「日経ESG」2021年1月12日付の記事より

東京都、長野県に続き、神奈川県が2020年11月に50億円のグリーンボンドを発行した。自治体が災害対策や温暖化適応策の資金調達に活用する兆しが出てきた。

 神奈川県は2020年11月に50億円のグリーンボンドを発行した。同県が20年2月に策定した「水防災戦略」に基づいて、環境改善効果のある河川改修や護岸整備事業などの温暖化適応策に資金を充当するもので、償還は5年、利率は0.02%である。

 地方自治体によるグリーンボンドの発行は、17年10月に東京都が都有施設の環境対策に100億円を発行したのが最初だが、2番手は現れなかった。それがここにきて自治体からの発行が相次いでいる。20年10月には長野県が50億円のグリーンボンドを発行。50年のCO2排出量実質ゼロの達成と、自然災害の被害低減に向けた温暖化適応事業に充てる。長野に一足遅れて発行したのが神奈川県だ。19年度に大きな台風に2度見舞われたことから、20年2月に「かながわ気候非常事態宣言」と「水防災戦略」を策定した。この戦略に基づく事業への資金調達を狙い、グリーンボンドを発行した。

投資家から6倍の需要

 グリーンボンドの発行にはコストも手間もかかる。神奈川県はグリーンボンド原則に沿っていることを証明する第三者認証機関の承認「セカンドオピニオン」を格付投資情報センター(R&I)から得たが、取得に2カ月を要した。評価を得るための費用約300万円は環境省の補助金を利用した。資金の充当状況や環境改善効果をレポーティングする必要もある。さらに、通常の地方債なら財政課だけで発行できるが、グリーンボンドは事業を所管する県土整備局も巻き込む必要があり、トップの理解が欠かせない。

 今回、発行がスムーズに運んだのは、黒岩祐治知事が音頭を取ったからだ。グリーンボンド発行は、神奈川県が推進する国連の持続可能な開発目標(SDGs)に寄与すると考え、知事が発行を宣言していた。

 グリーンボンドを発行するメリットは、「県の環境への取り組みを投資家に理解してもらい、共感を得られたことだ」(財政課資金グループの合田真吾リーダー)。実際、50億円の発行に対して需要は6倍に上った。通常の5年債の2~3倍をはるかにしのいだ。46件の投資家が購入し、うち40件が投資表明した。大手金融機関に加え、神奈川県の企業や銀行、他の自治体の購入も目立った。

■ 神奈川県が発行したグリーンボンドの概要
■ 神奈川県が発行したグリーンボンドの概要

 神奈川県は今後3年間、毎年グリーンボンドを発行する予定だ。自然災害が激甚化する中、災害復旧や被害低減のための温暖化適応策への資金調達に自治体がグリーンボンドを発行する例は増えるかもしれない。