独自の「バリューアップ提案」

 SPCは道路の維持管理や料金徴収のほか、公社が定めたパーキングエリア(PA)2カ所の新設といった改築業務を担う(図2)。改築業務の費用は公社が負担する。

図2 ■ 愛知県有料道路運営事業における主な業務内容
*1 改築費用の上限は約149億円。公社はコストプラスマネジメントフィーにインセンティブフィーを加えた額を民間に支払う
*2 新設パーキングエリアの用地は、要求水準書に示す範囲で公社が取得して所有。民間は賃料を支払う
愛知県道路公社の公表資料などをもとに日経コンストラクションが作成
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 SPCはコンストラクション・マネジャーと契約したうえ、専門工事会社などを入札で選定。公社は工事原価とマネジメントフィーをSPCに支払う。工事原価を削減した場合は、削減額の50%をインセンティブフィーとして上乗せする。

 さらに、SPCは任意事業として、新設するPAの隣接地に食と安らぎをテーマにしたリゾート施設「愛知多の大地」の整備を提案した。大和リースが中心となって、22年の開業を目指す(写真1、図1)。地域の活性化に貢献するとともに、観光需要の発掘で通行料の増収も狙う。

図1 ■ リゾート施設「愛知多の大地」の完成予想図
新設する阿久比上りPAの隣接地に任意事業として整備する。敷地面積は10万m2、想定事業費は35億円で、宿泊施設やレストランなどを設ける計画。土地は現在、農地となっており、取得や転用がうまく進むかどうかが事業のポイントになる(資料:愛知道路コンセッション)
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 中部国際空港の空港島には、県が19年に開設する国際展示場の隣に外資系ホテルを誘致する計画だ。こちらはホテル運営の経験が豊富な森トラストが手掛ける。

 通行料収入は官民の配分ルールが決まっている。公社が事前に予測した料金収入に対して±6%の範囲であればSPCの帰属、負担となり、±6%を超える増収や減収は公社の帰属、負担となる仕組みだ。SPCは大儲けできない代わりに、大損するリスクを回避できる。

 これに対して、前田建設工業は運営権者の選定時に、公社の推定を上回る料金収入が見込めると独自に予測(図3)。SPCの取り分を増やせるのであれば、運営権対価を1543億円に引き上げられるとする「バリューアップ提案」も提出した。

図3 ■ 知多4路線の料金収入予測
前田建設工業グループの資料をもとに日経コンストラクションが作成。公社は黒字経営を続けてきた。通行料収入などは14年度決算で総額178億円。一方、道路の維持管理費や一般管理費の費用は67億円だった
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 「地元の観光協会などと連携したり、工事の時間帯を工夫して渋滞の発生を最小限に抑えたりすることで、交通量を伸ばせるはずだ」とSPCの東山基(もとい)社長は期待する。この提案は選定時の評価には反映されなかったものの、交通量の実績次第では今後の協議事項となっている。

 公社は道路の維持管理の要求水準として、路線に応じて1日1~9回の舗装の日常点検などを求めている。わだち掘れやひび割れ率などから評価するMCI(舗装の維持管理指数)が自動車専用道路で5未満になった場合や、ポットホールが生じた場合などは、民間の費用負担で修繕工事を実施しなければならない。

 効率的な維持管理はコンセッション事業の利益確保に不可欠だ。前田建設工業は、西日本高速グループなどが開発した「コンクリートひび割れ点検システム(AutoCIMA)」や帳票類の電子化による情報基盤の整備を提案。高精度な劣化予測と予防保全に役立てる(図4)。

図4 ■効率的な維持管理に向けた取り組み
前田建設工業グループの資料をもとに日経コンストラクションが作成
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