医療機能の面では、新築移転を機に地域包括ケアシステムの構築へさらに踏み出した。移転前の2017年3月は、全83床のうち40床が慢性期の患者が長期間入院するための「療養」病棟。体調が悪化した在宅で暮らす高齢者や、他の病院で治療を終えて状態が安定した患者を主に受け入れ、適切な治療やリハビリテーションで在宅に戻れるようにする機能を持つ「地域包括ケア」病棟は6床にとどまっていた。

 しかし移転後、療養病棟の患者を介護施設に紹介したり、看護師の増員、MSW(メディカルソーシャルワーカー)による退院調整などに力を入れた結果、2017年10月には 地域包括ケア病棟の条件を満たす病床を大幅に増やすことができた。現在は全病床の半数を超える46床が地域包括ケア病棟となっている。

くろさわ病院の病床構成
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病院間での役割分担と連携も

 さらに恵仁会では、旧病院の跡地で介護老人保健施設(老健施設)を開設済み。これは佐久市の市立病院に併設されていた老健施設が廃止されるのを受けてのこと。デイサービスやヘルパーステーションなど在宅サービス機能も集約し、地域包括ケアの拠点としていく考えだ。また、8月には総合的な相談・支援や包括的・継続的なケアマネジメント支援などを行う地域包括支援センターの公募型プロポーザルに手を挙げた。事業者に選定され、2019年4月以降も5年間、引き続き中込地区の地域包括支援センターの運営を担うこととなった。

 元信用金庫の建物を活用し、障がい者向けのデイサービスや生活介護の事業所も立ち上げている。数年先には、運営している健康運動センターをリニューアルしてフィットネス施設や体育館を造り、公民連携でアクティブシニアや障がい者の健康増進に力を入れ、さらには雇用の創出も図ることを視野に入れている。

恵仁会が運営する障害者向けの事業所。就労の支援にも取り組んでいる
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 黒澤氏は、「医療機関には地域活性化のためにやれることがたくさんある。そのためには行政との連携が必要。以前は自分たちだけでできたが、今は役割分担と連携が欠かせない。それが地域の活性化つながってくればいい」と話す。佐久市には、農村医療で著名な佐久総合病院グループもあり、屋上にヘリポートを設けるなどして救急・急性期の医療に取り組んでいる。また、佐久市立国保浅間総合病院では糖尿病を中心とする治療や介護サービスの提供を行い、それぞれ地域包括ケアの一翼を担っている。

 人口約10万人の佐久市は、東京駅から長野新幹線で1時間少しという距離と、雪がほとんど降らず晴天率が高いという気候もセールスポイントに、都市部からの移住者を積極的に受け入れ、人口の社会増を実現している県内有数の自治体だ。充実した医療・介護で安心して暮らすことができ、さらに生きがいを持てるまちづくりの一環として、市と民間病院との連携の今後に注目していきたい。

■訂正履歴
初出時、2ページ目に「恵仁会が病院と道路を挟んだ反対側に3階建ての立体駐車場を整備し」とありましたが、正しくは「佐久市が病院と……を整備し」でした。また、「この活動には高校生も参加して、その輪が広がっている」とありましたが、正しくは「この活動は、翌月開催された地元高校生による別のイベント企画を後押しすることにつながるなどの広がりを見せている。」でした。3ページ目に「就労支援事業所」とあったのは、正しくは「生活介護の事業所」でした。お詫びして訂正します。 [2018/12/15 13:50]