コロナ禍の影響で、いまだ様々な制約がある学校現場。そのなかで、オンラインを使って子供たちを支援する動きが広がっている。大阪市生野区は改めてその存在が注目されているオンラインゲームを題材にキャリア教育を実施、西条市と住友重機械イオンテクノロジーとは官民連携オンラインインターンシップを開催。西鉄バスは福岡市の教育委員会協力の下でリモートによる社会科見学を実施した。

 大阪市生野区とロート製薬、デジタルハーツ、スポーツタカハシが実施した eスポーツイベント「脱獄ごっこ×生野っこeスポーツチャレンジ!」(提供:大阪市生野区)
大阪市生野区とロート製薬、デジタルハーツ、スポーツタカハシが実施した eスポーツイベント「脱獄ごっこ×生野っこeスポーツチャレンジ!」(提供:大阪市生野区)
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オンラインでゲーム業界のキャリア教育

 2020年10月、大阪市生野区とロート製薬、デジタルハーツの主催で、区内の小中学生を対象としたeスポーツ大会「脱獄ごっこ×生野っこeスポーツチャレンジ!!」が開かれた。

 eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略語で、複数のプレイヤーで対戦するコンピュータゲームを“スポーツ競技”としてとらえたもの。

 大阪市生野区は、区内に多いものづくり企業をはじめ、幅広い職業に触れる機会を作ることを目的にキャリア教育に力を入れている。その中でも教育現場が避けるゲーム業界をあえて取り上げたのが今回のイベントだ。参加者の小中学生は基本的にオンラインで参加した。ゲームに関しては規制する条例を作る自治体もあるなか、行政が率先してeスポーツ大会を開くことは極めて異例。その背景には、生野区の山口照美区長の「子供たち全員をヒーローにしたい」という強い願いがあった。

 教育ジャーナリストだった山口氏は、大阪市の民間人校長を経て2017年に生野区長に就任。校長時代からキャリア教育に力を入れており、以前から職業のひとつとしてゲーム業界にも目を向けたいと考えていた。 「学校では、勉強や運動ができる子は褒められるが、ゲームが得意な子には評価される場がない。一方、ゲーム業界は日々成長し続けている業界で、eスポーツアスリート(プロゲーマー)からクリエイターまで業界で活躍する人は数多い。すべての子の可能性を伸ばすためにも、ゲーム業界を対象にしたキャリア教育をしたいと思っていた」(山口氏)。

 実際、今、日本でもeスポーツは注目を集め、eスポーツイベントの協賛企業には大手企業がずらりと名を連ね、人気選手とスポンサー契約を結ぶ企業も増えている。

自宅などでZoomを利用できない生徒は配信会場から参加した(提供:大阪市生野区)
自宅などでZoomを利用できない生徒は配信会場から参加した(提供:大阪市生野区)
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 そして何よりも今回のイベントを後押ししたのは新型コロナウイルスだ。休校中、学校にも行けず、外にも遊びに行けない子供たちにとって、今回のeスポーツ大会の題材となったオンラインゲーム『脱獄ごっこ』をはじめ、ゲームを通して友達とつながったり、心の支えになっていたりした子供は数多い。コロナ禍でオンラインが注目され、ゲームが改めて脚光を浴びたこともあり、この両者を融合した形でのキャリア教育を行おうと企画したという。山口氏はこう話す。

 「私の中学生の娘も休校中は『あつまれどうぶつの森』をやり、小学2年生の息子は『マリオメーカー2』でコースを自作、世界中の人たちに評価されて喜んでいた。とかくゲームは悪者にされがちだが、『マリオメーカー2』はプログラミング教育に役立つし、『あつまれどうぶつの森』ではお金の知識を得ることもできる。問題はツールではなく、使い方。それを伝えるためにも、また、『将来ゲームを仕事にすることもできる』という子供の将来の選択肢を増やすという意味でも、eスポーツをキャリア教育として取り上げたかった。eスポーツなら、コロナ禍においても、自宅からでもどこからでも参加できる」

ロート製薬など民間企業三社が連携

 ゲームと行政はこれまであまり接点がなく、不得手とする分野。eスポーツの大会の開催には民間企業の力が必要不可欠だ。そこで、山口氏は生野区に本社があり、区と包括連携協定を結ぶロート製薬に話を持ち掛けた。

 同社は1年半ほど前からeスポーツに着目。東大卒プロゲーマーのときど氏とスポンサー契約を結んでいる。そこで、今回のイベントではコーディネーター的な立場として、eスポーツで選手のヘルスケア支援などを通じて同社が協業しているデジタルハーツや、eスポーツを手掛ける大阪の老舗スポーツショップ・スポーツタカハシに企画・運営を呼び掛け、生野区とこの民間三社でこのプロジェクトを進めることとなった。

 大会開催に関する費用はロート製薬を中心に、デジタルハーツとスポーツタカハシの三者が負担した。「生野区の子どもたちにeスポーツと出会う機会を作るためということで負担していただきました」(山口区長)。行政の金銭的な出費はなかったものの、官民が適切に自らの役割分担に基づき、自発的に働いており、その部分は可視化できないものの、それぞれが相当程度の役割を担っていた。

 参加者は生野区内の小・中学生51人。Zoomが利用できない環境の人は、配信場所の「eZONe~電脳空間~」(大阪市)から参加できるようにした。

 ゲームの題材を『脱獄ごっこ』にしたのは、「メインのユーザーが小中学生であり、トラブルの原因になりがちなチャット機能もなく、ゲーム内容がシンプルだから」(山口氏)。オンライン対戦アクションゲームで、親世代が子供の頃に遊んだ“泥警”に近いイメージだ。 

 企画したスポーツタカハシ eスポーツ事業部の大川慎一氏によると、「小・中学生の場合、eスポーツの大会に出るのが初めてという人がほとんど。だからこそ、シンプルで、その中で楽しめるゲームを考えた。『脱獄ごっこ』はシンプルゆえに奥が深い。子供たちが自分の頭で考え、チーム内での自分の役割や、場面ごとに自分はどう動いたらいいかを瞬時に判断してもらい、勝利に向けて競いあってもらった」と話す。

学校や保護者に教育的観点からeスポーツの魅力を理解してもらいたい

 今回のイベントは大会を開催することではなく、キャリア教育の一環として位置付けることが目的だった。そのため「学校側にもeスポーツを受け入れてもらうこと、単にゲームをやって終わりにしたくないという二点に注意を払い、構成を考えた」(山口氏)。

 自治体によるeスポーツイベントの開催や、ゲーム業界を対象とするキャリア教育を実施することには異論もあったが、当日は大阪市教育委員会や教員がオブザーバーとして配信会場のeZONeに立ち会った。

配信会場のe-ZONe(提供:大阪市生野区)
配信会場のe-ZONe(提供:大阪市生野区)
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 当日は3人のプロゲーマーが会場とオンラインで参加。終了後は、山口氏、教員、デジタルハーツの畑田氏も交えゲーム業界の仕事や職業観をテーマにトークセッションを行った。

 「参加したプロゲーマーは事務職や育児の傍ら副業でプロゲーマーとして活動している。こうしたパラレルキャリアであることも時流に合っている。稼ぐものと好きなものの両輪が仕事になるという新しい働き方を見せることもできた」(山口氏)。 参加した子供たちは時間管理術やゲームとの付き合い方を学ぶと同時に、大会を通して、現場の運営や実況中継のMCなど、大会に携わる人たちの姿を肌で感じることもできたようだ。

 一方、民間企業にとっても、行政が関わるメリットは大きい。なぜなら、行政は関わることで、「教育」的な観点からeスポーツをとらえることができるからだ。

 今回の企画に携わった、ロート製薬・未来社会デザイン室の荒木健史氏はこう話す。 「ゲームやeスポーツは、学業の妨げや生活習慣を気にする保護者も多いが、使い方さえ誤らなければ子供の多様な才能に光をあてることができる。だからこそ、eスポーツに教育的な観点からアプローチする必要がある。行政こそが教育の本丸。その意味でも教育に関連してeスポーツの大会を開いたのは非常に先進的な取り組み。行政が行うことでブレイクのきっかけになる。官だけでは無理だが、民間だけでも限界がある。互いに相関関係で補って上手く回していきたい」

 企画・運営を担当したスポーツタカハシの大川氏も「eスポーツの大会で、オブザーバーとはいえ教育委員会や学校教員など、教育現場の方が加わったのはおそらく初めて。教員の方と意見交換させてもらったことは非常にいい機会となった。ゲームもツールが悪いわけではない。バランスよく付き合うことの重要性をアピールしていきたい」と話す。    専属プロゲーマーを派遣し、トークセッションにも参加したデジタルハーツの畑田氏は、「ゲームに対するネガティブイメージを払拭したい。ゲームの上手な人は集中力が高い。この取り組みをきっかけに、ほかの自治体でもeスポーツに対する理解が深まり、ゲームなポジティブな面を認知してもらいたい」と期待を寄せる。

行政が関わる“前例”を作り、意識が変わるきっかけに

 今回、配信会場のeZONeでゲームに取り組む子供の姿を見守っていた保護者からはこんな声が聞かれた。「うちの子は勉強が苦手。が、この大会には非常に積極的で、事前にルールもしっかり読んで把握し、この日を楽しみにしていた」「普段、学校で褒められることが少ないが、この大会では一生懸命頑張り、表彰式の最後までしっかり見ていた」「ゲームか勉強かの二者択一になりがちだが、時間管理やゲームから得られる知識もあると知った」。また、参加した子供たちからは「好きなことを懸命にやると仕事になることがわかった」「プロゲーマーの話を聞いて、時間管理をすることが大事だと感じた」「勉強かゲームか、ではなく、うまくバランスを取ることが大切だと思った」といった声があがった。

 こうした声に山口氏も手ごたえを感じている。「こちらの意図することが保護者や子供にも伝わり、うれしく思った。ゲームはコミュニケーションツールであり、知識を培い、集中力を鍛えることもできるもの。プロはゲームと上手く付き合っている。子供たちもただ配信元や作り手に踊らされるのではなく、使い方もきっちり学び、ゲームを仕事にして活躍できる場があることを知ってほしい」(山口氏)。

 今後、ゲームやSNSなどデジタルツールから逃れることはできない。むしろ、間違いなくデジタルとの関係性は深くなっていく。保護者も親もデジタルリタラシーが今後重要になってくるだろう。山口氏はこう話す。「行政や学校現場で受け入れにくい分野だが、今回、こうしてキャリア教育の一環としてeスポーツの大会を開催したことが1つの転換期になればいい。これが前例になり、教育現場やほかの自治体がeスポーツを受け入れていくようになれば、役目を果たしたと思っています」

自治体と組んでオンラインインターンシップ

 企業が主に大学生を対象に実施するインターンシップも、オンラインに切り替えた企業が多い。リアルな職場を体験することができないという不自由さはあるが、地方企業にとっては大都市圏の学生に訴求するチャンスとなった。

 愛媛県西条市の住友重機械イオンテクノロジー(以下、SMIT)もそのひとつ。同社人事部の廣瀬恭文氏は「オンラインであれば、地方企業も全国の優秀な学生を募ることができる」と、コロナ禍のインターンシップを逆手に取り、学生にアピールできる絶好の機会としてとらえている。同社は西条市と連携、「企業×自治体」によるインターンシップを実施した。

オンラインインターンシップに参加した大学生(提供:住友重機械イオンテクノロジー)
オンラインインターンシップに参加した大学生(提供:住友重機械イオンテクノロジー)
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西条市の玉井市長もプレゼンに出席(提供:西条市)
西条市の玉井市長もプレゼンに出席(提供:西条市)
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 SMITと西条市が実施したインターンシップは、「学生時代を都市部で過ごした若者にIターンUターン就職してもらうには、西条市は何をすべきか。またSMITは市の政策に対してどのように関わることが理想か?」を課題テーマに掲げ、4日間にわたって実施した。4人1チームで課題に取り組み、最終日にはSMITの月原光国社長と西条市の玉井敏久市長を前にプレゼンを行い、最も優秀な提案を西条市が採択、実施に移すという「本気」なものだった。

 参加者は約80名の応募者の中から書類選考で選ばれた16人。北海道から鹿児島までの学生が参加した。毎日午前9時から17時までオンラインで開催。課題テーマ解決に向け、SMITと西条市の業務内容や取り組みを紹介。各チームには西条市を熟知するSMIT社員が「サポーター」としてついた。

 SMIT社員の進行役が市内のキャンプ場から生中継で市の魅力をアピールしたり、市長室から市長が登場したりする工夫も。また、SMITの月原光国社長は自宅からオンライン飲み会に参加するなど、民間と行政が一体となって取り組んだ。

 課題テーマで最も評価が高かったチームの「西条市の企業と暮らしを体験する合同インターンシップを企画し、都市部の大学で単位認定する」という提案は、現在、西条市とSMITが具体化に向けて動き始めている。

 参加者全員には副賞として、交通費から宿泊費までSMITが負担する「リアル工場見学&社員面談付きの一泊二日の西条ツアー招待券」を贈呈。
「地方の企業だからこそ、より強いインパクトを残さないと学生の記憶には残らない。自治体と組み、学生の目を惹くユニークな取り組みができた」(廣瀨氏)。 オンラインインターンシップにかかる事業費はすべてSMITが負担した。カメラなどの備品やZoomの有料アカウント代、参加者へのお土産や希望者のリアル工場見学代の旅費負担分(実施した場合のみ)など約80万円になるという。

大都市圏の学生を呼び込むには、企業だけの努力では限界

 公民連携インターンシップの仕掛け人である廣瀬氏はこう話す。
「⼤都市から学⽣を呼び込むには、企業単独の努⼒では限界がある。業務内容や企業のアピールだけでなく、企業も地域の一部だと捉えて、地域の魅力をアピールしていくがポイント。 仕事内容だけでなく、その地域の環境やライフスタイルに魅⼒に感じてもらうことが最初の⼀歩。西条市もIターンやUターンなど移住政策に力を入れている。そこで、西条市とコラボレーションして、学生たちに西条市の魅力を考えることで、会社だけでなく、地域の可能性や面白さを知ってもらいたいと思いました」

 西条市にもメリットが大きい。西条市役所産業振興課の曽我部智弥担当係長は
「インターンシップの内容に地域課題を学⽣に考えさせる要素があることから、若者⽬線による地域課題の解決に向けたヒントが得られるのではと考えました。また、西条市は近年、雑誌やテレビなど各種メディアから若者が住みたい田舎として高く評価され移住者が約3倍に急増していることから、さらなる地域の魅⼒発信につながることをメリットとしてとらえ連携しました。学生に西条市を知ってもらういい機会になったのと同時に、私たちも今の学生がどういう考え方を持ち、どう生活をし、インターンや就職活動にのぞんでいるのかを知ることができた」と話す。

 学生の貴重な生の声を届けることは、地元の中小企業の採用支援にもなる。5月頃に企画が立ちあがり、7月募集開始、8月に実施するというスピード感やフットワークも民間企業ならでは。また、
「地元の中小企業に行政と組んだインターンシップという事例を見せることができたのも大きい。今の若者はライフスタイルのありかたを大事にしている。これからも企業と連携しながら、西条市の自然豊かでアクセスもよいという魅力をアピールしたい」と曽我部氏。

SMIT社員がキャンプ地からインターンシップに参加、西条市の魅力をアピールした(提供:住友重機械イオンテクノロジー)
SMIT社員がキャンプ地からインターンシップに参加、西条市の魅力をアピールした(提供:住友重機械イオンテクノロジー)
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 廣瀬氏は「オンラインインターンシップというと、『味気なくつまらない』という印象を持つ学生が多いなか、参加した学生たちから『こんなに面白いインターンシップは初めて』と高評価をいただいた。民間企業が自治体と組んで行うことは、学生にとっても、その自治体や地域をより知ることができるというメリットがある。地方では民間企業も行政も県外からの人材獲得、地域への定着推進という同じ志を持っている。双方が協働し、全力で取り組まないと大都市圏相手に勝ち目はない。企業や自治体という枠組みを取り払って、みんなで西条を盛り上げていこうという動きを今後も加速していきたい」と言う。

福岡市では学校と連携し、オンライン社会科見学を実施

 福岡市内の小学校では、新型コロナウイルスの影響で社会科見学が全面中止となった。その代替案として、西鉄観光バスは福岡市教育委員会と協力、リモートで「オンライン社会科見学」を始めた。コースは4年生向けの「小石原+大石堰」コースと、北九州のシャボン玉石けんの工場見学と背振少年自然の家で木製ペンダント作りなどを行う5年生向け「自然教室+社会科見学」の2コース。

 「小石原+大石堰コース」は市内小学校の社会科見学の定番コースである伝統産業の小石原焼や、うきは市の大石・長野堰などの映像を配信、現地とzoomでつないで双方向でやり取りする。料金は1人2500円。これまで1校が実施。3月末までにその他3校が実施する予定だ。「自然教室+社会科見学」は2000円で、1校の予約が入っている。

 オンライン社会科見学のツアーは、実際の社会科見学のように映像にバス運転手が登場し、「旅」がスタートする。新たに撮り直したドライブレコーダーの映像を流し、まるでバスに乗っているかのような気分だ。さらに、オンライン社会科見学の会場となる学校にはバスガイドが直接訪問し、映像に合わせてバスの車内にいるかのようにガイドする。

「小石原+大石堰コース」では、バーチャルでバスが小石原に「着く」と、教室と学校をzoomでつないで、小石原焼の説明を受け、絵付け体験を行う。また、うきは市では市が作成した長野堰や大石堰に関する説明動画が流れ、治水について学習をする。ここでもまたzoomで市職員との質疑応答が可能だ。

 体験会では、子供たちもリュックサックに水筒を持って登校。実際に行くことはできなくても、絵付け体験や現地とのやり取りで現地の様子を知ることができ、大いに盛り上がったという。

福岡市有住小学校のオンライン社会科見学の模様(提供:西鉄観光バス)
福岡市有住小学校のオンライン社会科見学の模様(提供:西鉄観光バス)
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 西鉄観光バスの公民連携の取り組みは初の試み。きっかけは、社員のアイデアだった。コロナ禍で旅行事業の需要は大きく落ち込み、4月には団体旅行やツアーはすべてキャンセルか延期になった。

「社会科見学のしおり」もリアルと同様のものを用意(提供:西鉄観光バス)
「社会科見学のしおり」もリアルと同様のものを用意(提供:西鉄観光バス)
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 西鉄観光バス営業部の久保川智氏も「当面の仕事もなくなり、週休4日状態」というなかで、家の片づけをしながら娘が小学生の頃に社会科見学で行った小石原で絵付けをした湯呑みを見つけた。「絵付けなら学校でもできる。こうした体験を組み込めば、オンラインでも社会科見学はできるのではないか」と思い立った。

 行政と組んだ実績がなかったことから、まずは娘の母校の校長とかつての担任教員に話を持ち掛けた。学校からの助言に基づき、伝統産業や治水について学ぶコース作りを作成した。オンライン社会科見学の“行き先”となる、うきは市や朝倉市にも直接話を持ち掛けると、「まちのPRになる」と快諾。両市はこのオンライン社会科見学のために独自に説明映像を制作、当日は自治体のボランティアガイドや市の観光課職員がzoomで子供たちの質疑応答に対応した。

「初の試みだったが、学校側も各自治体もコロナ禍で身動きが取れないなかで、何かできることはないかと模索していたことから、話はスムーズに進んだ」(久保川氏)。

 体験会を行った福岡市有住小学校の清水浩一校長も「小石原の伝統産業やうきは市の長野堰は小学4年生の学習範囲でもあり、社会科見学が中止になったなかで、現地の人と実際にやり取りをできたのは子供たちにとってもいい経験となった」と振り返る。「今後はより学習内容にリンクした形で焦点を絞り込んだり、VRゴーグルを付けて3D映像を流すなど、活動のバリエーションをもう少し付けたりすると、さらに臨場感が増すのではないか。それでも、コロナで座学でしか学べない子供たちに貴重な機会を与えていただいたことを感謝しています」。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/121400170/