公園からエリアへと賑わいを広げる

 南池袋公園における現在進行形の取り組みの1つに、「公園の賑わいをエリア一帯に広げること」がある。グリーン大通りと南池袋公園のマルシェは、開始から3年目を迎え、エリアにも少しずつ変化の兆しが見えてきた。

 マルシェを主催するnestの青木代表は「グリーン大通りは、銀行などが立ち並ぶ通りで、以前は土日でもベビ―カーの姿を見かけることはほとんどなかった。それが今では、ベビーカーや子供連れで自転車に乗るお母さんの姿も増えてきた。これまでの2年間で一番の成果だ」と手ごたえを語る。

毎月第3土曜日に開催しているマルシェの様子。南池袋公園の地下に駐輪場ができたことで、公園内や隣接するグリーン大通りから放置自転車が消え、スペースを有効に使えるようになった(写真左:三上美絵、右:日経BP総研)
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毎月第3土曜日に開催しているマルシェの様子。南池袋公園の地下に駐輪場ができたことで、公園内や隣接するグリーン大通りから放置自転車が消え、スペースを有効に使えるようになった(写真左:三上美絵、右:日経BP総研)
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毎月第3土曜日に開催しているマルシェの様子。南池袋公園の地下に駐輪場ができたことで、公園内や隣接するグリーン大通りから放置自転車が消え、スペースを有効に使えるようになった(写真左:三上美絵、右:日経BP総研)

 マルシェの開始当初、賑わっている南池袋公園に出店したい人はたくさんいたが、グリーン大通りへの出店者集めにはかなり苦労した。それが今では、水回りの工事などで出店者の使い勝手を良くする工夫をするなどした結果、「徐々に大通りのマルシェ出店者も増えてきている」(nestの飯石藍取締役)。

ネストの青木純代表と飯石藍取締役(写真:三上美絵)
ネストの青木純代表と飯石藍取締役(写真:三上美絵)
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 周辺のビルオーナーの意識も変わってきた。賑わいが増えればゴミも増える。区の職員とnestのスタッフが週末にゴミ拾いをしたり、公園利用者に直接声がけしたりといった地道な努力を続けてきた。今では周辺のビルオーナーがこのボランティア活動に参加したり、マルシェに花を買いに来たりするようになった。公園の向かいのビルに、米国西海岸発の人気コーヒーショップ「ブルーボトルコーヒー」が入居したが、これは地元のビルオーナーが自ら誘致してきたものだ。公園がエリアの価値を高めているという認識が広がれば、周辺エリアで面白いことを企てる事業者も増え、街並みも変わっていくだろう。

 現在、南池袋公園の開園時間は8時から22時。夜間はバリケードで入口を閉鎖する。だが「周辺のテナントが公園に向けて開かれていけば、人の目で治安が維持されるようになる」(青木代表)。そうなれば、南池袋公園は、よりバリアのないオープンな空間へとさらに成長していくだろう。

 マルシェには実験場としての役割もある。南池袋公園とグリーン大通りを舞台として年に1度開催するマルシェやワークショップなどの一大イベント「IKEBUKURO LIVING LOOP(池袋リビングループ)」(2019年は10月18日~20日)などを実験場として、定常へ移す。例えば、警察と交渉し、キッチンカーをこのイベントに登場させたことで、他の日にも営業を認められるようになったという。案内マップでは、エリアを雑司ヶ谷にまで広げて回遊を促すなど地域交流の幅を広げる試みもなされている。

左写真は、南池袋公園の向かい側に出店したブルーボトルコーヒー。右写真は「IKEBUKURO LIVING LOOP」のイベントとして行われたトークセッション「池袋ミライ会議」の様子。nestの共同代表であり公共R不動産の馬場正尊(左)をモデレーターに、呉祐一郎氏(豊島区副区長)、青柳太氏(国土交通省都市局 街路交通施設課)、宮副信也氏(平和堂薬局)の3人が語り合った。宮副氏は地元ビル(SH Block南池袋)のオーナーでブルーボトルコーヒーを誘致した人物(写真:日経BP総研)
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左写真は、南池袋公園の向かい側に出店したブルーボトルコーヒー。右写真は「IKEBUKURO LIVING LOOP」のイベントとして行われたトークセッション「池袋ミライ会議」の様子。nestの共同代表であり公共R不動産の馬場正尊(左)をモデレーターに、呉祐一郎氏(豊島区副区長)、青柳太氏(国土交通省都市局 街路交通施設課)、宮副信也氏(平和堂薬局)の3人が語り合った。宮副氏は地元ビル(SH Block南池袋)のオーナーでブルーボトルコーヒーを誘致した人物(写真:日経BP総研)
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左写真は、南池袋公園の向かい側に出店したブルーボトルコーヒー。右写真は「IKEBUKURO LIVING LOOP」のイベントとして行われたトークセッション「池袋ミライ会議」の様子。nestの共同代表であり公共R不動産の馬場正尊(左)をモデレーターに、呉祐一郎氏(豊島区副区長)、青柳太氏(国土交通省都市局 街路交通施設課)、宮副信也氏(平和堂薬局)の3人が語り合った。宮副氏は地元ビル(SH Block南池袋)のオーナーでブルーボトルコーヒーを誘致した人物(写真:日経BP総研)

 もちろん課題もある。まず、すべての住民が満足しているわけではないという点だ。マルシェについては「何もしないでも賑わっているのに、なんでマルシェを開く必要があるのか」といった声もあるという。また、これは南池袋公園に限った話ではないが、「おしゃれな空間」にリニューアルすることで、高齢者など馴染めない層が出てきてしまうということもあるようだ。

 一方で、これだけ賑わいのある場所となると、公園で何かをしたいと考える民間事業者も多い。そうした事業者への対応も課題の1つだ。

 民間事業者の提案は、「よくする会」の会合で審議し、承認された後に同会から区へ公園の使用を申請するというのが今の仕組みだ。しかし、民間事業者からするとスピード感に欠ける。

 地域の関係者の合意形成には必要なプロセスとはいえ、「会合が開かれるのは月に一度なので、判断にも時間がかかる。参入を適切にコントロールしつつも、公園の価値を高める提案をしてくれようとする企業の声を、もう少し受け止められるようにできないか」(飯石取締役)という悩みがあるも事実だ。

 指定管理者にパークマネジメントを任せて、民間事業者の参入をどんどん進めるというやり方もある。だが、「都市のリビング」をコンセプトとする南池袋公園で、それをどこまで許すべきなのか。

 「都市のリビング」というコンセプトを守りながら、収益を上げ、利用者にもエリアにもさらなるメリットをもたらす。そんな高度な舵取りが、これからの南池袋公園には求められている。

 そして、南池袋公園で試行錯誤しながら得た知見やノウハウを、他の3公園とも共有できれば、相乗効果で池袋周辺エリアの価値はさらに高まっていくだろう。