課題は利用者のキャリア形成につなげる仕組み作り

 今後の課題は大きく分けて2つ。施設やコンテンツの拡充と利用者のキャリア形成への貢献だ。

 コンピュータクラブハウス加賀は、かが交流プラザさくら3階の「加賀市イノベーションセンター」内の一室を使っている。同センターは、IoTなどの新産業を集積することを目的とし、関連の企業や人材をサポートする市営の施設だ。スタートアップなどが入居できるオフィス「インキュベーションルーム」や工作機械などを設置した「ものづくりルーム」、交流やイベントに使える「コワーキングスペース」、パソコンを常設した「セミナールーム」などを備えている。

コンピュータクラブハウス加賀は、「加賀市イノベーションセンター」内にある(写真:赤坂麻実)
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 クラブハウスは、加賀イノベーションセンターの一室を利用しているため、場所や設備に初期コストがほぼかからなかった。「そのかわり、利用者が増えれば手狭になってしまう。また、市内であっても子供の居住地域によってはアクセスしづらい」(宮下氏)という課題が当初から存在している。

 コンテンツにも拡充の余地がある。新たな機材を導入すれば、例えば音楽制作なども可能になり、「子供たちが好きなことに取り組む場」としての活動の充実が見込める。第2回のクラウドファンディングではその点を強く訴えている。

 さらに、「“明日の加賀市”を支える人材が誕生してほしいという思いはある」と語るのは、加賀市教育委員会事務局 生涯学習課 主事の吉本竜也氏だ。「利用する子供たちと(コンピュータ技術が生かせるような)企業の間にコネクションを作って、キャリア形成につなげることも考える必要がある」(吉本氏)と、次の展開を構想している。

 現在は、「加賀市イノベーションセンターでは毎週金曜と土曜に工作などが楽しめる『KAGAものづくりラボ』を開いており、大人から子供まで幅広い世代が参加している。インキュベーションルームに入居するIT関連企業の関係者とクラブハウスに通う子供が自然と顔を合わせる機会になっている」(加賀市役所政策戦略部イノベーション推進課 主査の松谷俊宏氏)。今後は一歩進んだ働きかけを進めていきたい考えだ。この点も、次年度は企業で活躍する現役のIT人材を招いて講演会を開くなどして、子供たちがキャリア形成を意識できるような機会を設けるとしている。

コンピュータクラブハウス、全国へ広がる可能性は?

 コンピュータクラブハウスの取り組みは、人口減少など加賀市と同様の課題を抱える地方都市でも可能なのか。利根川氏は「予算と人材のハードルをクリアできれば可能だと考える」という。ただし、容易ではない。

 「利用料を徴収しないのがコンピュータクラブハウスの考え方。図書館や児童館と同様に、地域の子供たちのための(見返りを求めない)投資が必要になる。コンピュータクラブハウスに常駐して活動を盛り上げる人材の確保も簡単ではない」(利根川氏)。また、資金集めや自治体内での部署横断的な取り組みも求められることから、利根川氏は「実現には自治体の情熱が必要である」と見る。

 とはいえ、「東京近郊なら(経済的な)体力のある大手IT企業なども多く、企業がCSRの一環でこうした活動に取り組むこともある。地方ではそうした自然発生には期待しにくい。行政がやらなければ始まらない」(利根川氏)というのもまた事実だろう。「コンピュータクラブハウスは、地方でこそ行政に取り組んでもらいたい事業だ」と、利根川氏は強調する。

加賀市(かがし)
石川県の西南部に位置し、福井県と接する。人口6万7207人(2019年1月1日現在)、面積305.87km2。伝統工芸(九谷焼、山中漆器)、温泉(山代温泉、片山津温泉、山中温泉の3温泉)などが良く知られる
訂正履歴
初出時、2ページ目のコンピュータクラブハウスの設置場所について、「かが交流プラザさくら」の一部スペースとしていましたが、「かが交流プラザさくら」3階にある「加賀市イノベーションセンター」の一部スペースと修正しました。また、イノベーション推進課はかが交流プラザではなく加賀市イノベーションセンターの所管部署でした。同じく2ページ目、クラウドファンディングで集めた金額は1035万5000円ではなく1013万5000円でした。お詫び申し上げます。記事は修正済みです。 [2019/11/27 13:13]