流れとしては良い方向に向かっている」とみている。

 栃木市は、2017年3月に「栃木市空き家等対策計画」を策定した。2026年度までの10年間を計画期間としている。年間目標として、空き家バンクへの登録90件、解体補助制度の利用90件、適正管理の指導10件、事前相談による空き家発生の抑制10件を掲げている。