2018年6月、滋賀県大津市にユニークな「商店街ホテル」が開業した。町家7棟を改修した分散型の宿泊施設で、飲食や物販などで地域経済への波及効果を狙う。事業主は県内の工務店。このプロジェクトなどを契機に⼤津市は「⼤津宿場町構想」を2017年3月に発表、本格始動となった2018年度の施策としてエリアマネジメントや空き町家の再⽣などを担う⼈材の育成に乗り出している。

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アーケード商店街の中にある商店街ホテルの7棟のうちの1棟「丸屋」。1棟貸しでは最も広い99.9m2。広い吹き抜けと天窓が特徴だ(写真提供:木の家専門店 谷口工務店)
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 大津はかつて、東海道五十三次最大級の宿場町として栄えた歴史を持つ。最盛期の町割りは100を数え、「大津百町(おおつひゃくちょう)」と称された。戦争や災害の被害が少なかったため、今も江戸時代以来の町家が多く残る。その数は、市の調査によれば約1500棟に上るが、うち約1割は空き家になっている。

 大津市では、2008年から18年まで2期10年の「中心市街地活性化計画」の基本方針のひとつに「大津百町の再生」を挙げ、町家活用や街並み整備に取り組んできた。大津市都市再生課主任(取材時)の橋本剛氏は「中心市街地活性化計画では、町家改修の補助、旧町名の看板掲示、旧東海道の電線地中化などに取り組んできた」と説明する。2017年4月には計画に基づく経済産業省の補助事業として、湖北設計(滋賀県米原市)による町家改修の宿「粋世(いなせ)」が開業している。昭和8年(1933年)建築の米穀商の建物を、当時と同じ材料を使って改修したもので、17年11月に国の登録有形文化財になった。

 2018年6月にオープンした「商店街ホテル」は「粋世」に続く補助事業第2号で、正式名称を「商店街HOTEL 講 大津百町」という。事業主は滋賀県竜王町に本拠を置く「木の家専門店 谷口工務店(以下、谷口工務店)」。運営は新潟県南魚沼市の「自遊人」が担っている。

 ホテルの7棟は、JR大津駅から徒歩圏のアーケード商店街と旧東海道周辺に点在している。最も規模が大きく駅に近い「近江屋」(延べ面積525.71m2)にフロントがあり、宿泊客はそこでチェックインしておのおのの宿に向かう。7棟中5棟は1棟貸しで、キッチンを備えており、宿泊客が地元で買った食材を自分で調理できる。

大津市街地と商店街ホテルの位置(大津市資料を日経BP総研が一部加工)
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 フロント棟にはコンシェルジュデスクがあり、10時から21時まで、対面または備え付けタブレットを通じて、周辺の観光スポットや店舗などを紹介する。さらに、1日に2回、コンシェルジュのガイドによる「商店街ツアー」を開催。地元商店の協力を得て、利き酒や試食をしながら買い物を楽しんでもらう。参加者の中には、1泊2日で15万円ほども使った人がいたそうだ。

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近江屋外観とコンシェルジュデスク(写真提供:自遊人)
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