経済産業省は、広島県と県内の竹原、尾道、福山、府中、三次、庄原の6市が実施したSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)による大腸がん検診の受診勧奨事業について、最終評価を踏まえた総括レポートを1月26日に公表した。

1県6市によるSIB事業の実施体制(出所:広島県)
1県6市によるSIB事業の実施体制(出所:広島県)
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⼤腸がん検診の受信者数の変化(出所:広島県)
⼤腸がん検診の受信者数の変化(出所:広島県)
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精密検査の受診率の変化(出所:広島県)
精密検査の受診率の変化(出所:広島県)
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 この事業は、大腸がん検診(一次検診)の受診率向上と、一次検診で精密検査が必要と判断された人を対象とした精密検査受診率向上から成る。成果指標である「大腸がん検診受診者数」は合計で前年度比1515人増(3万2603人から3万4118人)、「精密検査受診率」は合計で前年比6.09ポイント増(43.27%から49.36%)と改善がみられた。

 事業手法は、ナッジ理論(人々が望ましい行動を自発的に選択するよう誘導する行動経済学の理論)を活用して、それぞれの対象者に適した受診案内を郵送することで受診率を向上させようというもの。前者は庄原市を除く5市が参加し、2018年10月から19年1月に実施した。後者は福山市を除く5市が参加し、18年12月から19年12月に実施した。おのおの、19年9月、20年9月に評価を行っている。

 広島県と6市は、サービス提供者であるキャンサースキャン(東京都品川区)と個別に業務委託契約を締結した。うち、広島県が2年3カ月の複数年契約を結び、成果に連動した委託料457万9000円を支払った。一方、6市は初年度1年間の委託契約で、案内送付の実費など固定費合計388万円のみ負担している。これは、単年度精算が要求される国庫補助金を利用したことによる。

 レポートはこの事業の特徴として、①先行して八王子市が実施した大腸がん検診に関するSIB事業の横展開であること、②日本初の広域連携型SIBであること、③クラウドファンディングで個人投資家から資金調達したことを挙げ、おのおの考察をまとめている。

 ①については、八王子市の先行事業を参照することでSIB導入の検討がスムーズに進んだと評価した。一方、八王子市のSIB事業から成果が予測できるため、成果報酬のない通常の委託事業での実施も可能だったと指摘している。広島県によると、SIBにすることでより成果を上げることができたが、事務負担が増えたという。こうしたことから、レポートでは「PFS(成果連動型民間委託契約方式)/SIB事業と通常の委託事業それぞれのメリットやデメリットが整理されていくことが望ましい」と総括した。

 ②の広域連携型SIBについては、市単独では導入できない事業を実施できたと評価する。課題としては、参加自治体の募集・説明、参加市ごとに異なるデータや検診に合わせた調整など事務負担は大きかったこと、そして、県内6市は通常の委託契約を結ぶスキームだったため、SIB事業のノウハウが十分に蓄積されなかったことを挙げている。

 ③のクラウドファンディングについては、社会課題の解決を目指すSIB事業は個人投資家のニーズに合うとして、資金提供者の多様化に期待を寄せている。今回の事業では、個人投資家138人から合計663万円を集めた。そのほか、社会的投資推進財団(現・社会変革推進財団)が545万円、みずほ銀行と広島銀行がそれぞれ194万円を出資している。

 なお、経産省のレポートの正式名称は「ソーシャルインパクトボンド(SIB)の手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務最終評価結果を踏まえた事業総括」。2021年12月に広島県らがまとめた最終報告書を受けて作成したものだ。