福井県敦賀市は、新幹線開通に向けJR敦賀駅前にホテルや商業施設などを公民連携で整備する「敦賀駅西地区土地活用事業(以下、土地活用事業)」のうち、公共機能部分の「敦賀市知育・啓発施設(以下、知育・啓発施設)」について、設計・運営事業者の公募を実施(関連記事)。このほど、応募4者の中から丸善雄松堂・編集工学研究所共同企業体(代表企業は丸善雄松堂、構成員は編集工学研究所)で構成する企業グループを事業者に選定した。

敦賀市知育・啓発施設の設計・運営事業者に選定された丸善雄松堂・編集工学研究所共同企業体が提案したイメージ(資料提供:敦賀市)
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敦賀市知育・啓発施設の設計・運営事業者に選定された丸善雄松堂・編集工学研究所共同企業体が提案したイメージ(資料提供:敦賀市)
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 土地活用事業は、すでに青山財産ネットワークスを代表とする企業グループが優先交渉権者に選定されている(関連記事)。知育・啓発施設は、青山財産ネットワークスのグループが整備・所有する施設の中に、市が約750m2のスペースを賃借し、設置される。市は、施設が「書籍その他のメディア、イベント等を通じて、新たな学び及び価値を創造するとともに、くつろぎ及び憩いの場」となることを目指し、主に内装の設計と、供用開始後は指定管理者として管理運営を担う事業者を公募した。指定管理料は、年4000万円を上限とする条件だった。

 なお、書籍やメディアを提供する部分は、書棚スペースに約1万~3万冊の範囲で、指定管理者が書籍を用意し、来館者が自由に閲覧・購入できる施設となる。書籍を軸とした施設だが、図書館法に則った「図書館」とも、いわゆる「書店」とも異なるスタイルだ。

「敦賀駅西地区土地活用事業」の概要。知育・啓発施設はAゾーン北側に設置予定(資料:敦賀市)
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知育・啓発施設における書籍調達のスキーム(資料:敦賀市)
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 丸善雄松堂らのグループの提案は、「人々が行き交い文化を育む港(PORT) Plase Of Ringing Tsuruga(敦賀が響きあう場)」をコンセプトに、キッズスペースやワークスペースを備えたブックカフェ・ショップを整備するというもの。本や読書に関するワークショップ、まちや歴史に関するワークショップやシンポジウムなど知と学びに触れるイベントや、近隣の大学や企業とも連携したスクール形式の講座なども実施する。ブックカフェ・ショップは、独自メソッドの選書による本、地産品、知育玩具などを取り扱い、カフェでは地産品を取り入れたメニューを提供する。

 コンセプトにある「港」は、「PORT」と読ませ、Transport(行き交い)、Opportunity(出会い)、Support(支えあい)に含まれる「port」と「Plase Of Ringing Tsuruga」の頭文字「P・O・R・T」とも掛けた。書籍の閲覧・販売、物販、カフェの諸機能とイベントなどを通じて、人とモノ、情報の交流や(行き交い)、新たな知との出会いや敦賀の伝統を知る機会(出会い)を提供し、また、キッズスペースの設置や日々の暮らしのヒントになるような書籍の提供などを通じて、「支えあい」も実現する施設・サービスとする。

 内装には、北前船の寄港地として栄えた敦賀にちなみ、日本海の荒波や頑丈な帆船、倉庫などのイメージを取り込むほか、3万冊の書籍の陳列も空間意匠に取り込み、施設全体を「書籍空間」としてデザインする。施設は2022年度の供用開始を目指す。

 公募は、2018年12月から2019年3月にかけて実施した。審査は、事業全体の考え方、設計業務、指定管理期間前の準備業務、管理運営業務の4項目による内容審査が900点、価格審査が100点の計1000点満点で実施した。審査員一人ひとりが1000点で審査し、10人の合計点で総合点をつけた。丸善雄松堂らのグループは内容審査6498点、価格審査998点の計7496点だった。次点のグループは、価格審査は丸善雄松堂らのグループと同点で、内容審査は8点差の6490点、計7488点だった。

 丸善雄松堂らのグループは、自社の中に建築部門を持ち、指定管理業務の経験もあることや豊富なネットワークを有すること、および図書館との連携もとれたイベントやワークショップの内容などが評価された。一方、次点のグループの提案は、若い世代や女性、子育てといった観点では、丸善雄松堂らのグループの提案より魅力的とする意見もあった。ただし実施体制や経験の点で丸善雄松堂らのグループが評価され、選定に至った。

 丸善雄松堂は、丸善CHIホールディングス傘下の企業で、官公庁や自治体、研究機関への書籍販売、図書館運営業務受託、店舗開発などの事業を展開している。編集工学研究所は丸善雄松堂のグループ会社で、著名な編集者である松岡正剛氏が所長を務める。書店、図書館、企業ライブラリーのプロデュースなどの事業を手がけている。