地域交流拠点のカフェはアーティストと建築家が自主運営

 大田区と東急は、手始めに2019年5月、池上駅から本門寺への参道沿いにまちづくりの拠点を開設した。イベントにも使えるカフェ「SANDO BY WEMON PROJECTS」で、運営者はアーティスト・ユニットの「L PACK.」(小田桐奨氏、中嶋哲矢氏)と建築家の敷浪一哉氏。区や東急からの運営委託ではなく、テナントとしてカフェを営む。「WEMON(ゑもん)PROJECTS」とは、カフェの運営に加えて、フリーマガジンの発行やウェブの運営も行いながら、池上という街の個性を伝えていく取り組みの総称だ。

「SANDO BY WEMON PROJECTS」の店内(写真:東急)
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「SANDO BY WEMON PROJECTS」の外観。駅前の五差路の一角、池上本門寺へと連なる商店街の入り口に位置する(写真:日経BP)
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 「コーヒーのある風景をきっかけに、まちの要素の一部になる」というL PACK.の活動テーマが、区や東急がこの拠点で実現したいコンセプトと一致していたことから、東急から提案して誘致した。店舗を東急が借り上げて運営者に転貸しており、賃料の一部を区と東急が補助している。

「WEMONPROJECTS」では、カフェの運営だけでなくフリーマガジン「HOTSANDO」を毎月発行。池上の街の魅力や、まちづくりの参考になる情報を伝えている(写真:日経BP)
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 カフェでは、様々な情報発信の仕掛けを用意している。店内には、「WEMONPROJECTS」が発行するフリーマガジン「HOTSANDO」のほか、フリーペーパーが多数置かれていて、地域の情報に接することができる。大田区の広報誌「おおた区報」も置かれている。イベントスペースとしても活用されており、若手事業者有志によるまちづくりの勉強会などもここで開催された。また、店の一角には小さな展示ブースを設けており、ポップアップストアや個展などを開くことも可能だ。

 大田区の企画経営部企画課政策・企画担当係長で公民連携デスクの市川一氏は、SANDO開設で感じた手ごたえをこう語る。

 「区がカフェを経営するわけにはいかないので、民間とタッグが組めてよかった。カフェに限らず、区は地域との協調を大切にするあまり、“とがった”事業を手掛けにくい。民間事業者が思い切った取り組みをして、区が後から地元との関係調整に回る形なら実現できる。民間によるコンテンツが上質なので、後からでも理解は得られやすい」

カフェ利用客への水の提供はあえてセルフとし、小ぶりのグラスを用意した。カウンターへ水を取りに来る客と店員の間に会話が生まれる機会を増やすためだという(写真:赤坂 麻実)
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