千葉県木更津市と東日本電信電話(NTT東日本)は4月、ICTを活用した持続可能な街づくりに向けた共同実証実験を開始した。第1弾は「IoTを活用した鳥獣害対策とジビエ産業における地域活性化」。イノシシによる農作物被害の拡大を背景に、イノシシの捕獲対策と、産官学が連携して食用肉への加工から販売に至るまでの工程に取り組む。課題の解決に加えて、地域産業の創出や活性化も目指す。実施期間は2020年3月まで。

 木更津市では、5年前と比べて、イノシシの捕獲数が約3.3倍に増加し、農作物被害の金額も約2.5倍の規模に増大(いずれも2019年2月時点の調査)。被害金額は、過去最大の金額に上っている。農作物被害が深刻化している一方で、狩猟従事者は、高齢化と担い手不足により減少傾向にあり、効率的な鳥獣害対策が課題となっている。このような状況を踏まえ、市とNTT東日本は、ICTを活用したイノシシ捕獲の効率化を検証するとともに、民間の獣肉処理加工場と連携し、獣肉の処理・加工、流通から販売までの一連の工程を担う地域産業の創出、活性化に向けた検討を進めていく。

 実証実験を行うのは、市内の矢那地区だ。IoTと地理情報システムなどの技術を活用し、効率的なイノシシ捕獲を実証する。具体的には、赤外センサーで、捕獲のために仕掛けた檻への鳥獣の侵入を検知・アラート通知し、ネットワークカメラの画像で、捕獲した鳥獣の種類や大きさを把握。加工や処分のための稼働を効率化する。檻に仕掛ける餌も、システムにより自動化・最適化する。これらにより、人が巡回する回数の削減と捕獲率の向上を目指す。また、地理情報システムを活用し、イノシシの生態把握やヒートマップによる可視化を図り、効率的な檻の配置に役立てる。

 実証実験に参加するのは、市とNTT東日本のほか、木更津工業高等専門学校(高専)、地区の農家、地元猟師、および民間企業のKURKKUだ。それぞれの役割分担は以下の通り。

  • 木更津市:鳥獣害対策案の検討、効果測定
  • 木更津工業高等専門学校:鳥獣対策機器の企画・開発
  • 木更津矢那地区の農家:実証実験フィールドの提供
  • 地元猟師(合同会社房総山業):鳥獣捕獲後の処理
  • 株式会社KURKKU :ジビエ加工、流通、販売
  • NTT東日本:実証実験の全体企画、運営およびICT技術(赤外線センサー、ネットワークカメラなど)の提供

 今回の実証実験のほか、今後の実証実験対象として候補に挙げている分野は以下の4つ。産官学のプレーヤーにより、一次産業のほか商業、観光、防災など様々な項目、分野でテーマを決めて実証実験を進めていく計画だ。

  1. 鳥獣害対策等、「農林水産業」に関すること
  2. 観光の振興等、「商業・観光」に関すること
  3. 暮らしの安全・安心等、「防災」に関すること
  4. 地域児童・高齢者見守り等、「福祉」に関すること

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実証実験の展開イメージ(発表資料を一部加工)

 NTT東日本は、実証実験により、市が抱える様々な分野の課題を解決し、木更津市を「地方版スマートシティモデル」とすることを目指す。同時に、実証実験で得られた知見を他の地域にも発信し、ICTの活用による持続可能な街づくりを広めていく考えだ。