世界遺産の日光東照宮をはじめとする数多くの観光資源を持つ栃木県。だが、2020年春以降の新型コロナウイルスの感染拡大は、県内の観光産業に大きな打撃を与えている。新型コロナの収束後をにらんで観光需要を回復させる政策を立案・施行していくためには、その判断材料となるデータを正確に把握する必要がある。そこで、栃木県は県内の各観光地における観光客の滞在人口や滞在時間を調べるために2020年5月、KDDIの位置情報ビッグデータ分析ツール「KDDI Location Analyzer」を導入した。

観光交流課観光地づくり担当の池澤健太郎主査(左)と野尻浩貴主事(右)(写真:神近博三)

 KDDI Location Analyzerを導入するまで、栃木県では市や町を通じた観光施設へのアンケート調査で、エリアごとの日帰り客や宿泊客の実数調査を実施していた。だが、その調査頻度は年に1回であり、新型コロナウイルスのように突発的な事態に臨機応変に対応することはできなかった。春以降に観光客の数が激減していることは認識していたが、新型コロナ対策で休業中の施設も多く、緊急ヒアリングも難しかった。

 そうした状況下で、「何か使えるツールはないか」と探していたところ、「以前、名刺交換したことのあるコロプラ(KDDIが出資するオンラインゲーム開発・運営会社で、位置情報サービスでKDDIと提携関係にある)からKDDI Location Analyzerを紹介するメールが届いた」(栃木県産業労働観光部観光交流課観光地づくり担当の池澤健太郎主査)。

 KDDI Location Analyzerは、情報提供に同意したauのスマ―トフォン(スマホ)利用者の位置情報をGPS(全地球測位システム)から取得し、匿名化したうえで分析できるクラウド型の地図情報システムである。観光分野では、居住地、性別、年齢といった利用者の属性情報をスマホの位置情報とひも付けすることで、観光客がどの地域から訪れているのか、年齢分布や男女の構成比はどうなっているか、などをエリアごとに詳しく調べることができる。

 導入の決め手となったのは、2020年7月末までの期間限定で47都道府県と20の政令指定都市を対象にKDDI Location Analyzerが無償提供されていたことと、KDDIがゴールデンウイーク期間中の国内主要観光地における来訪者の流れを2020年と2019年で比較するレポートを公表していたことだ(全国主要観光地におけるGW期間中の詳細人流分析レポート:PDF)。

 当時、KDDI Location Analyzerだけでなく、いくつかの位置情報データ分析サービスが、新型コロナ対策用に自治体へ無償提供されていた。だが、「レポートのおかげで、KDDI Location Analyzerでどういったデータを取れるのかが明確にイメージできた」(池澤主査)ことで、栃木県はKDDI Location Analyzerを選択した。

 KDDIのレポートは内閣府の調査に協力する目的で収集したデータに基づいて作成されたものだ。東京・浅草周辺、京都・円山公園周辺などとともに、日光東照宮周辺のゴールデンウイーク期間中の日別来訪者数、性別と年齢層、来訪者の居住エリア分布などの分析結果が掲載されていた。これを見ると、2020年のゴールデンウイーク期間中の来訪者数は2019年比で9割減少しており、特に県外からの来訪者の減少率は97.6%にも達していることが分かる。

日光東照宮周辺のゴールデンウイーク期間中の日別来訪者数(出所:KDDIのレポート)
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日光東照宮周辺のゴールデンウイーク期間中の来訪者の性別と年齢層(出所:KDDIのレポート)
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日光東照宮周辺のゴールデンウイーク期間中の来訪者居住エリア分布(出所:KDDIのレポート)
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