加賀市が注力するプログラミング教育、背景に人口減少問題

 加賀市はコンピュータクラブハウスの開所以前から、プログラミング教育にいち早く取り組んできた。2015年には、市内の小学校へロボット140台とノートパソコン100台を配布。2016年から、小中学校の教員向けの研修を実施してきた。2017年4月から「総合的な学習」の時間を使って、小学校4年生から中学3年生へのプログラミング教育を行っている。

 また、学校外でも「加賀ロボレーブ国際大会」を2015年から毎年開催している。さらに2018年には総務省が推進する「地域ICTクラブ」の実証事業に採択され、みんなのコードと共同で、市内3カ所でプログラミングの講座を行った。小学生から80代まで、3カ所合計で30人程度が参加した。

 コンピュータクラブハウス加賀は、こうした学校外のプログラミング普及活動の一環で設置された。学校の授業(年間5回)などをきっかけに意欲がわいて、「もっとコンピュータに触れたい」という子供たちのために企画されたものだ。

  加賀市とみんなのコードの出会いは2016年5月。市長がみんなのコードの活動を知り、市からの働きかけで協働が始まった。同年7月には総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」に共同で応募し、採択された。この事業では、小学校の教員の研修や、児童有志への講座などを行った。その後も両者でプログラミング教育に取り組んだ経緯から、コンピュータクラブハウス加賀の事業者は、公募を行わずにみんなのコードが選ばれた。

 加賀市がプログラミング教育に力を入れてきた理由について、宮元市長はコンピュータクラブハウス加賀の開所式において、「人口の急激な減少で自治体運営が難しくなるという危機感が根底にあり、原点に戻って人材育成にこそ力を入れなければという強い意識がある」と語った。

 加賀市教育委員会事務局生涯学習課課長の宮下和也氏は、人材育成に期待する効果を次のように説明する。

 「子供が減っていくことは止められないので、一人ひとりの能力を高めて、地域の生産性を維持しようという考え方だ。また、サードプレイスで楽しい体験ができ、成長期に地域への愛着が芽生えれば、大人になって定住やUターンを考える人が増えるかもしれない。加賀市で起業する人が出てくれば、その会社がまた新たに人を呼び込む可能性もある」

左からみんなのコード学校教育支援部の田中沙弥果氏、加賀市教育委員会事務局生涯学習課の宮下和也課長、同じく生涯学習課の吉本竜也主事、加賀市役所政策戦略部イノベーション推進課の松谷俊宏主査(写真:赤坂麻実)

子供たちが自由に活用できる施設に

 コンピュータクラブハウス加賀の利用者数は、2019年11月17日現在でのべ約820人。オープンした5月25日から約6カ月間での実績だ。加賀市ではこれをどう評価するのか。

 宮下氏は「不定期で開催するイベントの参加者数も含め、手ごたえを感じている。(施設の広さなど)物理的な限界もあるので、今後はわずかでも増加傾向なら問題なしとみる」と見解を述べる。

 続けて宮下氏は「人材育成の本当の効果が見えるのは何年も先のことになる。今は一喜一憂せずに施設を維持し、しっかり種をまいていきたい」と、成果は長い目で見て評価していく方針であることを説明した。

ホワイトボードには工作案やイベント予定などが貼りだされている。コミュニティ・マネジャーが金曜・土曜は1人、日曜は2人常駐し、子供たちの活動をサポートする(写真:赤坂麻実)
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3Dプリンターでの工作はなかなかの人気コンテンツだ(写真:赤坂麻実)
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コンピューターミシンや3Dプリンター、レーザー加工機などの工作機械が用意されている。子供たちは最初のうちこそ使い方が分からなくても、少し教わるとすぐに使いこなすという(写真:赤坂麻実)
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 みんなのコード学校教育支援部の田中沙弥果氏によれば、子供たちはそれぞれが自分なりの方法で施設を活用しているという。

 「子供たちは多様な目的を持ってクラブハウスを訪れている。Javaが好きでコーディングをしに来る子。Macを使って動画を編集したい女の子。学ぶというより、自宅のパソコンには入っていないソフトを使いたいといった気軽な感覚で遊びに来る子も多い。利用者が少ない金曜日に不登校の子が訪れることもある。アイデアソンやゲーム開発イベントなどには、定員以上の参加希望が寄せられ、やむなく参加を断ったこともあった」(田中氏)