支援の後半には地元企業からも物資を調達

 支援活動を始めたとき、冨山氏が目指したのは「必要な人に必要なものを必要なだけ届ける」ことだった。FacebookとAmazonを利用したのはそのためだ。「Facebookページのアンケート機能を使って被災者から要望を募り、Amazonのほしい物リストに反映しようと考えた」と冨山氏。ただし、実際にはオンラインのアンケートに反応は多くなかった。このため、現地で直接状況を聞きながら、そのときどきで緊急に必要なものや優先順位をFacebookに投稿していった。

 Amazonを通じた調達にもメリットとデメリットがあった。「何よりよかったのは、予め品目別に梱包されて届くこと。熊本地震の被災地では、物資の仕分けだけで相当な労力がかかったと聞く。仕分けの手間が省けたことは、迅速な配布につながった」と冨山氏。一方で、ほしい物リスト機能はプレゼントを前提とした仕組みであるため、受け取る側にとって、いつ何がどのぐらい届くか把握できないのが課題だった。支援者にFacebookページへの記入を呼びかけたが、これも徹底できなかった。

 支援者からお金を集めるのではなく、直接物資を買って送ってもらうことは、支援の透明性につながる。しかし、折々に資金が必要になったことも事実だ。これについては、大牟田市出身で福岡市でデザイン会社RANDOMを営む岡村しんし氏が、販売している「大牟田デザインTシャツ」の7月分の売り上げを全額寄附すると申し出てくれた。このTシャツは2016年に発売したもので、当初から売り上げの10%を大牟田の活性化に充てると明言し、関連のイベントやクラウドファンディングに寄附している。

「大牟田デザインTシャツ」(資料提供:大牟田ビンテージのまち)
「大牟田デザインTシャツ」(資料提供:大牟田ビンテージのまち)
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 Tシャツの売り上げによる緊急資金は約200万円に達し、ここから前述のチラシ製作費やポスティング委託費が出ている。さらに、支援物資そのものを地元企業から調達することもできた。一方で「初期段階から、支援が地元経済にも循環する方法を模索して関連企業に問い合わせたが、スーパーマーケットなどに卸している会社が多く、必要量の見通しが立たない段階で、小ロットずつ売ってもらうことが難しかった」(冨山氏)という課題も見えてきた。「始めからある程度まとまった資金があれば、事情は違ったかもしれない」と冨山氏は振り返る。

 すべてが初めての経験だったが「民間ならではのスピードを意識した」と冨山氏。2014年に大牟田ビンテージのまちを設立して以来、6年間の経験が生きた。「物資の調達も配布も、市役所や商工会議所、地域のNPO法人との連携によってスムーズに行うことができた。加えて、視察の往来などを通じて得た全国の人脈のおかげで、オンラインによる支援の輪が広がった」(冨山氏)。

 なお、今回の取り組みは、大牟田ビンテージのまちとして冨山氏らが無償で行ったものだ。「緊急時に何もせずにいることはできなかった。多くの人が同じ思いを抱いただろうが、日頃からまちづくりに関わっていたおかげで、ひとあし早く踏み出せたと思う」と冨山氏は語る。

●大牟田ビンテージのまちによる災害復興支援の動き
2020年7月6日大牟田市に豪雨による内水氾濫などが発災
7月7日大牟田市災害復興支援グループ立ち上げ、支援物資募集開始
7月9日商店街道路使用許可申請
7月10日商店街道路使用許可下りる
7月10日「ちょこボラ」開始、商店街の物資の保管拠点整理
7月11日商店街で支援物資配布開始
7月12日~19日浸水地域のみなと小学校体育館で支援物資配布
7月19日~23日公民館での配布予告チラシ制作、配布
7月25日~8月2日公民館での支援物資配布(24日は天候不良のため休止)

 今回の大牟田ビンテージのまちの取り組みは、災害時の自助・共助・公助のうち、結果として「共助」に相当する取り組みがうまく機能した例といえそうだ。大牟田市に限らず、豪雨被害が増えてきている各地では今後、災害時の自助・共助・公助の在り方について体系的な整理が求められるだろう。その時に自治体は、コストや責任の所在など、どこまで民間に任せるべきなのか、さらに踏み込んだ役割分担の検討が必要ではないだろうか。