全体イメージ(資料:森トラスト)
[画像のクリックで拡大表示]
客室のイメージ(資料:森トラスト)
[画像のクリックで拡大表示]

 奈良県は3月14日、奈良公園の一画にある吉城園(よしきえん)周辺地区に宿泊施設を整備する「吉城園周辺地区保存管理・活用事業」のプロポーザルで、森トラストを優先交渉権者に決定したと発表した。応募3者の中から選んだ。

 森トラストが提案したのは、「畏敬の夜・神秘の朝、奈良らしさを世界へ」という事業コンセプトの下、隈研吾氏のデザインによるホテルを建築し、運営には最高級クラスのインターナショナルホテルブランドを誘致するという計画だ。既存の庭園や建築物を残し、その中に小さな建築を溶け込ませ、全体として統一感のある奈良らしい環境を創出していく。具体的には、旧世尊院を、宿泊機能に加えて文化発信の場としても活用するほか、吉城園主棟は茶会などのイベントに、知事公舎は庭園の風景を活かしたレストランに活用するなどし、既存の建物の特性を活かしながら、邸宅の佇まいや奈良公園の名勝の価値を活かした宿泊施設を整備する。

 今後は、基本協定を締結した後、速やかに文化庁に対して必要な現状変更許可の申請を進め、2019年度の開業を目指してプロジェクトを進行していく。

[画像のクリックで拡大表示]
左がエントランスロビー、右がレストランのイメージ(資料:森トラスト)

 吉城園周辺地区は奈良市登大路町にある。奈良公園の西の端に位置し、敷地面積は3万1038m2。吉城園とは主棟と茶室、庭園からなる大正時代に建てられた施設だ。計画地には、吉城園や江戸末期に興福寺の子院として建てられた旧世尊院のほか、知事公舎や旧青少年会館、副知事公舎などいくつかの既存建築物がある。奈良県では、一帯の良好な風致を維持するために、旧世尊院の買い取りと改修・保存、民有地の買い入れ、吉城園の主棟と茶室を県の有形文化財に指定するなどの取り組みを行ってきた。

 しかし、一部が低未利用地になっており、本来の価値を十分に活かせていないことから、奈良県では、宿泊施設を中心に一帯を整備する官民連携事業を計画。江戸末期から昭和初期に建てられた建物群の空間美を保全しつつ、近鉄奈良駅から東大寺や国立博物館への主要動線上に位置する立地特性を生かし、民間事業者のノウハウや創意工夫による魅力ある空間づくりを目指し、公募型プロポーザルを実施した。

 計画地は都市公園区域内となる。事業は、都市公園法第5条に基づき、既存建築物および民設民営施設を宿泊施設などとして使用することを民間事業者に対して許可(設置・管理許可)するという枠組みで実施する。設置・管理許可年数は10年以内。公募時の設置・管理許可の使用料は、宿泊施設を設置する場合(設置許可)は138円/m2・月、宿泊施設を管理する場合(管理許可)は460円/m2・月だった。

 今回のプロポーザルは、既存の地割りの保全と庭園や樹林地の保存、活用、および既存建築物の取り扱いへの配慮を求めたことが特徴だ。既存建築物については一部を保存、管理の上、宿泊施設などに活用することが義務付けられており、残りは解体、撤去の上、新たな施設の用地とするか、保存か解体かを含めて事業者の提案を募った。整備する宿泊施設は、1室あたりの平均客室面積を50m2以上とし、内外装には奈良県内産の木材や石材を積極的に活用することとした。また、文化財保護法、古都保存法、奈良市風致地区条例により現状変更の制限や、新築する建物の色や形状、高さなどについて様々な規制もある。

 事業コンセプトとしては、県から「江戸末期から昭和初期の『和を基調とした風情の中に洋を感じる近代建築物』と庭が織り成す空間のあり方と、往時を偲ばせる邸宅の雰囲気を醸し出す空間美を保全しながら、ゆったりとくつろぐことができ、また宿泊することができる空間をつくりあげる」という考え方が示されていた。