「メガソーラービジネス」2016年10月25日付の記事より

 埼玉県の下水道局は、2カ所の下水処理施設内にメガソーラー(大規模太陽光発電所)を開発し、固定価格買取制度(FIT)に基づく売電を10月1日に開始した。下水を処理する「水循環センター」の敷地内に設置した。

 埼玉県三郷市にある中川水循環センターに出力約1.9MW(図1)、本庄市にある小山川水循環センターに同約1.8MWのメガソーラーを導入した。

図1●中川水循環センターに設置した出力1.9MWのメガソーラー
埼玉県下水道局が運営(出所:日経BP)
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 2カ所合わせた年間発電量は、一般家庭約800世帯の消費電力に相当する、約4000MWh(400万kWh)を見込んでいる。買取価格は32円/kWh(税抜き)で、東京電力エナジーパートナーに売電している。

下水使用料の収入低下に備える

 埼玉県下水道局がメガソーラーによる売電に乗り出した背景には、下水道局の事業環境がある。同局による下水道の運営は、「地方公営企業法」に基づくもので、企業と同じような事業活動ができる半面、下水道の利用料などによる収益のみで運営することが求められている。

 収益を大きく左右するのは、処理する下水の水量となる。水量に基づいて利用料が決められているためである。

 今後、日本の人口は減少すると予想されている。首都圏に位置する埼玉県でも居住人口は漸減する。住む人が減れば、当然、下水の水量は減る。下水道普及率の向上による押し上げ効果は残っているものの、長期的に下水事業の収入は下降線をたどると予想される。そうした状況でも収益を確保できる体制を確立する必要がある。

 そのための対策の一つが、FITを活用した再生可能エネルギー関連事業への参入だった。メガソーラーによる売電のほか、バイオガス発電所への燃料供給に取り組む。

 バイオガス発電への燃料供給は、下水処理場の特徴をより生かしたものとなっている。下水の処理に伴って発生する汚泥を処理・分解する工程で生じるメタンガスを、バイオガス発電の燃料として発電事業者に供給する。

 バイオガス発電所は、メガソーラーの設置と同様に、水循環センター内に設置される。

 まず、桶川市にある元荒川水循環センター内に、大原鉄工所(新潟県長岡市)が運営するバイオガス発電所が設置され、2019年4月から売電を開始する予定となっている。定格出力は400kW、年間発電量は一般家庭500世帯の消費電力に相当する270万kWh、売電価格は39円/kWh(税抜き)となっている。

 これらの事業は、下水道の関連事業として、運営することが認められている。

 一方、太陽光発電は、広大な面積を持つ下水処理場内の土地を有効利用する。こうした取り組みは、すでに全国に100カ所ほどの先例があるという。

O&Mまでのリースで支出を抑える

 埼玉県下水道局では、太陽光発電所の開発に際し、発電設備とO&M(運用・保守)を含めたリース方式とし、初期投資の負担を回避した。さらにリースを委託する事業者には、一定以上の年間平均と年間最低の発電量の保証を求めることで、売電収入がリース代を下回るリスクを減らした。

 出力約1.9MWの中川水循環センターの発電所は、年間平均発電量が208万5000kWh、年間最小発電量が187万5000kWh、出力約1.8MWの小山川水循環センターの発電所は、年間平均発電量が190万3000kWh、年間最小発電量が171万kWhを見込んでいる。

 同局では、メガソーラーを設置した2カ所のほか、もう2カ所の水循環センター(古利根川水循環センター、荒川水循環センター)内でも、太陽光発電所を運営したいと考えていた。これらの合計4カ所の水循環センター内の土地について、2015年に太陽光発電所の開発とO&Mまで含めたリースを手がける事業者を公募した。

 このうち応札のあった中川と小山川の水循環センターの2カ所に、太陽光発電所を開発することになった。応札のなかった2カ所は、候補地の面積が小さく、事業性を満たしにくかったのではないかと推測している。

 水循環センターには、広い敷地があり、下水処理用の池や汚泥の焼却炉などの設備を備える(図2)。現在は、処理用の設備がない場所であっても、太陽光発電設備を設置できない場所もある。

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図2●広い敷地にさまざまな処理施設を備える
下の画像は下水処理用の池(出所:日経BP)
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 今後、下水の普及率の拡大が予想されている地域からの処理量の増加が見込まれる場合、下水処理用の池や焼却炉などを増やす可能性がある。

 こうした将来の下水の処理量の見通しについては、地域ごとの下水の普及率の上昇や、下水の接続流路などを想定しながら毎年、見直し、長期的に処理施設の増強などを計画している。

 メガソーラーを設置した中川水循環センター、小山川水循環センターにおいても、今後、新たな下水処理用の池や焼却炉の建設が予定され、かつ、20年間以内に着工する可能性のある場所には、太陽光発電設備を設置しないようにした(図3)。

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図3●メガソーラーの設置場所
上が中川水循環センター、下が小山川水循環センター(出所:埼玉県下水道局)
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 また、水循環センターの隣接地との間には緩衝帯が設けられ、背の高い木が植林されている。この場所にも太陽光発電設備を設置しない(図4)。

図4●背の高い木が植林されている緩衝帯
右に見える。発電設備を設置しない場所の一つ(出所:日経BP)
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 さらに、土壌汚染対策防止法や生活環境保全条例といった、関連する法や条例が定める範囲で施工し、メガソーラーを導入した。

東芝グループが担当、下水処理場も知る強み

 中川水循環センター、小山川水循環センターとも、太陽光発電設備の導入、リース、維持管理は、いずれも東芝グループによる共同企業体が担当している。

 それぞれIBJL東芝リースが共同企業体の代表を務め、設備の導入は東芝、維持管理は東芝電機サービスが担当している。太陽光パネルは東芝製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 PCSは、いずれのメガソーラーとも、出力100kWを1台、含んでいる(図5)。この出力100kW機は、自立運転用の回路も備えている。通常は連系用に出力するが、災害時などの非常時には、回路を切り替えて自立運転する。PCSの筐体内に設置したコンセントなどに送電でき、災害時に利用できる仕組みとした。

図5●出力100kWのPCSは自立運転機能も備える
通常は左の連系用で出力し、非常時には右の自立運転用の回路に切り替える(出所:日経BP)
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 基礎は杭基礎を使い、太陽光パネルの設置角は10度、パネル最低部と設置面との高さは40cmを基準とした(図6)。

図6●設置角は10度、高さは40cmを基準とした
全域に防草シートを敷き詰め、雑草による影のリスクを小さくし、高さを抑えた(出所:日経BP)
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 パネルの設置高は、一般的なメガソーラーよりも低い。雑草対策として、敷地の全域に防草シートを敷き詰めていることから、雑草は伸びにくく、雑草による影のリスクが小さいことなどを考慮した。

 下水処理設備は、休日や夜間でも稼働を止められない一方、一般的な工場に比べると搬出入のような出入りは比較的少ない。施工時には、下水処理や関連作業に配慮しつつ、東芝の想定した工程スケジュールをほぼ受け入れてもらえたという。

 下水処理場の通常の通用門ではなく、工事用の通用門を使ったり、設置場所には基本的に下水処理関係の出入りがないなど、下水処理に関連する作業から離れた形で発電設備の設置工事が可能だったことが大きいようだ。

 また、東芝側が、今回のメガソーラーの開発を、下水処理設備を手がける「水・環境システム」関連の事業部や技術部が担当していたことも、工程管理をスムーズにしたという。下水処理場の設備や運用の知見があるため、それを阻害しないためのポイントを知った上で計画を立案できた。下水処理内で関連する作業担当者などを含めた月一回の協議会に出席し、そこでメガソーラーの作業スケジュールも調整した。

 2カ所のメガソーラーとも、2016年6月に本格的な施工をはじめ、9月末に完成、10月1日に売電を開始した。

 工期が夏となったために、作業者の健康管理にも配慮した。空調服(ファンや通風孔つきの作業着)を採用するなどの対策の結果、熱中症などを発症した作業員はいなかったという。

 ただし、8月には、台風が度々、通過し、悪天の影響で遅れが生じた。その後、早朝から作業を開始することで、遅れを取り戻した。

発電所の概要
事業所の名称中川水循環センター
所在地埼玉県三郷市番匠免3-2-2
出力1.988MW
年間平均発電量208万5000kWh
年間最小発電量187万5000kWh
発電事業者埼玉県下水道局
発電設備の導入、リース、維持管理東芝中川水循環センター太陽光発電共同企業体(代表:IBJL東芝リース、設備の導入:東芝、維持管理:東芝電機サービス)
太陽光パネル東芝製(出力250W/枚・7952枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力500kW機・4台、同100kW機・1台)
工期2016年6月~9月
売電開始日2016年10月1日
売電価格32円/kWh(税抜き)
売電先東京電力エナジーパートナー

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/111600003/