2019年度予算案は、3月2日未明に衆議院を通過した。年度内に成立する見通しだ。この予算案のうち、公民連携に関連する事業を3回に分けて解説する。第1弾は、国土交通省のPPP/PFIに関する事業を見ていく。同省は「PPP/PFIの推進」として325億円を計上し、前年度予算比で1.08倍と増やしている。PPP/PFIに関する国交省の主な施策を解説する。

 国土交通省の2019年度予算案は、国費総額が一般会計6兆8609億円(前年度予算比1.18倍)、東日本大震災復興特別会計4632億円(同1.01倍)、財政投融資2兆3745億円(同0.70倍)であった。同省は2019年度予算案の中で、以下の4つの重点化項目を挙げている。このうち、「PPP/PFIの推進」を「(3)力強く持続的な経済成長の実現」の中の「民間投資やビジネス機会の拡大」に位置付けている。

  • (1)被災地の復旧・復興
  • (2)国民の安全・安心の確保
  • (3)力強く持続的な経済成長の実現
  • (4)豊かな暮らしの礎となる地域づくり

 「PPP/PFIの推進」については、次のように位置付ける。「民間の資金やノウハウを活用した多様なPPP/PFIの推進により、低廉かつ良質な公共サービスを提供するとともに、民間の事業機会を創出し、経済成長を促進させる」。

 具体的な施策は以下の通りだ。

■PPP/PFIの推進:325億円(前年度予算比1.08倍)

  • ○先導的な PPP/PFI の案件形成や地域プラットフォームを通じた案件形成への支援
  • ○人口 20 万人未満の地方公共団体における官民連携事業モデルの形成支援
  • ○民間事業活動と一体的に実施する社会基盤整備の事業化検討の機動的な支援
  • ○都市公園において民間事業者が行う公園施設の整備等への支援の推進
  • ○小規模な地方公共団体等による公営住宅整備に関するPPP/PFI推進の支援
  • ○PPP/PFIを活用した公的賃貸住宅団地の再生・福祉拠点化の推進
  • ○コンセッション方式の活用による空港経営改革の推進
  • ○PPP/PFI手法の導入や広域化・共同化による持続的な下水道事業の推進
  • ○民間の技術を活用した下水道施設のエネルギー拠点化の推進
  • ○都市再生と連携した首都高再生の検討や特区による公社有料道路コンセッションの推進
  • ○PFI手法を活用した無電柱化の推進

 それぞれの施策について見てみよう。

○先導的な PPP/PFI の案件形成や地域プラットフォームを通じた案件形成への支援

 全国を9つに分けた地方ブロック単位で産官学金が連携する地域プラットフォームを通じたPPP/PFIの情報・ノウハウの共有、個別案件の官民対話などに取り組む。これに加え、新たに専門家派遣などを行い、地方プラットフォームの案件形成機能を強化する。その内容は、以下のようなものだ。

  • 1.優良事例などを紹介するセミナーや実務スキルを習得する研修を実施
  • 2.首長同士がPPP/PFIを進める上での工夫や課題を意見交換
  • 3.利活用したい個別の公共施設などの事業性などを官民で討論
  • 4.人口20万人未満の地方公共団体に専門家を一定期間派遣し、事業化に係る手続きをハンズオン支援

○人口 20 万人未満の地方公共団体における官民連携事業モデルの形成支援

 人口20万人未満の地方公共団体における官民連携事業モデルを形成するため、地域課題の確認から事業化に至るまで支援する。これにより、そのプロセスやスキームの幅広い展開を図る。支援対象の事業は以下のようなものだ。

  • (1)道路、公園、下水道などの分野連携による官民連携事業
  • (2)複数の地方公共団体による広域連携による官民連携事業
  • (3)官民が連携して実施する公共施設などの集約・再編事業
  • (4)インフラの老朽化対策としての官民連携事業

分野・広域連携による包括的民間委託のイメージ。(1)の分野連携パターンでは、道路、公園、下水道など複数の分野にまたがる民間委託を想定する。(2)の広域連携パターンでは、A市とB市など複数の地方公共団体にまたがる民間委託を想定する(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

○民間事業活動と一体的に実施する社会基盤整備の事業化検討の機動的な支援

 官民連携による民間投資誘発効果の高い基盤整備や広域的な地域戦略に資する事業について、民間の意思決定のタイミングに合わせ、基盤整備の構想段階から事業実施段階への円滑かつ速やかな移行を図るため、地方公共団体が行う事業化検討を支援する。特に、公共施設などの整備・運営に民間の資金や創意工夫を活用したPPP/PFIの導入可能性の検討や広域的な観光または交流拠点形成の促進にかかる基盤整備の調査を重点支援する。

 例えば、広域的な観光拠点形成の促進に係る調査として「大型クルーズ船受け入れのための港湾整備の検討」、広域的な交流拠点形成の促進に係る調査として「交通結節機能強化のための駅周辺整備の検討」を挙げる。

官民連携による基盤整備を推進するための調査の例(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

○都市公園において民間事業者が行う公園施設の整備等への支援の推進

 都市公園で民間事業者が公園施設を整備する公募設置管理制度(Park-PFI)を支援する。都市公園に施設を整備する際、民間事業者に公募してカフェや売店などの収益施設を整備し、その収益を公園のリニューアルなどに使う制度だ。

○小規模な地方公共団体等による公営住宅整備に関するPPP/PFI推進の支援
○PPP/PFIを活用した公的賃貸住宅団地の再生・福祉拠点化の推進

 子育て世帯や高齢者世帯などの住宅確保要配慮者が住居を確保できるよう支援する住宅セーフティネット機能を強化する。その一環として、公的賃貸住宅団地の建て替えなどにおいてPPP/PFIの活用を推進するとともに、小規模な地方公共団体などによる公営住宅整備に関するPPP/PFI推進を支援する。

○コンセッション方式の活用による空港経営改革の推進

 地方空港のゲートウェイ機能強化をコンセッション方式の活用によって推進する。民活空港運営法に基づき民間による航空系事業と非航空系事業の一体経営を実現し、着陸料などの柔軟な設定を通じた航空ネットワークの充実、内外の交流人口拡大などによる地域活性化を図る。特に、北海道内7空港(新千歳、稚内、釧路、函館、旭川、帯広、女満別)などについて公共施設の運営権を設定した場合の運営権者の公募手続きを進めるとともに、他の国管理空港についても自治体や民間事業者から得られた運営形態や経営手法に関する意見や提案を踏まえ、民間事業者への運営委託手法の検討などを進める。

空港運営を民間に委託するスキーム(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

○PPP/PFI手法の導入や広域化・共同化による持続的な下水道事業の推進
○民間の技術を活用した下水道施設のエネルギー拠点化の推進

 国交省は、下水道施設の巡視・点検・調査・清掃・修繕などを一括して複数年にわたり民間に委ねる包括的民間委託を推進しており、2019年度も継続する予定だ。また、新たなPFI方式であるコンセッションについては、静岡県浜松市が2018年4月に事業を開始している。この取り組みをほかの地方公共団体に展開する準備を進める。

 また、民間の技術を活用した下水道施設のエネルギー拠点化を推進する。下水汚泥は、バイオガス、汚泥燃料、肥料などの多様な資源として活用が可能だ。しかし、他の処理場の汚泥や生ゴミ・し尿などの地域バイオマスの集約によって、より効率的な有効利用が期待される。現在、秋田県では県北6市長組合で、発生する下水汚泥やし尿を集約して処理し、燃料などの資源として活かす汚泥資源化施設の建設に着手しており、2020年3月の完成を目指す。今後、地域バイオマス集約も含めた効率的な下水汚泥の有効活用により、下水道施設のエネルギー拠点化を推進する。

下水道施設のエネルギー拠点化に向けた取り組みの例(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

○都市再生と連携した首都高再生の検討や特区による公社有料道路コンセッションの推進

 国交省は、首都高速道路の再生を進める際、再開発事業などの都市再生と連携して民間資金の活用を検討する。例えば、日本橋周辺では首都高を地下化する議論がなされており、日本橋周辺で検討が進むまちづくりの取り組みが国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加された。こうした民間のまちづくりと首都高の再生を連携して、民間資金の活用を検討する。

 特区による公社有料道路コンセッションとは、都道府県などの道路管理者や地方道路公社が保有する有料道路を民間事業者が運営する方式で、愛知県が導入している。これをほかの地域に水平展開することに取り組む。

○PFI手法を活用した無電柱化の推進

 無電柱化を推進するため、電線共同溝整備(直轄)において、民間技術やノウハウ、資金の活用を図るために、整備後の維持管理も含めてPFI手法を活用する場合について、現行の15カ年以内を30カ年以内で国庫債務負担行為を設定できるよう制度を拡充する。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/030801085/