まちを変えた南池袋公園の再生

 4つの公園による駅周辺の活性化構想が生まれるきっかけとなったのは、南池袋公園の再生プロジェクトの成功だった。

 青々とした芝生の上に寝転び、くつろぐ家族連れ。敷地内のオープンカフェでおしゃべりに花を咲かせるグループ。グリーン大通りのマルシェを覗きながら公園へ足を伸ばすカップル――。週末のこのエリアは、ビジネス街のイメージの強い平日とは別の華やぎを見せる。薄暗く、“ホームレス公園”とも呼ばれていた以前の様子を知る人は、「別の公園のようだ」と驚く。公園が変わったことで、まちの雰囲気も大きく変わりつつある。

池袋駅東口から徒歩5分ほどの位置にある南池袋公園の面積は約7800m2。東京電力の変電所を地下に移設した復旧費用で、区の支出は実質支出ゼロ円でリニューアルを施し、2016年4月にオープンした(写真:日経BP総研)
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 南池袋公園の改修計画が持ち上がる前の2005年頃、区の財政はどん底だった。都市整備部公園緑地課の石井昇課長は「公園中央にあった噴水を修理する予算すらも出なかった」と振り返る。

 そんなとき、恒久的な変電施設を設置できる場所を探していた東京電力から「南池袋公園の地下に変電所を移設させてもらえないか」と相談を受けた。これは区にとっても魅力的な提案だった。公園のリニューアル工事費は、東京電力からの復旧費と工事現場の占有料で賄える見込みが立った。さらに、変電施設の上部(地下1階)には無償賃借して区の駐輪場として使用することもできることになった。公園の維持管理費も、変電所と地下鉄(東京メトロ)の占有料を見込むことができたその後、カフェレストラン導入が決まり、さらに公園使用料収入も上積みで見込めることとなった*。

* 2018年度の南池袋公園における収入は3800万円。東京電力から1500万円、東京メトロから300万円(いずれも地下占用料)。そして、カフェからの使用料(1.5万円/坪。売上が25万円/坪・月を超えた分については売上の10%)だ。一方、経費は2800万円(清掃、植栽管理、利用指導を合わせた業務委託費:2300万円、閉園に伴う警備委託費:300万円、遊具の補修ほか維持管理費:200万円)。なお、カフェの地域還元費用(売り上げの0.5%)は収入とは別枠である。

 区と東京電力は1年間かけて、地下の最下層を変電所、その上部の1層を区の自転車駐輪場、地上部を公園とするプランを練り上げた。変電所の施設内容について地元に説明し、概ね理解を得た後、09年9月に公園を閉鎖。リニューアルに向けて動き出した。

豊島区都市整備部公園緑地課の石井昇課長(写真:三上美絵)
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南池袋公園の地下には東京電力の変電所と駐輪場が。写真は駐輪場の入り口(写真:日経BP総研)
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 公園整備計画については、町会や商店会を交えた南池袋公園再整備検討会でワークショップを重ねた。ところが、静かな環境を望む町会と、賑わい創出を重視する商店会の意見がかみ合わず、方向性をまとめきれずに終わる。そこで、区が新たな基本計画案を策定し、両会の了承を求めることになった。

 2013年、豊島区新庁舎のランドスケープを手掛けた平賀達也氏(ランドスケープ・プラス代表)に、南池袋公園の総合プロデュースを依頼。関係者への説明会を数回にわたり開催し、理解を求めた。こうして現在のコンセプトの南池袋公園の姿がようやく見えてきた。2014年10月から工事に着手した。

 一角にはカフェレストランを新設して事業者を誘致。新たな公園の目玉として、賑わいの核と位置づけた。事業者は、地元・南池袋に本社を置き、地元で人気のレストラン「ラシーヌ」を経営するグリップセカンドを公募により選定した。

 公園内にオープンしたカフェレストラン「RACINES FARM TO PARK(ラシーヌ ファーム トゥー パーク)」は、狙い通り公園の集客の要となっている。

カフェレストラン「RACINES FARM TO PARK(ラシーヌ ファーム トゥー パーク)」の売り上げの一部を運営主体である「南池袋公園をよくする会」の活動資金に充てている(写真:nest)
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 公園の運営には、平賀氏の提案によって、行政と地域とが協働する新たな仕組みを導入した。商店会、町会、区の職員、隣接地権者、カフェレストラン運営者、学識経験者、植栽管理者で構成する組織「南池袋公園をよくする会(以下、よくする会)」を立ち上げ、運営に当たっている。決定権はあくまでも区にあるが、公園でイベントを開催するには「よくする会」の承認を必要とする体制を構築した。