東京都豊島区は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会までの完成を目指し、池袋駅周辺の4つの公園を整備している(関連記事)。2016年にリニューアルオープンして多くの人で賑わう南池袋公園、2019年秋にリニューアルオープンした池袋西口公園と中池袋公園、そして、2020年春に完成予定の造幣局跡地の新公園だ。4公園や駅周辺の観光スポットを巡る低速バス「IKEBUS(イケバス)」の運行も始まった。同区の構想と、オープン当時、公民連携による運営手法が話題を呼んだ南池袋公園の「その後」を取材した。
個性豊かな4公園を整備し、賑わいを創出
公園が街を変える!――。豊島区が策定した「国際アート・カルチャー都市構想実現戦略」(平成28年5月)には、はっきりそう明記されている。同戦略の基本コンセプト「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」を実現する空間の核として、以下の4公園を位置付けているのだ。まず、2016年にリニューアルオープンして芝生広場で多くの人がくつろぐ南池袋公園。そして、2019年秋にリニューアルオープンした池袋西口公園と中池袋公園、2020年春に完成予定の造幣局跡地の新公園である。4公園の合計面積は約3万m2に及ぶ。
既に2016年にリニューアルオープンした南池袋公園は、子育て世代を中心として大勢の人で賑わっている。「都市のリビング」をコンセプトに、広々とした芝生広場や、地元企業が運営する雰囲気の良いカフェレストランが人気だ。池袋駅東口から公園までの動線となるグリーン大通りと一体となって毎月マルシェも開催。ファミリー層を中心とした地域の憩いの空間としてしっかりと定着している。
他の3公園もそれぞれの公園の特色を生かし、週末や祭日には自由に参加できる多彩なイベントを随時開催する方針だ。
2019年10月24日にオープンした中池袋公園は、「アニメの聖地」として知られる池袋を世界に発信する拠点として位置付けられており、アニメやコスプレ関連を中心としたイベントを開催していく。オープン早々の10月26日・27日には、「池袋ハロウィンコスプレフェス2019」のメーン会場として使われた。近くにはアニメグッズ専門店「アニメイト池袋本店」があり、公園のカフェも「アニメイトカフェスタンドHareza池袋」として株式会社アニメイトカフェが運営している。
同公園は11月1日に劇場がオープンした複合施設「ハレザ池袋」(関連記事)の前面に位置し、劇場と連携したイベントも開催していく。Hareza池袋および周辺のエリアマネジメントを担う「Hareza池袋エリアマネジメント」が指定管理者として公園の運営を担っている。
池袋西口公園は1990年、隣接する東京芸術劇場と一体的に整備された公園だ。2019年11月16日に、池袋駅直近の立地を生かし、公園全体を屋外劇場としてリニューアルオープンした。縦3m×横11mの大型ビジョンや8chスピーカーを備え、常設ステージと仮設ステージの組み合わせにより、広場としての日常利用からフルオーケストラによるイベントまで対応する。設計は三菱地所設計と、南池袋公園を手掛けたランドスケープ・プラス(新宿区)が共同で当たった。インフォメーションセンターを兼ねたカフェの運営事業者には、プロポーザルによってプロントコーポレーションが選定された。
造幣局跡地の新公園は、造幣局の工場があった約3万2000m2の敷地を土地利用転換によって約1万7000m2の防災公園と約1万5000m2の市街地に再生するというもの。西側には池袋副都心が、東南側には木造密集地域が広がる立地特性を考慮し、災害時の避難場所としての機能や延焼遮断機能を持たせる。平時にはスポーツ関係などの野外イベントに活用する。
豊島区は、これら4つの公園を核として駅周辺の回遊性を高めていく方針だ。2019年11月には、4公園をはじめ劇場やショッピングエリア、豊島区庁舎など、池袋の主要スポットを巡る低速電気バス「IKEBUS(イケバス)」が運行を開始。国土交通省が推進する「まちなかウォーカブル推進都市」にも賛同を表明している。