芝生の価値を最大化するための地道な取り組み
南池袋公園は公民連携による都市公園再生の成功事例として様々なメディアに取り上げられ、他の自治体からの視察が押し寄せた。それから3年半。現状はどうなっているのだろうか。結論を先に言えば、今もその賑わいはまったく衰えていない。芝生の全面養生期間中は広場には入れないが、それでも多くの人が公園を訪れる。その様子は、この公園が地域の憩いの場として定着していることを示しているといえるだろう。
南池袋公園の最大の“売り”は広い芝生広場だ。上空には電線もなく、周辺を高層ビルでふさがれていない。空が高く、気持ちの良い空間だ。この空間の価値を守り続けていることが、同公園の持続的な賑わいにつながっている。
南池袋公園では、芝生の価値を毀損しないため、当初から全面禁煙の方針を打ち出した。吸い殻だらけの芝生公園では子育て世代にそっぽを向かれてしまう。
さらに、「芝生を大事にする」という気持ちを利用者にも持ってもらわなくてはならない。そこで、オープン当初は警備員を常時配置し、スケートボードや犬の散歩などで芝生広場に入ってくる人たちに注意をしていたという。芝生を傷めたり、犬の糞がそのままあったりすると、芝生空間の価値が下がってしまう。それを防ぐと同時に、利用者に芝生利用のルールを浸透させることにもつなげていった。
ベビーカーの乗り入れも芝生を傷めるが、「今では皆が芝生の外にベビーカーを自然と置いてくれるようになっている」――。そう語るのは、南池袋公園と、隣接するグリーン大通りで毎月第三土曜日にマルシェを主催し、「よくする会」のメンバーでもあるnest(ネスト)の青木純代表だ。
「ベビーカー置き場を設けたり、そこに誘導したりといった取り組みをマルシェの場を通じて地道にやってきた」と青木代表は振り返る。そのほかにも、芝生への愛着を感じてもらえるような工夫を運営サイドは続けてきた。例えば、ビニールシートと比べて芝生が傷みにくいゴザの貸し出しを行ったり、かわいらしい「芝生ちゃん」のイラストとともに、養生中であることを説明する看板を用意したり、といった工夫だ。こうした小さな取り組みの積み重ねがあったからこそ、利用者が芝生を大事に扱ってくれるようになったといえるだろう。