島根県雲南市は、市民主導で様々な社会課題の解決に取り組んできた自治体として知られる。2019年からは企業と協働する「企業チャレンジ」の仕組みを整えた。モビリティなどいくつかの分野で成果も出始めた。行政、住民、そして市内外の企業や団体による「チャレンジの連鎖」の生態系を目指す「雲南ソーシャルチャレンジバレー」の現状を取材した。

 高齢者6人を乗せたゴルフカート型電動車両が、生活道路や細い路地を時速十数kmの速度でゆっくりと走っていく。乗客同士、ときには町を歩く人とも会話が交わされ、楽しそうな声が響く――。雲南市とヤマハ発動機が進めるグリーンスローモビリティ実証事業での一コマだ。

グリーンスローモビリティ実証事業の一コマ。高齢者6人を乗せたゴルフカート型電動車両が、定時定路線バスとして地元住民の外出を促す(写真提供:雲南市)
グリーンスローモビリティ実証事業の一コマ。高齢者6人を乗せたゴルフカート型電動車両が、定時定路線バスとして地元住民の外出を促す(写真提供:雲南市)

 この実証実験は、同市が地方創生のリーディングプロジェクトとして位置付けている「雲南ソーシャルチャレンジバレー」構想の枠組みの中で行われているものだ。「雲南ソーシャルチャレンジバレー」とは、「子ども×若者×大人×企業チャレンジの連鎖」を旗印に、市民や企業の主体的なチャレンジを支援していくプログラムの総称だ。グリーンスローモビリティ実証事業は、2019年度にスタートした「企業チャレンジ」の第1号案件。市と竹中工務店、ヤマハ発動機、NPO法人ETIC.が締結した連携協定(2019年4月11日調印)に基づく取り組みだ。

住民主体のチャレンジに企業のチャレンジが加わる

 地域の課題に住民が主体となって取り組む文化をつくるため、「子ども×若者×大人」のチャレンジを応援してきた雲南市。2019年度からはここに企業と地域が連携し社会課題を解決するビジネスモデルの構築に挑む「企業チャレンジ」が加わった。

雲南ソーシャルチャレンジバレーのイメージ。四隅に書かれた「資金調達」「人材獲得」「つながる場づくり」「情報発信・ブランディング」は、チャレンジャーが育つ“生態系”のキーワード(資料:雲南市)
雲南ソーシャルチャレンジバレーのイメージ。四隅に書かれた「資金調達」「人材獲得」「つながる場づくり」「情報発信・ブランディング」は、チャレンジャーが育つ“生態系”のキーワード(資料:雲南市)

 雲南市の面積は東京23区とほぼ同じ550km2で、人口は約3万7000人(2020年1月時点)。2010年を100としたときの人口減少指数は66%、高齢化率は36.8%で「日本の25年先を行く高齢化社会」と言われている。こうした数字からは、典型的な衰退する地方の姿が浮かぶかもしれない。

 しかし雲南市は、子ども・若者・大人の世代ごとにチャレンジを支援する仕組みをつくり上げ、市民協働の先進自治体として以前から全国から注目を集めてきた自治体だ。看護人材がまちに常駐し日常的に住民と関わる「コミュニティナース」や、外出が困難な要支援者の介護予防と社会参加を図る「ショッピングリハビリ」など、住民の発案・実行による地域の課題解決事例も次々と生まれている。その雲南市が、協働の範囲を企業にまで広げて、何を目指すのか。

 その前にまずは、雲南市ではなぜ住民による地域参加が活発なのか。そこからひも解いていこう。