今、QRコード決済をはじめキャッシュレス決済が全国的に広まっている。経済産業省が進めているキャッシュレス・ポイント還元事業の効果が大きい。そのキャッシュレス推進を、いち早く自治体単位で実施しているのが福岡市だ。2018年6月から2019年3月までキャッシュレス決済事業者などと共同で、民間施設と公共施設におけるキャッシュレス決済導入の実証実験を実施して話題に。現在、その効果を見極めたうえで、民間施設、公共施設ともに、さらなるキャッシュレス決済の推進に取り組んでいる。福岡市の事例から、自治体がキャッシュレス決済を推進する意義、その進め方、効果や課題を探る。(日経xTECH編集=森側真一)

 日が落ちた街に、温かな光の列を灯す福岡市の名物“屋台”。暖簾をくぐると、ICTとは無縁のアナログな世界に浸れる――と思いきや、左右の柱にQRコードが羅列され「どうぞスマホ決済してください」と言わんばかりの構えだ。

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屋台の柱にQRコードが並ぶ(写真:2点とも日経BP総研)
餃子が看板メニューの屋台「喜柳」
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喜柳の車長、迎敬之氏
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(写真:2点とも日経BP総研)

 餃子を看板メニューとする屋台の「喜柳(きりゅう)」。その車長、迎敬之氏は、スマホ決済を始めた理由について「行政から案内が来て決済事業者のプレゼンテーションを見て知った。キャッシュバックがある点などから、今後はやりそうと感じた」と述べる。喜柳では2018年8月、PayPay、楽天ペイ、LINE Pay、AliPayをまず導入した。この時点では“なんとなく良さそう”という感じだったが、1年以上たった現在は「常連客からは、便利だし、キャッシュバックもあると良い評価を聞く。3分の1くらいは、もうスマホ決済になった。特にPayPayが多い」と笑う。交通系電子マネーやメルペイ、au Payなど種類も増やし、手ごたえ十分といったところだ。

 お店側の業務効率化にも効果が出ているという。店舗の柱に張られたQRコードをお客がスマホで読み取り、お店の人が提示する金額をお客が入力すれば支払いできるため、「支払い時やお釣りで小銭を数えて確認する手間が減るのがいい。特に外国人観光客の場合に効果が大きい。大体5分間かかっていたお勘定のやり取りが、2分間で済む」(迎氏)。取材当日も、行列が10人程度連なっており、1組で3分間の短縮になれば、客の待ち時間も減り回転数も上がるメリットもある。

 喜柳のように、行政のリードで昨年実施したキャッシュレス推進の実証実験で導入した店舗などは900箇所ほど。現時点の福岡市全体での店舗におけるキャッシュレス決済の導入数は、行政側では実数をつかめていないものの、「実証実験で導入した900箇所でほぼそのまま利用が継続している」(福岡市 経済観光文化局 総務・中小企業部 経営支援課長 西依正博氏)という。屋台に限って言えば、実証実験終了時は99軒中33軒だったものが、2019年11月1日時点で106軒中36軒と、実証実験で終わらずに本番へ引き継がれている。

 キャッシュレス推進の効果は、経済産業省のキャッシュレス・ポイント還元事業における加盟店数にも表れている。同事業の2019年12月1日時点の調査で、加盟店数が市区町村別で全国4位(1万6748)、「飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業」の加盟店数割合では全国1位(38.17%)となっている。