大分県由布市に本社を置く新電力おおいたは、設立から3年半を超えた。2016年4月に高圧の需要家向けに電力小売りを始め、同年10月には一般家庭を含めた低圧向けにも事業を拡大している。地域で立ち上がった新電力の中には、地方自治体と地元の経済界が一体となって動き出す例が少なくない。しかし、この新電力おおいたの成り立ちは少し事情が異なり、地元企業で半導体検査装置などを手がけるデンケン(由布市挾間町)が単独で設立した。本社はデンケンの本社社屋内にある(図1)。

図1●新電力おおいた本社内の様子。親会社のデンケンの社屋内にある
設置されたディスプレーには需給状況などが表示されていた(出所:日経BP)
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 新電力おおいたは、設立の目的として3つの項目を掲げている。(1)エネルギーの地産地消によって、地域の単位で電力を需給し、地域に経済効果をもたらすこと、(2)地産地消するエネルギー源として再エネの導入を促進し、これまでの集中型から分散型の電源を使いこなす社会への転換に寄与すること、(3)上記の(1)(2)をより効果的に進めるために、住宅エネルギー管理システム(HEMS)を使ったエネルギー利用の最適化を通じて、スマートコミュニティを実現すること、である。この3つによって、地域の活性化にもつなげる。

地元の大分県を中心に、開発した太陽光発電所は27カ所・合計出力33MW

 デンケンは、半導体の検査装置などを製造・販売するとともに、半導体や電子デバイスの試作や製造、検査なども請け負ってきた。大分県には、エレクトロニクスやカメラなどの大手メーカーの半導体デバイス工場がいくつもある。これらの大企業による需要がデンケンの成長を支えてきた。

 しかし、電子機器や半導体の分野は、好不況の波が大きい。また、アジアメーカーの台頭もある。そこで、デンケンは他の分野で新たな柱となる事業を育てることを模索した。そうした中で一定の成果を上げて事業化したのは、医療機器や健康関連機器、レンタル自転車の駐輪場総合管理システム、板金や機械加工などと幅広い。いずれも、自社で従来から持っていた技術や知見を、分野を変えて応用していったものであり、太陽光発電事業もその一つだった。

 太陽光発電関連では、同社は従来から太陽電池セル(発電素子)検査装置を手がけていた。日本や韓国の結晶シリコン型の太陽電池セル、太陽光パネルの大手メーカーの多くが、デンケンのセル検査装置を採用していた。このセル検査装置の事業で培っていた知見によって、太陽電池セルや太陽光パネルの評価には自信があるとする。例えば、デンケンが開発している太陽光発電所では、自社の独自の基準を満たした太陽光パネル以外は採用しない。

 デンケンが新たにはじめた太陽光発電の事業は、まず自社が発電事業者となって売電する事業がある。このほか、他の企業が発電事業者となる太陽光発電所に対して、開発やEPC(設計・調達・施工)、O&M(運用・保守)を担当する場合がある。

 地元の大分県を中心に、デンケンが開発した太陽光発電所は、27カ所・合計出力33MW。本社敷地内にも太陽光発電所を設置している(図2)。このうち、11カ所・合計出力22MWは、自社が発電事業者として開発・運営している発電所で、残りの16カ所・合計出力11MWは、他社が発電事業者となっている発電所の開発やEPCを担当した。

図2●デンケンの本社の敷地内にある太陽光発電所
太陽光パネル出力は約1.2MW、連系出力は1MWだ。太陽光発電は、固定価格買取制度(FIT)が2012年7月に始まったことにより、事業化の障壁が下がったことも、デンケンの新規参入への追い風となった(出所:日経BP)
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 デンケンで太陽光発電関連事業を担当している山野健治常務取締役は、その後、設立した新電力おおいたの代表取締役も務める。山野常務は、デンケンで太陽光発電を手がける中で、大分の地元の再生可能エネルギー(再エネ)発電電力を、地元の地域で使いこなすような、いわゆる地産地消を実現できないだろうか構想するようになった。電力小売りの全面自由化が決まり、構想を実現できる仕組みも整ってきた。

 なにより大分県は、「再エネ自給率で1位」という自治体である(図3)。

図3●都道府県別再エネ自給率は大分県がトップだ
地熱発電の多さが特徴だ(千葉大学大学院と環境エネルギー政策研究所のデータを基に日経BPが作成)
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 大分県が「再エネ自給率で1位」という評価は、千葉大学大学院の倉阪秀史教授と認定特定非営利活動法人の環境エネルギー政策研究所が毎年発表している地域別の再エネの供給実態などを把握する調査によるものである。実際には、発電した地域ですべての電力が消費されているわけではないが、地域で使われているエネルギーを、その地域の再エネ発電電力などでどの程度賄えるのかを、「再エネ自給率」として試算している。

 この調査で、大分県は2007年から「再エネ自給率」のトップを続け、2018年春に公表された最新の評価でも約38%で1位を維持している。地熱発電の供給量の多さが他の地域にはない特徴で、出力約110MWという国内最大の地熱発電所である九州電力の八丁原発電所(玖珠郡九重町)が、地熱発電量を押し上げている。